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世界の車両電動化の現状と将来展望

Writer:牧野茂雄 Photo:VW,TOYOTA,Mercedes-Benz,Group PSA

世界中のクルマが電動化する日は、いつ到来するのか?

VW ID3.jpg▲VWのピュアEV(BEV)として2019年に生産がスタートしたID.3

 2020年代の自動車産業界はどのような展開を見せるか──シンクタンクや調査会社が発表している予測を集めて分析してみると、最大の関心事はパワートレーンの行方だとわかる。ガソリン/ディーゼルの比率はどんどん下がり、BEV(バッテリー電気自動車)や外部から充電できるPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)の比率が増えるのか。それとも急激な変化はまだ訪れないのか。この点を探ってみた。

 まず、地域ごとの規制動向である。車両の電動化が進む最大の理由は、燃費(二酸化炭素)規制の強化にある。

 EU(欧州連合)は現在、2021年の達成を目標にした95g/km、1km走行したときの二酸化炭素排出量が95gという規制を敷いている。2015年の130g/kmより27%厳しくなった。そして2030年代を目標に60g/kmという規制案が出されている。

 米国では2020年モデルの目標値が37mpg(15.6km/リッター)だった。オバマ政権時代にこれを50mpg(21.1km/リッター)に引き上げる方針が決まったが、トランプ大統領が却下した。2026年モデルまで15.6km/リッターが適用される。

 日本は2020年度目標を17.6km/リッターに定めていたが、2019年6月にこれを24.5km/リッターへ引き上げる方針が決まった。

 世界最大の自動車需要国、中国は2020年に5リッター/100km(20km/リッター)という目標だったが、これとは別に一定比率のBEV、PHEVおよびFCEV(燃料電池電気自動車)の3種類、いわゆるNEV(新エネルギー車)を販売するよう義務付けるという二重規制を適用している。

プリウスPHEV.jpg▲トヨタ・プリウスPHEV(2017年の欧州仕様) スタンダードモデルの二酸化炭素排出量は22g/km

 これら地域ごとの規制はすべてCAFE(企業別平均燃費)であり、モデルごとの燃費か二酸化炭素排出量に販売台数を掛けた数字を合計し、正確に1台当たりの平均値を計算している。たとえばEU加盟23カ国の2018年データは全体平均が120.5g/kmだ。2007年以降は毎年着実に減少してきたが、2017年と18年は2年連続の増加だった。その理由としては「ディーゼル車が敬遠され、ガソリン車の販売が伸びた」という販売実績が挙げられている。

 EU加盟23カ国で販売された乗用車の二酸化炭素排出量(自動車メーカー別)が少ない順にランキングすると、トップはトヨタの99.9g/km、2位はプジョーの107.7g/km、3位はシトロエンの107.0g/km、4位はルノーの109.1g/km、5位は日産の110.6g/kmと日仏勢が上位を占める。

新型プジョー3008HP用.jpg▲プジョー3008 プジョーは2019年10月「2025年までにグループの全車に電動パワートレーンを設定する」方針を明らかにしている

 一方、販売台数に占めるBEV比率が10%を超えたのは2018年実績でノルウェーとオランダだ。この両国はBEV購入時の優遇が手厚い。とくにノルウェーの場合は25%の購入時付加価値税や道路税が免税となり、有料道路やフェリー料金も無料になる。こうした背景があって、BEVの販売比率が高い。

「どれだけ優遇されるかでBEVの販売台数は決まる」とシンクタンクは分析している。その根拠は、中国で好調だったNEV販売が、2019年6月に補助金が大幅カットされたとたんに売れ行きが鈍った。一時期はすべてのシンクタンクと調査会社が「中国は電動車大国になる」と予想していたのだが......。

 規制という意味では、2017年秋にフランスのマクロン大統領が「2040年までにガソリン車とディーゼル車の新たな販売を禁止する」と発言し、大いに注目された。だが、その後、エンジン車販売禁止が法的拘束力を持つに至った例はまだない。フランスとイギリスでは政府案にはなっているが、国の方針として確定はしていない。

 ドイツは2016年10月にEU委員会に対し「EU域内でエンジン車の販売を禁止することを検討するよう求める」という決議を行った。ところが、自国内でエンジン車の販売を禁止する決定はしていない。

MB EQC 充電の様子縮小.jpg▲EQC(写真)はメルセデス・ベンツのピュアEV

 実は、EU加盟各国はBEV販売目標を2014年ごろに決めていた。ドイツとフランスは100万台、イギリスは160万台、オランダやデンマークは20万台という数値が2020年の目標だった。ところが、どの国も達成は難しい。EU23カ国のBEV販売比率は平均2〜3%だ。この点についてある調査会社は「BEV普及台数は国民の平均所得に比例する」とコメントしている。

 では、2020年代の電動車販売はどうなるのだろうか。2019年3月までに有力シンクタンクなどが発表したデータを見ると、2030年時点での全世界販売予測には大きな開きがある。最も強気の予測は3300万台、最も弱気の予測は730万台である。最大と最小、この2つの予測を除いたシンクタンク8社の予測は平均で1340万台だ。

 ところが、2019年6月に中国でNEVが失速し、7月以降は前年同月比マイナスになった実態を受けて、いくつかの予想見直しが発表された。また、VW(フォルクスワーゲン)が2019年11月に量産を開始したBEV、ID.3の今後の量産見通しについては「予想よりも少ない」とのコメントが多い。

メルケル首相とID3.jpg▲2019年11月ドイツのメルケル首相はVW・ID.3のラインオフ式典に参加 国を挙げて車両の電動化に取り組んでいる姿勢をアピール

 中国政府は各メーカーが達成すべきBEV販売比率を引き上げる方針を打ち出したが、販売の現場からは「おそらく無理だろう」との声が上がっている。日本のシンクタンクは2030年時点でのBEV世界販売台数は「全自動車販売台数のせいぜい10%強」と予測している。米国の有力なシンクタンクは2030年の世界自動車需要を1億1200万台、そのうちBEVは1300万台程度と見ている。BEV比率は11.6%だ。これが現在の「平均的な予測」である。

 では、残りの販売台数はどんなパワートレーンを積むのか。それはガソリンエンジンとディーゼルエンジン、そして電動モーターでエンジンをアシストする何らかのハイブリッド車である。何らかのハイブリッド車の販売台数は4700万台程度、全体の40%強になると予測されている。

VWの自動給電ロボット.jpg▲VWは2019年12月に自動走行型給電ロボットを発表 充電を必要としているEVのところにロボットが自律走行で向かい電気を供給する 最大給電量は50kWと発表されている

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