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連載第38回 「北風と太陽」を連想させる、 新型ホンダ・フィットはどこが凄いのか?

Writer:小沢コージ Photo:小沢コージ

TOP.jpg小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』

●かつては全科目の偏差値が高い優等生コンパクトだった

 待望の新型フィット公道試乗会に行って参りました。
 2019年夏過ぎの北海道プロトタイプ取材以来なので、ざっくり半年ぶりのテストドライブ!

 新型フィット、デザインはもちろんパワートレインから一新。
 とくに小型車専用に1.5リッターの2モーター式ハイブリッドを新開発。新たに「e:HEV」と名付けたのが特徴ですが、本当の注目点は違います。
 
 見た目からあきらかにイメチェン。なにより「あからさまに戦わない姿勢」を見せました。

フロント.jpg▲新型ホンダ・フィット・ネス・ハイブリッド(FF) 価格:222万7500円 ネスは撥水シートを装備するアクティブなグレード
 
 2001年にデビューして国内外で爆発的に売れた1stフィットは、すべてにおいてライバルを上回っていました。最大の注目点はパッケージ。全長4mを切るコンパクトボディにもかかわらず、リアシートは大人がゆったり座れるほど広い。ひとクラス下でありながら、4mを超えるカローラセダンを上回るユーティリティ。

 同時に新開発のi-DSIを採用した1.3リッターエンジンはパワーと燃費がよく、ハンドリングもキビキビしていて、楽しい。ワンモーションのスタイリングもキュートでした。
 
 見た目、走り、燃費、そして使い勝手。すべてで上位クラスを超えるコンパクトだから売れたのです。いわば国語、算数、理科、社会、すべての偏差値が高い優等生のようなクルマだったのです。

リア.jpg▲全長×全幅×全高3995×1695×1540㎜ ホイールベース2530㎜ アクセント2トーンがネスのエクステリアの特徴

 2nd、3rdフィットまで戦い方は基本同じでした。

 すべての性能でライバルを上回るべく開発され、2ndモデルまではセールス状況も良かったのですが、3rdモデルに強力なライバルが生まれました。しかも2車種。ハイブリッドの燃費で先を行くトヨタ・アクアと、実燃費では負けないものの、新たな電動風味で新風を吹き込んだ日産ノートe-POWERです。
 
 そして台数でアクアに負けた後、ノートにもフィットは負け続けました。その反省を受けて生まれたのが今回の4thモデルなのです。

●最も大きく変えたのは「戦い方」

 実際、4thモデルはすべてが変わっています。

 面白いのは開発テーマで追い求めた「4つの心地よさ」。

真横.jpg▲ワンモーションフォルムは健在だが前後左右どこから見ても穏やかで優しい雰囲気で構成
 
 1点目は「心地良いデザイン」で、エクステリアはいままでの空力&スペース重視のものから愛され系に変えています。
 
 モチーフは「柴犬」。違和感を覚えるユーザーもいるようですが、かわいいLEDリングのライトを持ち、たしかに愛くるしい子犬のようです。

ダッシュ正面.jpg▲写真のグレードはネス 新型フィットはインテリア素材や色調の異なる5タイプのグレードを設定
 
 インテリアも同様に心地よさ重視。骨格は3rdモデルのキャリーオーバーなので、居住スペースはほとんど変わっていませんが、インパネは大きく進化して、自動車というより、水平基調の家具的なもの。
 
 自動車というよりライフスタイル商品に変わっています。
 
 2点目は「心地良い使い心地」。室内スペースはほぼ変わりありませんが、フレキシブルテーブルコンソールや、新たなインフォテイメントシステム「ホンダコネクト」が、いままでにない使い心地を確保。
 
 3点目は「心地良い視界」。新たにフロントピラーを2本構成に改良。前側を細くして視界を確保し、2本目で力を受ける構造にしました。

 実際、視界の良さはハンパない! これだけでフィットが変わったことがわかります。

グレードホームダッシュ.jpg▲写真のグレードはホーム・ハイブリッド 最前列のピラーを細くして広い視界を確保した点は大きな特徴
 
 走らせてみて驚くのは、4点目の「心地よい乗り心地」。
 
 フロントシートのクッションを30㎜、リアシートのクッションを20㎜以上厚くしただけでなく、足回りの味付けはフランス車的。
 
 1stモデルの「芯が残ったお米」のような固さとは大違いで、一部マシュマロのような味わいや、真綿で包んだような乗り心地がたまりません。心が癒されます。

後席.jpg▲前後とも厚みが増した座り心地のいいシートを装備 後席は座面チップアップが可能
 
 そう、新型フィットが面白い点は、スペック競争に挑んでないこと。

 カタログには「ラゲッジ○○リッター」とか「長さ〇センチアップ」みたいな表記が全然なく、燃費も最良の新型1.5リッター・2モーターハイブリッドで、WLTCモード29.4、JC08モード38.6km/Lと、3rdモデルを大幅に上回っていますが、アクアを越えた! とかノートe-POWERを越えた! とは言いません。実際には超えています。

●暖かい太陽のように癒されるコンパクトカー

 最後に小沢が決定的に違うな、と思ったのは加速の味付け。

 実はホンダe:HEVは日産e-POWER同様に2つのモーターを発電用と加速用に振り分けた2モーターハイブリッドです。

ハイブリッド.jpg▲写真のハイブリッドとガソリンエンジンをラインアップ ハイブリッドはモーター主体の走行が可能
 
 細かくいうとe:HEVは高速巡航時にエンジン直結モードを持つので、機能ではe-POWERを越えています。
 
 しかし、e:HEVはe-POWER的な「電動風味の強調」をしません。
 
 e-POWERは踏んだとたんに走り出す、異様なレスポンスの良さが持ち味。実際、その気持ち良さで買うユーザーも多い。
 
 ところがe:HEVは加速自体は超滑らかですが、発進感はエンジン車と遜色なし。電動車ならではのビックリ感で勝負しないのです。
 
 新型フィットは、確かにライバルに数値的な戦いを挑まなくなりました。
 
 それ以上に味付けであり、コンセプトで勝負するクルマ。
 
 具体的には瞬間的なビックリではなく、長く使った時の疲れのなさであったり、視界の良さであったり、乗り心地であったり、使い勝手のよさであったり。

後席足元.jpg▲後席足元スペースは広く大人4名乗車が楽にできる
 
 小沢は思わず「北風と太陽」のイソップ物語を思いだしました。
 
 1stから3rdモデルが北風のようなクルマだとしたら、今回の4thモデルは太陽のような優しいファミリーコンパクト。
 
 旧モデルとサイズ的には似ていますが、コンセプトや方向性は全く違います。

 新型フィットが気になる人は、ぜひともそこに注目して頂きたいものです。

ラゲッジ.jpg▲ラゲッジゲートは大きく開くよう改善して使い勝手を向上 後席をダイブダウンすればフラットで広大な荷室に変身

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