連載第17回 正直シビれるジャガー初のEV、Iペイスはサーキットで化ける!

TOPweb.jpg小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』

●高速ではメルセデスのSクラスよりいいかも?

 スイマセン。正直、あなどっていました。これほどの実力とは思いませんでした。そう、ジャガー初のピュアEV、Iペイスです。

 春先、日本に上陸してすぐに横浜で1時間ほど乗っていまして、ほかにない上質感、加速感は知っていましたが、まさかここまでとは...

ダッシュ斜めweb.jpg▲コクピットは専用デザインだが違和感なく自然な使い勝手

 まず、驚いたのは長距離性能。今回はロングツーリング試乗会で九州の熊本空港から博多まで走ったのですが、余裕もいいとこ。

 なぜならIペイスは、テスラのモデルS大容量版と同等、90kWhのリチウムイオン電池を搭載しています。ピュアEVとして現状では最大レベルで、厳しいWLTCモード燃費で438kmも走れるだけでなく、今回スタートした熊本空港でチェックすると充電レベル96%で残走行距離387km。

 これはリアル表示なので信用できます。簡単にいうと東京中心部から直線で京都まで! 現実のクネクネ高速道でも名古屋の先ぐらいまでいけるのです。今回の熊本~博多間、約150kmなんて楽勝もいいところ。到着してもまだ100km以上走行可能でした。

フロントweb.jpg▲クーペライクのロー&ワイドスタイルでありながら広い室内を備えたパッケージングが特徴
 
 それから走りの質にあらためてビックリ。
 
 Iペイスは前後ツインモーター方式。システム出力400ps&システムトルク696Nm。
 
 これだけでも大したものなのに、車重2.2トン超のボディを0-100km加速4.8秒のスペックで走らせます。公道ではもてあましぎみのパフォーマンス、さらに乗り心地がハンパなくいい。

リアweb.jpg▲傾斜を強めたリアウィンドウとワイドに張り出した大径タイヤがスポーティな印象
 
 Iペイスは全長約4.7mのミディアムSUVですが、プラットフォームからEV用に完全新設計。このプラットフォームが素晴らしく、静粛性、乗り心地ともにピカイチ。加速はギクシャクが一切無く、大人びて速い。

 オマケにパッケージ効率もすばらしく、エンジンを積まないピュアEVと割り切っているからノーズを低く短く設定。そのぶん車内を広くできます。

 事実、Iペイスは全長4.7m弱ボディながら、身長176cmの小沢が前後に足を組んで座れ、同時にラゲッジ容量600リッター超え。これは同等サイズのガソリン版SUVより確実に広い。

前席web.jpg▲前席の座り心地のよさはジャガーのブランドアイデンティティを感じる部分

後席web.jpg▲後席は前席との間隔が広く設定され快適に座れる

後席足元web.jpg▲身長176㎝の乗員が前後に着座した場合 足元は写真のようにこぶし2個半強と広い
 
 唯一、賛否両論なのはデザイン。正直、古典的なジャガーの黄金プロポーションたるロングノーズ&ショートデッキのスポーティスタイルは取れません。

 見ようによってはウーパールーパーみたいなペッチャ顔スタイルですが、小沢の目にはだんだんカッコ良く映ってきました。走りが良くって、室内広いんでね。

真横web.jpg▲前後オーバーハングを切り詰めたうえ極めて低いボンネットフードが印象的

●超ビックリ! サーキットではテレビゲーム感覚で自由自在にふりまわせる

 さらなる白眉は、サーキットでの度胆を抜かれる走りです。

 今回は全長2.3キロ強のHSR九州というコースを走ったのですが、マジメな話、自分の目と身体を疑いました。
 
 動きが全高1.5m超のSUVのソレじゃない。

SB162web.jpg▲サーキット走行ではEV専用開発アルミ製プラットフォームのメリットが絶大 重心が低くてロールが素早く収まる

 加速は前述通り、透きとおって無振動で速い。それ以上にコーナリング中のロール(傾き)にほとんどオツリがない。
 
 大抵のSUVはグラリ倒れて、後に影響が出てきますが、重い電池を床に積むIペイスは、ちょっと倒れてもすぐに収縮します。
 
 地面に、はいつくばった昆虫のように走れる。
 これがちょっと乗ってみないとわからない異次元感覚なんです。
 
 身長2mの人間なのに1mちょいぐらいの人の動きをするというか? 低重心のEVパッケージを完璧に活かしきっています。
 
 さらに前後4輪駆動の妙です。タイヤ左右を別々につまんで駆動力配分をするベクタリング機能が付いていて、あらゆる状態から曲がれます。
 
 ハードコーナリング中、アンダーステアが出そうなときでも、ステアリングを切ってアクセルを踏めば、ノーズが磁石に吸い寄せられるように目標の方を向いていくし、ブレーキング中もそう。

 ハードブレーキングでフロントタイヤが滑りそうなときでも、ステアリングを切ればそちらにノーズが向き、リアタイヤが軽く滑りだすのであります。

WEBSB051.jpg▲低重心と4WDにベクタリング機構を備えてコーナリングは面白いように曲がる
 
 マジでちょっと味わったことのない操縦感。タイヤの限界領域でもステアリングを切ってアクセルかブレーキを踏みさえすれば、その方向に曲がる。
 
 これほど操りやすいクルマに乗ったことがない! そう思えるレベルです。
 
 どれもこれもIペイスが見た目以上に低重心で、4WDの前後トルク制御やベクタリング制御を自由に使っているから。まさに限界領域で好きに、ラジコンのように曲がれるのです。
 
 この感覚は実際にミニサーキットで乗ってみないとわからないかもしれません。
 
 果たしてIペイス、車両価格959万円と、絶対的には安くはありませんが、ピュアEVとしては最大レベルの大容量、室内の広さに走りの良さを考えると決してそうでもないかもしれません。
 
 ヘタなSUV以上に広く、ヘタなスポーツカー以上に楽しく走れるのですから。1台で3台分ぐらい楽しめるクルマなのです。

ラゲッジweb.jpg▲リアラゲッジは600リッターの大容量

前ラゲッジweb.jpg▲フロントにも小型バッグが収まるラゲッジを用意

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