連載第31回 大ヒット年間20万台突破! 2019年に乗って一番ビックリしたテスラ・モデル3

後席頭上.jpg小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』 

●いまやこのクルマが世界で一番売れるEVなのだ

 正直にいいますと、2019年に試乗して一番刺激を受けたクルマはコイツかもしれません。

 唯我独尊、プレミアムEVメーカーとして世界を突っ走るテスラの新型モデル3。

 同社はお騒がせCEOのイーロン・マスクが「2020年には完全自動運転車を走らせる」と言ったり、「タイの洞窟に閉じ込められた少年たちを救出した英国人ダイヴァーを小児性愛者」と呼ぶなどトンデモ発言で有名ですが、本業たる自動車づくりでは大逆転モードに入りつつあります。
 
 その主役こそが初の全長4.6m台EVセダン、モデル3。

フロント.jpg▲テスラ・モデル3の日本導入グレードは511万円のスタンダードレンジプラスから写真のパフォーマンスまで3種類 パフォーマンスの価格は717万3000円
 
 それまでテスラは事実上1000万円超えのプレミアムラージEV、モデルSやモデルXが人気でしたが、両車は合わせて年販10万台が関の山。
 
 価格は張りますが利益はさほどではなく、全体として儲かっているとは言い難い状況でした。
 
 しかし16年に初の500万円クラス、モデル3を北米で発売。当初は生産遅れが発覚し、テスラの危機すら叫ばれました。
 
 ところが18年中頃から計画通りの週5000台を実現。同年はモデル3単独でグローバル14万5846台を販売。モデルSとモデルXも合わせて9万9394台を販売し、年間24万5240台の高みに達したのです。
 
 これは25万台レベルのポルシェに次ぐ、プレミアムブランド9位のポジション。台数では相当な実績。
 
 さらに生産が安定した19年はなんとグローバル年販36万7515台を記録。これはポルシェを抜き、ヘタするとキャデラックブランドに迫る勢い。
 
 しかもテスラはバッテリーEV専業ですから、他とは事情が全く異なり、真の意味でEVシフトを体現しているのです。

フロント正面.jpg▲グリルのないユニークなデザイン EVならではのオリジナリティをアピール
 
 なかでもモデル3の内訳はハッキリしませんが、年間20万台以上は確実。比べると日本の日産リーフは年間7?8万台がやっとですから比べものになりません。
 
 いまや世界のEV界をリードしているのは完全にテスラ。その中心がこのモデル3なのです。日本ではあまり話題になっていませんが。

●存在感が既存のガソリン車とは全く違う!

 モデル3が日本に本格導入されたのは2019年後半。年末にやっと試乗できましたが、乗るなり人気の秘密がヒシヒシと伝わってきます。
 
 モデル3は単なるEVではなく、完全に既存ガソリン車とは異なる存在。乗るなり新鮮さであり、面白さの塊なのです。

充電口.jpg▲充電口はリアコンビランプのリフレクター部分に装備
 
 まずは見た目で、一見マセラティのEV版のようにオーソドックスですが、プレスラインがいい意味で甘く、オモチャっぽい。
 
 それに加えてなによりインテリアです。

ダッシュ斜め.jpg▲スイッチ類を可能な限り少なくしたダッシュボード 操作はセンターの15㌅モニターに集約
 
 とにかくAppleコンピュータのように、そっけない。目の前には15インチのパソコンサイズのディスプレイが広がる以外はステアリングと左右のウィンカー&シフトレバーが備わっているだけ。
 
 これぞ「走るiPhone」であり、これだけで既存クルマユーザーは衝撃をウケます。

 振る舞いも、いろいろ省略の嵐で、カードタイプキーのタッチ操作でドアを空けた後は、イグニッションスイッチすら不要。
 
 発進はブレーキを踏みながらシフトレバーをDに入れたらアクセルを踏むだけで、エアコン、ナビ、オーディオ操作もほぼすべて15インチのタッチスクリーンで行います。

画面.jpg▲15㌅モニターは空調やナビ オートパイロットなどのさまざまなインフォメーションを表示可能
 
 まさしく走るスマートフォン。
 
 戸惑う部分も多いですが、既存のクルマとは違う宇宙船的な存在を操っている気持ちになれます。
 
 一方、ラゲッジルームはエンジンのないEVらしくリアに425リッターの広大な容量を備えるだけでなく、フロントにも備えています。

ラゲッジ.jpg▲リアラゲッジは広く大きい

フロント荷室.jpg▲フロントにも小物入れを用意
 
 これと比べると日産リーフは一部「ワンペダル運転」などの振る舞いは新鮮ですが、ざっくり既存ガソリン車の置き換えで、エンジンがモーターに代わった程度。
 
 結局のところ、これら新鮮な感覚が、自動車に飽きた「新しいもの好き」を惹きつけているとわかります。

前席.jpg▲パフォーマンスグレードは本革シートが標準装備
 
 走行性能もハンパなく、今回小沢は日本で717万円する最速グレード「デュアルモーターAWDパフォーマンス」に乗ったのですが、最高出力は490psで最大トルクは660Nm。そして前後デュアルモーターにより0~100km/h加速は3.4秒! 最高速261km!!
 
 加速力は最新ポルシェ911に匹敵し、なにより体感できる速さ感が既存のガソリン車やEVとは違います。
 
 首が痛くなるような異様な発進加速を備えているのです。

 半自動運転性能もユニークで、日産プロパイロット2.0のようなハンズオフ運転こそできないものの、運転中にシフトレバーを引くだけ。この簡単さもスマホライクで、世界観が全然違うのです。

後席縦.jpg▲リアシートも十分な広さが確保されている

後席足元.jpg▲後席足元はこぶし2個分ほどのスペースがあり十分な広さが確保されている
 
 強引に例えるならば、日本で育った青年がアメリカ留学を経験して、言葉、食事、住環境が、突如変わったような新しさ。
 
 単純に電気で走るという以上に、すべての自動車体験が違うからモデル3に魅せられるのです。
 
 実際、アメリカに行くとモデル3の多さに驚かされますし、聞けば日本でもスタート価格が511万円と値付けなので、聞けば「メルセデスのCクラスやBMW3シリーズのユーザーからの移行が多い」と。
 
 いろいろな意味で価値破壊のモデル3。
 
 今年はこのSUV版の「モデルY」も登場予定です。この勢いは止まるどころか、ますます加速するのかもしれません。

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