伊藤さんが製作するクラッシックカーは、“スクラッチモデル”というジャンルで総称されている。市販キットを組み立てるモデルカーとは異なり、作者自身が素材を吟味して構成パーツをひとつずつ作り、完成車に仕上げていくというホビーだ。真鍮や銅、アルミ、レザー、ウッドなど、原車の材質を研究し、モデルカーとして表現する際に最適な素材を選択する作り手の審美眼が、作品の完成度を大きく左右する。
「キットを利用する場合でも、ほとんどのパーツに独自のアレンジを加えて徹底的にリアリティを追及しています。タイヤ以外は、すべてボクのアトリエで作れます」と伊藤さんはコメントしている。1台を仕上げるまでには相当な時間と努力と根気がいるが、好きなホビーならいくらでも時間を費やせるに違いない。
伊藤さんは当初、ホワイトメタルのキットモデルを作っていたが1982年、英国で活躍するスクラッチモデルの第一人者、J・ウイングローブ氏の作品に出会ってから、この分野に興味を持ったという。よりリアルな作品を作り上げるためにアトリエには小型施盤を据え、金属部分の加工を入念に行う。地道な作業の積み重ねだが、妥協することなく微妙なニュアンスの表現に取り組んでいる。1930年代のデューセンバーグやブガッティなどのビンテージモデルを中心に手がけてきた。そして現在は、「18分の1サイズのブガッティ・タイプ57シリーズをライフワークと考えて作り続けています」と、目を輝かせていた。
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