「ガンバレNISSAN!!」S13型シルビアはスペシャルティの市場勢力図を塗り替えた

 1988年にデビューした日産シルビアは、当時流行していたスペシャルティカー(デートカー)のジャンルで大ヒットした。シルビアのデビューに大人気だったホンダ・プレリュードやトヨタ・セリカを凌ぐ販売成績を収めた。1.8リットルのターボとNAをラインアップしたFRモデルの魅力を、岡崎宏司さんが振り返る。

キャッチフレーズは「アートフォース・シルビア」

2019年10月岡崎さんシルビア.jpg▲5thシルビアは1988年6月にデビュー グレードはターボ仕様(175㎰)のKʼs(写真)のほかにNA(135㎰)のQʼsとJʼsがあった

 本誌10月号、巻頭の企画は日産のスポーツカーを代表するGT―RとフェアレディZの特集である。日産のスポーツカーといえば、「シルビア」の車名を思い出すファンも多いはずだ。

 1965年に生まれた2ドアの1stシルビアの、クリスタルカットと呼ばれた美しい姿は、いまも強く記憶に残っている。商品として成功したのは、3rdモデルのS110型(1979年デビュー)が初めて。流行の最先端をとらえたデザインは多くのユーザーの心をつかみヒット作になった。

 そして、シルビアの名前と地位を絶対的なものに押し上げたのは、1988年誕生の5thモデル、S13型である。  1988年といえばバブル期のピークだった。若者や女性がスタイリッシュなクルマを強く求めた時期でもある。そんな中、「デートカー」と呼ばれるクルマが人気を博す。その頂点に立ったのがS13型シルビア。強力なライバル、ホンダ・プレリュードを販売面で抑え、勝利した。

 売れたいちばんの理由は未来的ともいえるデザインにあった。デビューした年にはグッドデザイン賞と日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得。人気だけでなく、商品力でも太鼓判が押された。

 シルビアは、デザインだけでなく、走りでも優れた実力を持っていた。当時の小型車はFWDが主流になりつつあったが、RWDを採用したシルビアは、走りの楽しさを求めるユーザーたちに強く支持された。

 そうした人気はアフターマーケットでの改造パーツ開発を加速させ、シルビアに乗る〝峠族〟(走り屋)を多く生み出した。 

 残念ながら、ボクはデートカーでデートしたことは一度もない。しかしシルビア、プレリュード、カリーナED、ソアラなどが人気を博した理由はよくわかる。その理由を端的にいえば「カッコいい」からだった。

 カッコいいクルマが若いユーザーたちに支持され、売れるという状況は、豊かな時代の証しでもある。本当に楽しい時代だった。

■主要諸元

グレード:K's
価格:5MT 214万円/4AT 224万4000円
寸法・重量:全長×全幅×全高4470×1690×1290mm ホイールベース2475mm 車重1120kg(ATは1140kg)
エンジン:1809cc直4DOHC16Vターボ(175ps/6400rpm 23.0kgm/4000rpm)
サスペンション:フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ:フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール:195/60R15+スチール
駆動方式:FR
乗車定員:4名
※スペックは1988年モデル

SNSでフォローする