ジャガーのチーム・トランスポーター

ホットウィールが販売しているチーム・トランスポート・シリーズにジャガーのトランスポーターがある。往年の名車Eクラスを積載したトラックに、大きくジャガーのマークが描かれている。ところが、このモデル、よく見ると不思議な感覚になる。トラックとEクラスの縮尺があまりにも異なっているからだ。こうした「矛盾」を筆者は「許してあげてよいのではないか」と考えている。その理由と、チーム・トランスポート・シリーズの魅力を連載コラムで紹介。

ミニカーを楽しむ「矛盾」と「想像力」

森永卓郎さん160.jpg■プロフィール もりながたくろう●1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する"博物館(B宝館)"を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日)

2020年5月号森永卓郎さんHP用.jpg▲ホットウィールの「チーム・トランスポート・ジャガーEタイプ・ライトウエイト・キャリーオン」 縮尺は64分の1 このシリーズからは日産フェアレディZやスカイラインGTーRなどのセットも販売されている

 ホットウィールが最近、次々にリリースしているのが、チーム・トランスポートのシリーズだ。レーシングカーとそれを運ぶトランスポーターのセット商品なのだが、その中でボクが一番気に入っているのが、ジャガーEタイプのセットだ。

 Eタイプも、トランスポーターも、ジャガーのイメージカラーであるダークグリーンに塗られ、ジャガーのロゴマークもしっかりとプリントされている。いかにもジャガーという雰囲気に溢れているところが、大好きな理由だ。

 ボクは自動車レースに詳しくないので、このクルマが本当に実車として活躍したのかどうかは、わからない。だが、正直にいうと、そんなことはどうでもよい。これは、誰が何といおうと、ジャガーそのものだからだ。ところで、写真をじっと見つめていると、何か違和感を覚えないだろうか。そう。トランスポーターとEタイプの縮尺がまったく合っていないのだ。

 全長で見ると、Eタイプは、トランスポーターの4分の3を占めている。Eタイプの実車の全長は、444cmだから、もし縮尺が合っていると仮定すると、トランスポーターの全長は592cmという計算になる。さすがに、そんなに短い大型トラックはないだろう。

 ボクはそうした「矛盾」は許してあげてよいのではないかと考えている。ミニカーは、本来、子供が遊ぶおもちゃで、大人が勝手にそれをコレクションの対象にしているだけだからだ。

 たとえば、トミカは規格化された箱に収めるために、どのクルマでも全長をほぼ統一している。そのため、軽自動車と消防車を比較すると、縮尺は2倍以上違っている。

 それでも子供たちは、軽自動車と消防車を一緒に並べて、遊んでいる。縮尺の違いは、想像力で埋めているのだ。

 もちろん、ミニカーの世界には43分の1の標準スケールなど、統一スケールを追求しているシリーズがあるし、むしろそれが主流だ。

 小スケールのミニカーには、縮尺を無視するという特権が与えられている。そこに求められるのは、正確なバランスよりも、いかにそれっぽい雰囲気を醸し出すかということなのだ。

 その意味では、このジャガーEタイプのセットは、最大の成功を収めていると思う。ただ、それを感じるためには、他のトランスポートシリーズも並べないといけない。上手い商売を考えたものだ。

SNSでフォローする