ラジオ中継車を知ってるかい?

ラジオの中継に不可欠なラジオ中継車の特集。中継車ごとに愛称がついているので、根強いファンがいる。

青春を共に過ごしたラジオの思い出と中継車と

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もりながたくろう●1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。 個人のコレクションを展示する"博物館(B宝館)"を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日)

2019年12月号森永卓郎さん写真.jpg▲ニッポン放送のラジオカー ラジオカーはニュースな場所からの中継に不可欠の存在 左から日産ローレル1800デラックスB(C30型)/日産スカイライン1800デラックス(C10型)/日産ブルーバード(U12型)

 今年、ニッポン放送(関東ローカルのAMラジオ局)の『オールナイト・ニッポン』が放送開始50周年を迎えた。若い読者には通じないかもしれないが、いまの中高年の多くが、青春そのものと考えているほど、ラジオの深夜放送は、生活の中に浸透していた。

「夜更かしはダメですよ」と親に叱られても、こっそり隠れて、ラジオにかじりつき、そこから流れる音楽とパーソナリティたちの軽快なトークに酔いしれていた。

 現在、ラジオの聴取率は1~2%と、テレビの視聴率に遠く及ばなくなってしまったが、ボクは青春をともに過ごしたラジオに強い思い入れがある。だからボクは、いまでも地方ローカル局を含めて、7局の番組にレギュラー出演している。

 ラジオの魅力は、リスナーとの距離が近い点だ。相互メディアとまではいかないが、リスナーから送られてきたハガキやファックス、メールをパーソナリティが番組で紹介し、リスナーが電話で番組に出演することも、しばしばだ。そして、番組とリスナーの直接交流を支えてきたのが、ラジオカーだ。

 テレビの中継は、電波を飛ばすのに大がかりな仕掛けが必要だが、ラジオは音声だけなので、ラジオカーに搭載した機材だけで、ほとんどの場所から中継ができる。ボクも、何度もラジオカーに乗って中継をし、リスナーと交流してきたから、ラジオカーが大好きだ。ただ、非常に特殊なクルマだし、放送局ごとに仕様が異なるので、ミニカー化は難しいと思っていた。ところが、トミカリミテッドのビンテージシリーズで、ニッポン放送、文化放送、TBSラジオ、ラジオ日本という、関東の民放4社のAMラジオカーがリリースされた。これには本当に大興奮した。

 写真は、ニッポン放送のラジオカーで、左から、ローレル、スカイライン、ブルーバードだ。クルマの年式からもわかるが、ブルーバードだけ少し時代が新しい。それは、ボディに書かれた周波数でもわかる。他の2台が1240キロヘルツなのに、ブルーバードは1242キロヘルツになっている。電波が足りなくなって、それまで10キロヘルツ刻みだった放送局の周波数が、昭和53(1978)年に9キロヘルツ刻みに変更されたからだ。

 ボクの愛するラジオカーが、最近、放送に登場する機会が減っている。経費節減の流れの中で、ラジオカーはコストがかかるからだ。

「昔はラジオカーがあったんだよ」という話にはなってほしくない。

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