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トヨタがハイブリッドの特許2万3740件を開放

Writer:牧野茂雄 Photo:小久保昭彦

狙いはストロングハイブリッド陣営の拡大か

de00a8c63f37796aff27b4ce43d420134897779c.jpg▲トヨタ ・プリウス 写真は4thモデル プリウスはハイブリッド車の普及を推進した代表的なモデル

 トヨタは4月3日、「プリウスなどハイブリッド車(HEV)に関する特許を無償で提供する」と発表、同日付で特許公開に踏みきった。その対象特許件数は約2万3740件に及び、パナソニックと協業する電動車用2次電池(バッテリー)を除く、前代未聞の大型特許開放である。記者会見でトヨタは「多くの自動車メーカーと協調し、システムサプライヤーとして電動車の普及に貢献、環境問題に対応していく」とコメントした。

 トヨタの発表によると、無償公開される特許は、電動モーター関連が約2590件、パワーコントロールユニット(PCU)関連が約2020件、システム制御技術関連が約7550件、エンジンおよびトランスアクスル関連が約1320件で、FCEV(燃料電池電気自動車)関連の特許は約8060(この中には2015年1月に特許の無償提供を開始した案件が含まれている)だ。特許の無償提供期限は30年末までであり、今回の公開に伴い20年末までの期限ですでに公開しているFCEV関連の特許についても「30年末まで公開期間を延長する」と発表した。

 1997年に発売されたトヨタ初のHEV、プリウスは、世界初の量産型HEVだった。開発は、トヨタをはじめトヨタ・グループのサプライヤー(部品・素材メーカー)が総力を結集して行った。ここで開発されたエンジン横置きFF用のTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)は現在、THSⅡに発展している。エンジン縦置きFR用のTHSも開発され、最も新しいタイプは4段変速機構を組み合わせて擬似的に10段変速を行う、最高速度250km/h対応のシステムである。これらに使われている特許の大半をトヨタは他社に無償で提供する。

 この特許開放の最大の目的は、ストロングハイブリッドと呼ばれるトヨタ方式HEVの陣営拡大だろう。現在、トヨタ以外でTHSを採用している自動車メーカーはマツダとSUBARU(スバル、米国でクロストレック・ハイブリッドとしてPHEVを販売)だけで、生産台数は少ない。幅広い運転領域でエンジンとモーターを協調させるストロングハイブリッドは燃費向上効果が大きいが、システムが複雑で、コストもかかる。そのため欧州ではボッシュ、コンチネンタル、ボルグワーナーなどがマイクロハイブリッドおよびマイルドハイブリッドと呼ばれる簡易型電動モーターアシスト機構を提案し、すでに自動車メーカーの採用が始まっている。

レクサス.jpg▲レクサスLS500h FR駆動で10段変速を装

 かつてはGM、ダイムラー、BMWの3社連合がエンジン縦置き用の2モーター・2モードと呼ばれるストロングハイブリッドを共同開発したが、それ以外に開発、実用化の例はない。トヨタはTHSの改良と同時にコスト低減にも取り組み、4thプリウスが採用するモーターと発電機を別軸配置にした並列型システム(従来はモーターと発電機を同軸配置)で大幅なコストダウンを実施。もし、ほかの自動車メーカーがこのシステムを採用して量産数が増えれば、1基当たりのシステム単価を下げられる。これはトヨタにとって大きなメリットである。

 トヨタは記者会見で「トヨタのHEV技術の供与を希望する企業とは実施条件などを協議したうえで契約を結ぶ」としている。また、個別の車種適合については「必要に応じ、トヨタ・グループのサプライヤーも交えて有償での支援契約を結ぶことになるだろう」という。つまり、単に特許をオープンにするだけでなく、"要望があればトヨタのHEVシステムを使った市販車の開発をトヨタとトヨタ・グループが有償で支援する"展開だ。今回公開される特許を使用すれば、HEVだけでなくPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)やBEV(バッテリー充電式電気自動車)も開発できる。

 4年前、トヨタはFCEVの普及を狙って特許約5680件を開放した。しかし、このときは市販車への展開ノウハウについては提携先にとどめたため、トヨタの特許を実際に使用する開発例はほとんどなかった。今回は特許の開放と有償での開発協力と部品・ユニットを供給し、トヨタ方式の拡大に期待している。

トヨタ ・ミライ.jpg▲トヨタ ・ミライ 燃料電池システムを搭載

 自動車の電動化については現在、中国のように国家がBEV普及を推進する例と、欧州のように環境規制をクリアするためにPHEVおよびマイクロ/マイルドHEVの導入が増えつつある地域、そして日本のようにストロングHEVが一定のシェアを握る国など、いくつかのグループに分類できる。共通しているのは、以前の流行だったFCEVがトーンダウンしたことだ。FCEVをカタログモデルとして販売しているのはトヨタとホンダだけで、トヨタにしてみればストロングハイブリッドがFCEVと同じ道をたどることだけは絶対に避けたいところ。技術を〝囲い込む〟のではなく、広く他社に提供する道を選んだトヨタ。その悲願は、はたして成就するだろうか。

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