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クラシックカーのEVコンバージョンに難色を示す理由

Writer:土方細秩子 Photo:VW

VINナンバー変更で個体識別が不可能になる恐れあり

VWバスメイン.jpg▲VWタイプ2バス(1972年式) EVウエスト社がVWの協力を得て電気自動車にコンバートした

 いまやEV(電気自動車)は世界的なブームといっても過言ではないだろう。各自動車メーカーも新興企業も、EVの製造販売を目指す時代になった。その一方で、クルマの世界には根強いクラシックカーファンが存在する。

 このところ注目されているのが、この2つの流れを合わせて、クラシックカーをEVにコンバートするという動きだ。つまり外観はクラシックカーだが、中身は最新のEVというクルマが続々登場している。しかもこの動き、大手自動車メーカーがサポートしているケースも多い。

 最近でもVWビートル、アストンマーティンDB6、英国のヘンリー王子がメーガン妃との結婚の際に使用したジャガーEタイプなど、歴史的名車のEVコンバージョンが生まれた。

VWモーター.jpg▲タイプ2のエンジンを外してバッテリーを搭載 エンジンのヘッドカバー風アイテムがガソリン車テイストを演出

 こうしたモデルの多くはテスラのバッテリーパックを使用し、コンバージョンキットとして販売、あるいはスタートアップ企業がコンバージョンを行うケースが多い。

 EV化に必要な費用は、1万㌦(約110万円)以下からOK。クラシックカーオーナーは、自慢のクルマのスタイリングはそのままにEVの走りが楽しめる。

 このコンバージョンの流行に苦言を呈する団体もある。1966年に設立され、世界60カ国以上で約150万人の会員を擁するFIVA(国際クラシックカー保存連盟)だ。「クラシックカーとはオリジナルのエンジンを含めてのものであり、スタイリングだけクラシックではその価値を失う」と主張している。

充電ジャック.jpg▲燃料の給油口を利用して充電プラグが利用できるように改造

 問題のひとつは、車両のVINナンバーだ。国際標準化機構(ISO)が定義し、1981年から世界的に普及した(米国は1954年から独自に運用)。VINは17桁の英数字で構成するクルマの識別番号。この番号を検索するとクルマの履歴がわかる。だが、EVにコンバートすると、オリジナルのナンバーが認められなくなる可能性がある。

 コンバージョンを行う会社の中には、コンバージョン後も同じVINを維持できるよう申請書を作成するところもあるが、受け入れられるかどうかはクルマが登録されている場所次第だ。コンバージョンを行うと、VINが変わり、文字どおりまったく別のクルマになってしまう、というケースがある。

リアのモーター.jpg▲eゴルフのパワートレーンを使って後続距離は約200kmを達成

 FIVAはこうした事態を憂慮し、「歴史的なクルマのオリジナルエンジンを電気モーターに換えることで、FIVAが定める歴史的車両の定義から外れる恐れがある。そうなると、FIVAが目的とする歴史的なクルマの保存、それにまつわる歴史や文化を継承する狙いからも逸脱する」という声明を発表した。

 FIVAは「クラシックカーとは、単なる形を指すのではなく、エンジンなどそのクルマが作られた時代、様式、技術などの総合であり、それを保持することが大切なのだ」という。

 そこでFIVAは、「もしコンバージョンを行ったとしても、オリジナルのエンジンコンポーネントは安全な場所に保管し、必要があれば再びオリジナルエンジンに戻せる状態にしてほしい」と主張している。EVモーターを搭載している間は「一時的に」クラシックカーの定義から外れても、オリジナルエンジンに戻せば再びクラシックカーとして認められる、という判断だ。

インパネ全体.jpg▲シフトスティックが走行モードのセレクションスイッチになっている

 FIVAが危機感を持つのは、メーカーがコンバージョンを行うケースも増えているためだ。VWビートルなどがその例で、VW社が自社でEVコンバージョンを行う場合もある。

 確かに時代はEVに向けてシフトしているが、「オリジナルエンジンの魅力、その歴史的背景も大切にしてほしい。クラシックカーを保存する、という意味をいま一度考えてほしい」とFIVAはアピールしている。

 もっとも、VINが国際的に普及しはじめた1980年代半ばのモデルをクラシックカーと呼ぶかどうかは微妙なところ。米国は1950年代半ばから、独自に運用していたから、クラシックカーと呼ぶにふさわしいモデルも多い。

バスのリア.jpg▲クラシカルな雰囲気をそのままにeゴルフのパワートレーンを搭載している

「オリジナルを守れ」という主張と「好きなデザインのクルマでモダンな走りを楽しみたい」というオーナーの意見は、今後も対立するだろう。

 クルマには歴史と文明進歩の背景がある。一方、乗りたいクルマを好きなように改造する、という楽しみもある。この論争の行方はどうなるのだろうか。

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