ー 

トヨタの新型自動運転実験車

Writer:牧野茂雄 Photo:TOYOTA

▲ガーディアン(高度安全運転支援システム)とショーファー(自動運転システム)という2種類の自動運転システムをTRI-P4(レクサスLSガベース)で開発していく

 2019年1月に米国ネバダ州ラスベガスで開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)でトヨタは、人間の運転操作を高度に支援するガーディアンというシステムを開発・実用化し、これを他社にも供給する考えを明らかにした。ガーディアンは、ドライバーがステアリングを握っている状況で"車両の安全な運行を支援する仕組み"だ。

 いま、自動車業界では将来の完全自動運転時代を見据えた〝陣営作り〟が始まっている。年産1000万台規模のトヨタが自動運転ソフトウエアを他社に供給するという戦略は、この分野でトヨタ陣営が拡大する将来像を意味する。

 ガーディアンの開発はトヨタの傘下にある、TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)が担当する。同社はAI(人工知能)研究を行う企業で、AIソフトウエアの開発および実用化に向けた検証作業をしている。

 なお、トヨタはレベル4〜5の完全自動運転に対応するソフトウエアとしてショーファーを開発しているが、TRIはガーディアンについて「人間の能力を置き換えるのではなく、増大させるもの」と説明しており、その点ではドライバーなしでの自動運転を行うソフトウエアのショーファーとは目的が異なる。いわば現在のADAS(高度運転支援システム)の進化型だ。

▲TRI-P4の運転席 車両の両サイドにカメラを装備して周囲の認識性能を高めている

 TRIは「テストコースにパイロンを並べたスラロームコースの場合、ガーディアンを使うとドライバーはパイロンにぶつからずにクルマを自分の体の延長のように自由にコントロールできる」と説明する。このシステムを開発するヒントになったのは「F16のような戦闘機の飛行制御方法」という。「パイロットが直接航空機を操作するのではなく、パイロットの意思を毎秒何千回という単位でフライトコントロールシステムのプログラムに変換する」システムだ。いわゆるFBY(フライ・バイ・ワイヤー)である。

 ただし、このガーディアンの詳細は未発表だ。通常、自動運転のためのAIソフトウエアは、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる作業を行い、さまざまな条件下で正しい判断ができるよう、覚え込ませた情報をネットワーク化する作業を繰り返して構築される。このプロセスは膨大な時間がかかるため、AIソフトウエアをオープンソース(無償提供情報)化して、これを共有するグループを形成、そこに参加する企業に開発を手助けしてもらうという手法をとる。トヨタのガーディアンもこの方法を踏襲するだろう。

 一方トヨタは、自動運転AIのための演算装置についてはNVIDIAのようなチップメーカーと提携している。カメラなどのセンサーが得た情報から"安全な運転操作"を導くための演算装置は、高速演算が得意なCPUと並列演算が得意なGPUを併用する場合が多いが、ガーディアンがどのような演算装置を持っているのかは未公表だ。

 その一方で、自動運転分野は〝囲い込み〟が始まっている。ソフトウエアも演算装置も、同じものを共有する企業が多いほど開発スピードが上がりやすくなり、同時にコストが下がる。当然、トヨタもその方向を狙っていると思われる。昨年10月にはホンダと米国GMが提携し、今回のCESでは世界第3位の自動車部品メーカー、独・ZFとマイクロソフトの提携拡大なども発表された。トヨタはソフトバンクとも提携している。

 自動運転分野で注目されるのはトヨタ、GM、VW(フォルクスワーゲン)、ルノー/日産/三菱という大手グループの去就だ。それぞれがどのような企業と連携するのかは、完全自動運転の実用化に向けた動きの中で、最大の関心事といっていい。

▲トランク内に設置したコンピュータボックスが自動運転を司る トランクスペースはベース車と同じように利用できる
1

Related Articleビジネス × テクノロジーもっと読みたい

What's News最新情報