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トヨタとスズキが資本提携で目指す未来像とは

Writer:牧野茂雄 Photo:TOYOTA.SUZUKI

提携のスタートはトップ同士の会談から

トヨタとスズキの提携話.jpg▲2016年10月にトヨタとスズキは「業務提携に向けた検討を開始した」と発表 トヨタの豊田章男社長(左)とスズキの鈴木修会長

 ついにトヨタとスズキが資本提携を行った。8月28日の両社発表によると、トヨタはスズキに960億円を出資してスズキ株の4.94%を取得し、スズキはトヨタに480億円を出資してトヨタ株の0.2%を取得するという「株持ち合い」というかたちでの資本提携だ。

 事業協力については、今年3月の業務提携時に発表したとおり、
1)トヨタの強みである電動化技術および電動車の供給
2)スズキの強みである小型車およびパワートレーンの供給
3)両社の強みを生かした開発・生産領域での協業の3点が中心である。

 トヨタはスズキが実施する第三者割当による自己株式処分により、同社の普通株4.94%を所有し、スズキはその半額に当たる金額に相当するトヨタ株0.2%を取得する。また、3月の業務提携時点では言明していなかった「〈自動運転分野を含めた新たなフィールド〉でも協力関係を築く」と発表された。

 両社が資本提携を行った理由については「スズキ側の事情」とのメディア報道が多い。提携の発端は、2016年秋にスズキの鈴木修会長とトヨタの豊田章一郎名誉会長が会談を持ったことだった。

 この会談で、鈴木会長が豊田名誉会長に「『提携しませんか』と持ちかけた」と新聞や経済誌は報じている。そして、この件で両社が共同記者会見を開いたのは同年10月12日、世の中はこの日に初めて両社の業務提携に向けた話し合いが始まったことを知る。

 トップ会談で話し合われた件だけに、両社はすぐに検討を開始。現場レベルも含めて両社それぞれに「どのような協力体制が理想か」「互いの弱点をカバーできる領域はどこか」といった社内協議に入った。約3カ月をかけた検討の結果、ある程度の路線が固まり、17年2月に「業務提携の具体化に向けた覚書」が交わされた。この段階で業務提携を行う方針が本決まりとなった。

 これ以降、トヨタとスズキが資本も含めた提携関係になるかが注目されたが、さらに1年を費やした協議の結果、今年3月に「新たな協業検討に合意」との内容が発表された。それが冒頭の3項目だった。この時点では触れられていなかったが、最終的に資本提携が発表された。提携案件が公表されてから2年以上を経ての資本提携合意だったが、この間、両社それぞれに動きがあった。

 昨年9月にスズキは中国からの撤退を発表した。国営大手の長安汽車との合弁会社である重慶長安鈴木汽車について、スズキの持ち株分を「長安汽車に譲渡する」と発表、「約25年間続いた中国事業だが、現地市場がより大型のクルマにシフトしている状況もあり、株の譲渡を決めた」と鈴木会長はコメントしている。中国の江西昌河汽車との合弁会社である昌河鈴木汽車についても、スズキの持ち株すべてを昌河汽車に譲渡し合弁を解消しており、中国市場については「商品供給の契約期間が満了を迎えた時点で完全な撤退となる」と説明した。

 その一方でスズキは、最大の生産拠点のインドで生産するモデルをトヨタに供給するほか、両社で協力してアフリカ市場の開拓を行う計画が昨年5月に発表されていた。スズキとしては、利益の上がらない中国から撤退し、インド事業の拡大とアフリカ開拓というメインビジネスに取り組む方針を優先した。同時にトヨタは、スズキのエンジン開発などを支援するほか、スズキが開発したクルマを自社のインド拠点で生産する計画を決めた。

 要するに、スズキとトヨタは、商品ジャンルと手持ちの技術および市場を互いに補い合うという提携である。資本関係を結んだのは、この協力体制の象徴という意味合いが強いだろう。力の支配とは無縁の、欧米の自動車メーカーではあり得ない資本提携といえる。

 トヨタは現在、ダイハツを100%出資の完全子会社とし、日野自動車には過半数の50.11%を出資、SUBARU(スバル)に対しては16.82%を出資する。ダイハツと日野は連結子会社という関係だが、スバルについては議決権株の15%以上を保有する筆頭株主であり、実質的な影響力が大きいため、一般的には〝関連会社〟と呼ばれる関係だ。

 これに対し、マツダの場合はトヨタが5.05%を出資し、マツダもトヨタに0.25%を出資するという株持ち合いの関係だ。出資金額はともに500億円であり、会社の規模は違うが対等な関係の資本提携にある。なお、マツダにとってトヨタは第3位の株主である。スズキもマツダと同様、対等な関係の資本提携だ。

 トヨタとスバルの資本関係は、スバルと資本提携していた米国GMが、スバル株を手放す動きがきっかけだった。スバルは防衛庁(現防衛省)に納入する航空機部門を持っていたので、GMが放出する株を「責任ある日本企業」が引き継ぐことが重要だった。そのため政府の意向をくみ、トヨタが引き受けた。一方、マツダとトヨタ、スズキとトヨタの資本提携は、民間企業同士の意思である。なお、日産がルノーの資本参加を受け入れるときも、日産が持っていた防衛産業部門は切り離された。スズキもかつてはGMと資本提携していたが、スバルとほぼ同じ時期にGMからの依頼で、同社が所有するスズキ株を現金で買い取っている。

 現時点で、トヨタとスズキの資本提携についての関心事は、軽自動車の処遇である。トヨタとスバルはダイハツ製軽自動車をOEM販売している。スズキとダイハツという長年のライバルが、トヨタを仲介に急接近したかたちだ。  ビジネスベースで考えれば、パワートレーンとプラットホームを統合し、3社で共同使用することがベストだが、どうなるだろうか。この件に関しては、まだ何も発表されていない。

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