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政治家や官僚主導で大丈夫なのか!?「2050年カーボンニュートラル」と「2030年100%非ガソリン車」で日本が考えるべき根本的ポイント

Writer:世良耕太 

▲トヨタMIRAIは燃料電池車(FCEV)

 経済産業省は2030年代の半ばまでに国内の新車からガソリン車をなくし、すべてを電気自動車やハイブリッド車などの電動車にする方向で調整する方針を明らかにした。2020年12月4日、閣議後の記者会見で梶山大臣は「2050年カーボンニュートラルを宣言をしているわけで、その実現のためには自動車の電動化というものは不可欠だ」と述べた。

 これは、菅義偉内閣総理大臣が10月26日に行った施政方針演説で「2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指す」方針表明を受けたものだ。小泉進次郎環境大臣は、12月4日の記者会見で「30年代の半ばという表現は国際社会のコミュニケーションでは通用しない」とし、カーボンニュートラルへの本気度を示すなら「35年」と明確に時期を示すべきだとの見解を示した。

▲MIRAIはフロントに燃料電池と昇圧コンバーターを搭載

 気をつけておきたい点は、ガソリン車を禁止して電動車にシフトする政策は、電気自動車(BEV)への100%置き換えを意味しないことだ。

 政府が掲げる電動車にはバッテリーに蓄えた電気エネルギーで走るBEVに加え、ガソリンなどの化石燃料を燃やして動力を得るエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド車(HEV)、HEVに外部充電機能を装備したプラグインハイブリッド車(PHEV)、水素と酸素の化学反応で発電してモーターを駆動する燃料電池車(FCEV)も含まれる。世の中のクルマすべてをBEVに置き換えようというのではない。だから、「脱ガソリン」という表現も正しくない。BEVとFCEV以外も対象とした場合、エンジンは残る。

▲ホンダeは欧州の厳しい二酸化炭素排出規制に対応する電気自動車 日本では台数限定販売

 経産省の方針表明は、日本も欧米や中国と同様、カーボンニュートラルに向けて具体的に動き出した姿勢をアピールする狙いがある。欧米の状況を見ると、英国は2030年にガソリン車を販売禁止にし、2035年にはHEVを販売禁止にする目標を掲げている。1990年にZEV(ゼロエミッション車)規制を発効した米国カリフォルニア州は2035年、フランスは2040年にガソリン車を販売禁止にする。

 菅首相の方針や経済産業省の発表に呼応するように、小池百合子東京都知事は12月8日の都議会本会議で「都内で販売する新車は2030年までに[100%非ガソリン化]する」と表明。従来は2050年を目標にしてきたが、大幅に前倒しされる。都知事が目指す100%非ガソリン化は、EVとPHEV、ハイブリッド車にするという意味だ。

▲三菱エクリプスクロスPHEV 外部充電が可能なプラグインハイブリッド車

 日本が急速に電動車指向を明らかにしているもうひとつの背景として、2030年の達成目標の企業別平均燃費(CAFE)規制がある。国土交通省と経済産業省は2020年3月、「乗用車の2030年度燃費基準」を策定した。

 その内容は、「2016年度の実績19.2km/リッターに対し、 2030年度は25.4km/リッターに引き上げる」というもの。実に32.4%の燃費改善率である。

 現在販売されているモデルでいうと、トヨタC-HR(ハイブリッド)の燃費が25.0〜25.8km/リッター。日本のCAFEの厳しさがわかる。したがってこれからの10年で、目標を達成するには、ハイブリッド技術の効率アップや、燃費面で有利なBEVやPHEVの販売増加は必須といえる。

▲トヨタC-HR 写真のGグレードのWLTCモード燃費は25.8km/リッター

 そのうえ日本は、ウェル・トゥ・ホイール(油田からタイヤまで)の考え方でエネルギー消費効率を評価する。これは、BEVやPHEVに「電力が供給されるよりも上流側のエネルギー消費効率」も考慮する方式。発電段階のCO2排出量が考慮され、BEVの場合でも、ガソリン消費ゼロという計算にはならない。

▲トヨタが2020年12月に発表したBEV仕様のミッドサイズSUV プラットフォームはeーTNGA 詳細は「数カ月以内に発表する」とメーカーは説明している

 欧州の自動車メーカーが、近年こぞってBEVやPHEVを発売する理由は、EU(欧州連合)のCO2(二酸化炭素)規制をクリアするためだ。

 2021年から乗用車のCO2排出量規制は95g/kmに強化される。モデル別のCO2排出量に販売台数を掛けて計算し、そのメーカーが販売した1台当たりの平均が95g/kmを超えた場合は、排出超過分と販売台数に応じて罰金(1g当たり95ユーロ)を支払わなければならない。何らかの策を打たなければ、日本円にして数千億円に達する罰金が予想されるメーカーもある。

 EUはBEVやPHEVを優遇しており、BEVは無条件でCO2排出量をゼロにカウントする。PHEVはEV走行できる距離に応じてC02排出量が優遇される。この点が日本のCAFEとは異なる。もっとも、多様なBEVやPHEVがデビューし、その魅力がユーザーに理解されたからこそ、現在のような急速な販売拡大がある。

▲トヨタが2020年4月に中国で販売を開始したC-HR・EV

 中国のNEV(新エネルギー車)規制はカリフォルニア州のZEV規制を見習った内容で、年間3万台以上を生産する自動車メーカー各社に一定量のエコカー(対象はBEVとFCEV、PHEV)の導入を義務づける政策だ。中国国内の自動車メーカーに対しては補助金を与えてBEVの開発を後押ししている。

 しかしユーザーにとっては、BEVメーカーが受け取る補助金は直接的には関係なく(本来、手ごろな価格で提供するための補助だが)、航続距離の心配が不要なHEVの価値に気づきはじめ、販売を伸ばしている。中国政府も態度を軟化させ、2020年6月には、エコカー政策優遇制度にHEVを含める方針を打ち出した。この変更を受け、中国市場ではHEVの販売が伸びる可能性が高い。

 BEVとFCEVは走行段階でCO2を排出しない。PHEVもEV走行中のCO2排出はゼロである。だが、風力や水力などの再生可能エネルギーで発電しないと、発電段階でCO2が発生する。また、水素を生成する際にも化石燃料を利用すると、CO2を排出する。

 電力のほとんどを水力発電でまかなうノルウェー(約97%が水力発電)のような国でBEVを普及させることに意味はあるが、発電時にCO2を排出する石炭火力発電や石油火力発電の多い地域でBEVを普及させても、CO2排出量の低減には貢献しない。

 欧米中の電動化シフトは政策先行であったり、自国産業保護的であったりし、カーボンニュートラルに向けた実効性の高さに疑問が残る。日本は他国と比較して遅れているように感じるかもしれないが、焦りは無用。重要な点は技術である。発電形態とクルマの使用状況に合ったロードマップを慎重に検討し、効率的な排出抑制策を選択することが大切だ。根本的には、エネルギー政策の転換を見据えた議論が必要になる。

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