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連載第5回 一体なぜこの顔? 三菱が大胆野獣フェイスに踏み切れた理由

Writer:小沢コージ Photo:小沢コージ

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小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』

●衝撃の電気シェーバー顔にマントヒヒ顔!

 最近の三菱車のアグレッシブデザインに驚いた読者も多いはずです。とくにその大胆不敵なビックリ顔戦略に。

 まずは、やっぱり2月発表のミニバン、マイチェン版デリカD:5でしょう。通常ヘッドライトが備わる両サイドには脇役のポジションランプが備わり、主役のヘッドライトはその下の2連LEDで、それもキテレツな縦2列配置! 

 それだけじゃありません。グリルには電気シェーバーのごとき網刃模様が入り、「アナタ、ここでジョリジョリしてみませんか?」とささやいてくるようです。

04web02.jpg▲3月28日、三菱自動車はekワゴンを6年ぶりにフルモデルチェンジ 新たにSUVテイストのクロスオーバー、ekクロスを設定

 そして3月リリースの弟分、eKクロスがまた個性的。基本構成はデリカと同じ三菱の「ダイナミックシールドデザイン」ですが、より両サイドが膨らみ、ドングリをクチ一杯に含んだリスというか、マントヒヒみたいな野獣顔になってるじゃあーりませんか! 

 このワイルドアニメ顔戦略は一体どういうことなのか。当のeKクロスを担当した小沢と同世代の大石聖二デザイナーを直撃したところ面白いことがわかってきました。

●ダイナミックシールドというかキュートビースト!!

小沢 一体どうなっているんですか、この顔っていうか、このデザインの方向性は?

大石 正直、かなり試行錯誤しましたし、スパッとは決まらないですよ。ちょっとライン変えるだけで違うクルマに見えちゃうので。

小沢 しかもこのeKクラス、横長の目のような部分がポジションランプで、下のヒゲみたいな部分がヘッドライトなのですよね。普通とは全く逆。

大石 そうです。兄弟車の日産デイズのカスタムとはライト配置が違う。そのために裏側の配線からすべて変えています。旧型よりよっぽどお金もかかっています。

02web02.jpg▲ekクロス担当デザイナーの大石聖二氏に直撃インタビュー

小沢 そもそも今年出た新型デリカD:5から始まったメカ顔っていうか、電気シェーバー顔っていうか、正式にはダイナミックシールドという三菱の新しいデザインコンセプトですが、どの方向を目指しているのでしょう? もしやトヨタ・アルファードを意識しているとか?

大石 正確にはもうちょっとキュートな方向です。軽の中では躍動感があるラインとか、小沢さんには生き物って表現していただきましたが、ボクたちが狙っているのは「キュートビースト」、可愛い野獣を意識しています。

小沢 可愛い野獣! あえて狙ってほっぺたが膨らんだリスみたいな顔を作り込んでいるんだ!!

大石 そうです。怒っているのか笑っているのかわからないみたいな顔ですけど(笑)。

●ウラには三菱背水の10%戦略があった

 さらに大石デザイナーは解説する。

小沢 とはいえ平たくデザインをみると三菱eKクロスが攻めているわりに、兄弟車の日産デイズは無難にも見えますが。

大石 そりゃそうですよ。結局デイズはスズキ・ワゴンRやダイハツ・ムーヴ、ホンダNワゴンと同じ土俵に上がるわけだし、王道の日産さんはそれでいいと思うんです。一方、僕らはノーマルではなく、カスタムデザインに特化して変化球を投げなければ勝てない。僕らは国内この分野で10%取れれば御の字ですよ。10人に1人に「これいいね」と言っていただければ、残りの9人の方に「ええ?」って言われても万々歳。

小沢 すごい割り切りじゃないですか。以前、最近のデザイン戦略は日産グループ傘下に入ったからできるようになったと聞きましたが。

大石 そうです。日産の下に入って、デザインプライオリティが明らかに上がりました。デザイン部門のトップが日産から来て役員の位置にいるのです。かつてならこんな勝負はできなかったと思います。

05web02.jpg▲サイドフェンダーはモール風のデザインでSUVテイストを演出

 実際、現在の三菱デザイン本部長、國本恒博氏は日産出身。現在は常務執行役員でもあります。いままで三菱自動車ではデザイントップは役員になることができず、権限があまりありませんでした。しかし、日産グループに入ることによってデザインの地位が明らかに上がり、大胆な割り切りデザイン戦略が採れるようになったのです。

 昔から「デザインを殺すも生かすも選ぶ人間次第」とはよくいわれます。「せっかくの良いカーデザインも回りがよってたかってイジるとつまらなくなる」と。

 デリカD:5、そしてeKクロスのインパクトデザインはまさにそれを証明しているのかもしれません。

もっともこの顔が逆にダメだ! とおっしゃる方も、結構いるとは思うんですけどね(笑)。

06web.jpg▲インテリアは質感が高く軽自動車の枠を大きく超えた仕上がりに到達

07web.jpg▲ラゲッジの作りも安っぽさは皆無

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