<新型スープラ特集>6気筒にこだわった、その真相

トヨタ・スープラRZ 試乗記

特大.JPGトヨタ・スープラRZ 価格:8SAT 690万円 3ℓ直6ターボ(340㎰)搭載 パワーウエイトレシオ:4.47㎏/㎰ アダプティブバリアブルサスペンション&アクティブデファレンシャル標準 0→100㎞/加速は4.3秒でクリア

17年ぶりに復活。新型はBMWと共同で開発

 自動車を取り巻く環境は、急速に厳しくなっている。
「人為的に排出されるCO2が地球温暖化に対して与える影響は、もはやどう考えても否定しようがない......」という意見が支配的だ。今後、予定されるCO2排出量(≒燃費)のメーカー平均値規制(罰則規定つき)が、ヨーロッパで量販を目指す各乗用車メーカーを悩ませている。その規制値は、パワーユニットが〝エンジン限定"のモデルの場合、対応不可能というほど厳しい。
 加えて、「地域内で量販を行うためには、規定の台数をピュアEVやFCVなど〝排出ガスゼロ車〟とすることが必須」という中国や米国カリフォルニア州のような規制が課せられたマーケットもある。これらに対応するため、いや応なしの「電動化」を急ピッチで推進中......というのが、世界中のメーカーの姿だ。
 新型スープラは、クルマをめぐる状況がなんとも先の読みにくい時代にあって、「よくぞデビューした」とたたえたくなる。
 新型はご存じのようにBMWとの共同開発モデルだ。BMWからランニングコンポーネントを譲り受け、オーストリアのマグナ・シュタイヤー社の工場でBMW・Z4と同じラインで生産される。
 つまり、新型のハードウエア面は、「歴代スープラとは、何のゆかりもない」。
「トヨタ独自で開発してほしかった」という意見には、もちろんボクも同意する。一方で、「そこにこだわったら、とても現在のタイミングでスポーツカーは発売できなかった」と聞くと、考えは変わる。自社開発という理想への思いのたけはひとまず引っ込め、改めて「誕生おめでとう」といいたくなった。

IMG_8982.JPGスープラはシャープな操縦性を目指しホイールベースとトレッドの比率を1.55に設定 超低重心設計

RZの走りのハイライトは「加速」にある!

 RZグレードは、「直列6気筒エンジンこそ、スープラの大切なアイコン」と語るトヨタ開発陣の思いが結実したラインアップの頂点。お気づきのようにRZの名称は、2002年に惜しまれつつ生産が終了した旧型のトップモデルと同じだ。価格は690万円である。
 長いフロントフードの下に8速ステップATとの組み合わせで搭載されたツインスクロールターボ付きの3ℓエンジンは、最高出力340㎰と、最大トルク500Nmを発生。駆動ギア比をはじめ、同スペックのZ4(M40i)比で50㎏軽い1520㎏のボディを、静止状態から100㎞/hまでわずか4.3秒(メーカー公表値)で加速させる。
「BMW謹製」となる珠玉の心臓を手に入れたRZの走りのハイライトは、加速にある。その素晴らしさは、アクセルをひと踏みするだけで、誰もが納得するに違いない。文字どおり力感にあふれ、痛快だ。
 この絶対的ともいえる加速性能とともに、多くのスポーツ派ドライバーの心をとらえるポイントが、「エモーショナルそのもの」とレポートできるエンジンテイスト、そして五感に響くフィーリングだ。
 どんな場面でも、無限にわき上がるような豊かなトルク感。回転数の上昇とともに刺激度を増すよどみのないパワー感。そして、澄みきったサウンド──。
 これらのすべてが混然一体となり、〝スポーツカーを操る快感"を盛り上げる。
 サウンドは、電気的に増強されて耳に届けられる演出がなされているが、不自然なギミック感はいっさいない。

IMG_9292.JPG2997㏄直6DOHC24Vターボ(B58型) 340㎰/5000rpm 500Nm/1600〜4500rpm WLTCモード燃費:12.2㎞/リッター 絶対的なパワーとエモーショナルな感覚でドライバーを魅了

ハンドリングはシャープそのもの

 高い振動減衰性から、ボディは際立って高い剛性を持っていると実感できた。また、FRレイアウトにもかかわらず、高いトラクション能力を発揮してくれる点も新型の見どころ。
 ハンドリングにはほれぼれする。ボクは「これこそ走りのハイライトだ」と絶賛したくなった。ステアリング操作に対して位相遅れはほとんどない。ハンドリングはシャープそのものだ。この鋭い切れ味は、世界のスポーツカーの中でも有数といえる。
 典型的な「ワイド&ロー」のプロポーションに、ピュア2シーターのパッケージングを採用。大胆に切り詰めたホイールベースがもたらす走りのテイストは、これまでのトヨタ社内の流儀にしたがっていたら、おそらく実現していなかっただろう。
 既存の殻を打ち破って新型トヨタ・スープラは誕生した。その中にあっても、RZは最も大胆で豊かな走りの個性が凝縮されている。トップグレードにふさわしい、世界超一流のミドル級リアルスポーツだ。

IMG_8862.JPGインパネは機能的なデザイン 中央に8.8㌅モニターをレイアウト RZの標準内装色は写真のイグニッションレッド ステアリングはスポーツ形状 JBLプレミアムサウンドシステム装備

IMG_8922.JPGRZのシートはアルカンターラ+本革コンビ カラーは写真のレッド opの本革はブラックカラー

IMG_8973.JPGスープラはオーストリアのマグナ・シュタイヤー社で生産 輸入後トヨタ元町工場(愛知県)で最終チェックを行う ボディは86比で約2.5倍の高剛性仕様

※次ページでスペックを紹介

スープラRZ主要諸元と主要装備

IMG_8992.JPG価格=8SAT 690万円
全長×全幅×全高=4380×1865×1290mm
ホイールベース=2470mm
トレッド=フロント1595×リア1590mm
車重=1520kg
エンジン=2997㏄直6DOHC24Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=250kW(340ps)/5000rpm
最大トルク=500Nm(51.0kgm)/1600〜4500rpm
WLTCモード燃費=12.2km/リッター(燃料タンク容量52リッター
(WLTC市街地/郊外/高速道路=8.3/12.9/14.7km/リッター)
サスペンション=フロント・ストラット/リア・マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール =フロント・255/35ZR19/リア・275/35ZR19+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=2名
最小回転半径=5.2m
パワーウエイトレシオ=4.47kg/ps
●主な燃費改善対策:直噴エンジン/可変バルブタイミング/電動パワーステアリング/アイドリングストップ
●主要装備:AVS(アダプティブバリアブルサスペンション)/フロント・ブレンボ製17インチアルミモノブロック4ポッド対向キャリパー/アクティブデファレンシャル/直径100mmヘアライン仕上げデュアルテールパイプ/19インチ鍛造アルミ/6灯式LEDヘッドライト/マットブラック塗装ドアミラー/プリクラッシュセーフティ/ステアリング制御付きレーンデパーチャーアラート/ブラインドスポットモニター/アダプティブハイビーム/レーダークルーズコントロール/クリアランスソナー/リアクロストラフィックアラート/本革巻きステアリング/パドルシフト/スポーツペダル/スポーツモード/ローンチコントロール/8.8インチTFTメーター/カラーヘッドアップディスプレイ/アルカンターラ+本革スポーツシート/シート電動調整機構/シートヒーター/カーボンオーナメントパネル/アルミドアスカッフプレート/トヨタ・スープラコネクトHDDナビゲーションシステム/JBLプレミアムサウンドシステム(12スピーカー)/DCM(専用通信機)/左右独立温度調整式オートAC
●ボディカラー:ホワイトメタリック
※価格はすべて消費税込み リサイクル費用は1万2870円
※スペックは2019年6月現在

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