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連載第26回 コイツはトンビに油揚か!?  トヨタが作ってないのになぜかトヨタ コペンGRスポーツ

Writer:小沢コージ Photo:小沢コージ

室内走り.jpg小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』

●ニッポンならではのオキテ破りのクルマコラボ

 まさに文化ごちゃ混ぜの地ニッポン! 
 忘れたころにとんでもないコラボレーションが生まれてしまいました。
 
 トヨタとダイハツの両「コペンGRスポーツ」! 
 
 コペンはご存じダイハツが生んだ世界でも珍しいミニミニ軽2シーターオープン。660cc直3ターボ搭載はもちろん、メルセデス・ベンツSLもビックリの電動ハードトップオープンまで備えています。

フロント置き.jpg▲ベースのダイハツ・コペンは2014年デビュー 写真のローブのほか2種のエクステリアを用意 2016年にマイナーチェンジを実施
 
 しかしこの秋、初登場から5年ぶりに走りを研ぎすませたコペンGRスポーツが登場! それもダイハツとトヨタの両ブランドからリリースされたのです。
 
 現在ダイハツ・ブーンをトヨタ・パッソとして発売中、ダイハツ・ロッキーをトヨタ・ライズとしてリリースするなど、トヨタと完全子会社ダイハツの関係は火を見るより明らかですが、まさか車名を変えずにトヨタ・コペンGRとして売るとは! しかもコペンにトヨタのスポーツブランド「GR」の名前まで組み合わせるとは!!

コペンGR.jpg▲今回登場したGRスポーツはコペン第4のモデルとしてデビュー GRのモデルとしてファンクショナルマトリックスグリルを採用
 
 まさに文化混合の血ニッポン。混血児をハーフと呼んだり、野球のナイトゲームを勝手にナイターと呼んだり、なし崩しの型式破りが得意な国ですが、つくづく面白いことをやってくれます。
 
 もちろん欧州でもVWとアウディがプラットフォームを共有している例や、VWグループ内のスペインのセアトやチェコのシュコダで似たようなクルマを売ることはありますが、デザインはしっかり分けますし、テイストも分けます。
 
 しかしコペンは基本、トヨタもダイハツも作りは一緒。日本人には欧米人にはないごちゃ混ぜ文化があることを思い知ります。
 
 だってBMW330AMG!? とかフォルクスワーゲンSゴルフ!? なんて聞いたことないじゃないですか?
 
 たしかにコペンはトヨタにはない200万円前後の本格スポーツで、とくにGRブランドからは美味しいネタ。

リア走り.jpg▲コペンGRスポーツを試乗 GRによる最新ノウハウが注入された走りに注目が集まる 
 
 そもそもトヨタは2015年にコンセプトカーとして発表したコンパクトスポーツ、S-FRの開発を途中で断念した経緯があり、このクラスのライトウェイトスポーツがほしかった。
 
 ダイハツはダイハツで5年前にコペンを発売したはいいが、月販300台と一部の趣味グルマ。
 
 それほどお金もかけられないわけで、両者の利害が一致したのはあります。
 
 しかし、ダイハツにとってコペンは自分達だけのものにしておきたい部分もあったはず。まさに大人の選択なのです。

●クルマ的にはいいとこ取りで、乗り心地良くてステアリングはヴィヴィット!!

 前置きはさておき、小沢は今回、愛知県のスパ西浦モーターパークでコペンGRにチョイ乗りしてみましたが、肝心の実車は上出来のひと言! 
 
 見た目は賛否両論で、どうみてもGRテイスト。インパクトのある超スクエアグリルに、リアにも同じくスクエアにブラックアウトしたバンパーを装着。前後ライトも一部ブラックで塗り直されてマッチングは上々。
 
 もはやダイハツ車というよりトヨタ車テイストになっています。

室内走り2.jpg▲GRスポーツはモモ製本革巻きステアリングを標準装備 シートはレカロ メーターなども専用グラフィックを採用
 
 インテリアは外観ほどじゃないですが、専用レカロシートとピアノブラックパーツを各部に配置。注意深く見ると、メーターグラフィックやステアリングホイールも専用デザインで、しっかりGRしています。

ドアノブ室内.jpg▲ピアノブラックパーツでインテリアの質感も引き上げられている
 
 とはいえ、肝心なのはやっぱり走り。新型コペンGRにはトヨタGRの開発ノウハウが豊富に投入されており、たとえばセッティング。
 
 GRの実験ドライバーは、ときに足回りからダンパーを抜き、スプリングだけを付けたフラフラ状態で走ってスペックを決めると言いますが、コペンGRもその手法を採用。結果、スプリングは現行スポーツグレードの「S」はもちろん、ノーマルグレードより柔らかくなったそうで、代わりに専用開発のカヤバ製ダンパーで動きをしっかりコントロールしているとか。

タイヤ.jpg▲GRのチューニング技術を惜しみなく投入 しなやかな足回りを高剛性化したボディがしっかりと支える
 
 そのほかGRスポーツの開発キーワード「ちゃんと動く足」「動かない目線」をモットーに、専用ブレースバーでボディを補強。
 
 ノーマルモデルにも追加したフロア下のフロントブレースとセンターブレース、さらにGRスポーツ専用のリアブレースが効いていて、剛性感が段違い。 

 実際、コペンGRスポーツは乗るなりビックリ、乗り心地が超いい。現行「S」グレードはもちろんをノーマルより明らかに柔らかく、それでいてボディの抑えは効いていて、ステアリングはヴィヴィッド。

 ひと皮向けたように豊富なインフォメーションが入り、同時にカーブの奥までステアリングがしっかり効いてアンダーステアが出ない。
 
 単なるチューニングモデルというより、走りを根本から作り直したようなクルマに仕上がっています。

ダッシュ斜め.jpg▲ベースとなるコペン・ローブの内装 ベージュのインテリアパックは無償op ほかにレッドとブラックが選択可能
 
 エンジンそのものはノーマルと全く同じ660ccターボで64ps&92Nmのピークパワー&トルクも不変。CVTや5MTのフィーリングも基本同じですが、ひと回り上質な軽オープンスポーツになっているのです。
 
 もちろん生粋のダイハツファンはダイハツ・コペンGRスポーツを買うのでしょう。しかし、手っ取り早く面白そうな軽オープンがほしいと思った適当なクルマ好きオッサンは、近場のトヨタディーラーにあるGRガレージでトヨタ・コペンGRスポーツを買っちゃうのかもしれません。

 ああこれぞニッポンの風景!

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