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中国最新汽車事情 「トヨタの新能源元車戦略」

Writer:湯 進 Photo:湯 進

▲イゾア(CーHR)は一汽トヨタが販売するモデル 今年4月の上海ショーでBEVモデルが発表された
▲イゾア(CーHR)は一汽トヨタが販売するモデル 今年4月の上海ショーでBEVモデルが発表された

トヨタは2025年までに電動車15車種を投入予定

 世界最大の電気自動車(BEV)市場、中国で電動化シフトを加速するトヨタ自動車は、2025年までに新型車9車種を含む15車種を投入し、第1弾としてSUBARUと共同開発した多目的スポーツ車(SUV)のコンセプトカー、bZ4Xを2022年中に発売する予定。EV専用のプラットフォーム、e-TNGAを採用し、両社で開発した共用の部品も量産車で初めて採用する。

▲UX300eはレクサス初の市販BEVモデル

 また、パナソニックとの合弁企業であるプライムプラネットエナジー&ソリューションズは、中国大連市の車載電池工場に生産ラインを新設し、車載電池の生産能力の拡大を図っている。さらに、中国EV大手のBYDと専用モデルの共同開発を行い、中国車載電池最大手の寧徳時代新能源(CATL)と包括的提携を結んだ。自動車業界の「100年に一度の大変革期」で電動化の波が押し寄せている中、自動車メーカー各社が警笛を鳴らす状況を迎えている。トヨタも例外ではなく、日本・中国企業との合従連衡を通じて、電動化シフトを急いでいる。

トヨタの中国電動化戦略

▲BYDのeプラットフォーム トヨタは2020年4月にBYDとBEVの研究開発に関してジョイントベンチャーを立ち上げることで合意 市販車開発に向けて作業を進めている

 モビリティカンパニーを目指すトヨタは、2025年にBEVや燃料電池車(FCV)を含む電動車の世界販売の目標を550万台に設定し、そのうちBEVの年間販売台数が100万台に達すると見込んでいる。今後、世界で環境規制がいちだんと厳しくなる中、トヨタはHVだけでは対応できなくなり、BEVシフトを急いでいる。中でも中国を皮切りにトヨタは電動化の攻勢を開始した。

▲カローラのプラグインハイブリッド仕様車

 トヨタは2019年、同社にとっては中国仕様初のプラグインハイブリッド車(PHV)のカローラE+とレビンE+を発売した。ただし、PHVの生産で確保できる新エネ車(NEV、新能源車)クレジット(NEV生産義務の定量指標)はBEVに比べて少ないのが課題だった。そこで2020年、自社初の中国産EV、C-HR、イゾア、そしてレクサス・ブランド初のEV量産車 UX300eを相次ぎ投入した。しかし、中国では依然として車載電池が高価なため、BEV全体もガソリン車に比べ割高となっている。C-HRの販売台数は2020年に5万4000台に達したものの、ガソリン車仕様比で120万円高のC-HR・EVは1062台にとどまっている。

BYDと低価格EV生産

 こうした中国EV市場の特性や研究開発のコストを勘案して、トヨタは2020年に中国EV・車載電池大手のBYDと合弁会社を設立し、BYDの「eプラットフォーム」を活用したEV量産化を行っている。2025年までにはトヨタブランドのEVセダンと低床SUVを投入し、コストパフォーマンスの高いEVで中国市場の攻略を目指す。

 eプラットフォームは、駆動系ユニット、高圧電源ユニット、制御ユニット、自社製リチウムイオン電池の4種類のドメインコントローラーを車載システムで統合するものだ。2021年4月に発表した「eプラットフォーム3.0」は自主開発の車載オペレーションシステム「BYD OS」を採用しており、自動運転能力の強化を図ろうとしている。同バージョンを搭載したEVの航続距離は1000km超を誇り、5分間の充電で150kmの走行が可能になる。

 BYDはトヨタとの提携により自社ブランド力の向上を図るとともに、他社とEV開発を加速し、eプラットフォーム3.0を標準化する思惑もうかがえる。一方、トヨタにとっては開発費の引き下げ、部品の共同調達、車両コストダウンなどのメリットが期待されるだろう。

 トヨタはBYD電池の採用も視野に入れる。BYDは1995年から車載電池の生産を開始し、中国車載電池業界に君臨してきた。専業電池メーカーと異なり、EVを手掛けるBYDは、電池を外販しないため、2017年から業界首位の座をcATLに明け渡した。BYDは2020年3月、「ブレードバッテリー」と名付けた新型電池を発表し、セル1つ1つを刀の刃のように薄くし全体の体積を小さくし、航続距離を最大600kmまで引き上げることを実現した。

▲BYDが2019年に発売したコンパクト(全長4360mm)SUV・EVの「元(ユアン)」 BYDはSUVの「唐」やミニバンの「宋」などをラインアップ

異業種との協業

 トヨタは2019年にCATLと提携し、電池の安定調達のみならず、新技術の開発やリユース・リサイクルなど幅広い分野における協業を目指す。中国2大電池メーカーと提携することにより、魅力あるEV開発を加速させる一方、シェアリングや自動車運転など次世代モビリティ分野での布陣も行っている。

 トヨタは2019年に中国配車サービス大手の「滴滴出行」(DiDi)に6億米ベルを出資し、ドライバー向けに車両貸し出しなどのサービスを展開。一方、2020年には自動運転技術開発のスタートアップ企業、小馬智行(ポニー・AI)に約4億米ドルを出資し、人工知能や走行データの活用などで連携し、自動運転技術の開発を強化する狙いだ。トヨタは現在、北京市と上海市で計10枚の自動運転テスト免許を獲得し、中国の交通状況に適した自動運転ソリューションを模索している。

 近年、中国政府はNEV補助金を毎年削減していくとともに、補助金支給の技術条件を厳格化した。EVは手厚い補助金がなければガソリン車に対する競争優位を確立しにくい状況にあった。一方、トヨタは、燃費目標やメーカーの省エネ化を促す中国政府によるNEV生産義務の規制をクリアできず、NEVシフトを急ピッチで進めなければならない。

 トヨタは2020年に天津でNEV専用工場の建設に着工した。広州工場の生産能力に加えて、天津工場が完成する2022年には、中国におけるNEV生産能力は72万台に達する見込みだ。今後、中国でトヨタのBEV販売を増やすには、パワートレーンの差別化だけではなく、デザインや車載機能など制御以外の部分でも独自の要因をアピールする必要がある。とくに専用プラットフォームで生産されたEV及び自動運転車両は、ガソリン車と異なるコンセプトとして消費者にアピールしやすいだろう。

▲BYD(バイド)本社にあるBEVの充電タワー 400台の充電が可能 自社製モノレールを完備するなど鉄道分野にも進出

世界最大の自動車マーケットに成長した中国で、世界中の自動車メーカーは覇権を競っている。NEVシフトが進む中、トヨタはBYDやCATLと意欲的な協力関係を築いている。

著者紹介:湯進(タンジン) みずほ銀行法人推進部主任研究員、上海工程技術大学客員教授。2008年にみずほ銀行入行。自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、日系自動車関連の中国ビジネス支援を実施しながら、中国自動車業界の情報を継続的に新聞・経済誌などで発信。著書『中国のCASE革命、2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など多数(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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