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連載52回 アコードファンならラッキー! 月販300台のセダンが日本であいかわらず売られる理由

Writer:小沢コージ Photo:小沢コージ

TOP.jpg小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』

●いまなぜニッポンで10代目アコードなのか?

「アコードはホンダブランドを象徴するセダンとして位置付けられています。その一方、国内でセダンが6車種あるのは多いとも認識していて、それを整理する上でも今回アコードを残し、シビック、グレイスを生産終了していく予定です」(ホンダ関係者)。

 第一次コロナショックの記憶も新しい中、話題の新型ホンダ・アコードに乗ってきた。
 
 1976年、1stモデルがデビューして今回で10th。クルマの完成度の高さはネットでもいろいろ評判だが、根本的な疑問は、なぜいま、国内でアコード、それもセダンなのか? だ。

フロント.jpg▲新型ホンダ・アコードEX 価格:465万円 電動サンルーフやホンダ・インターナビ+ETCなどフル装備の単一グレードを設定
 
 調べると旧型9thは導入の2013年こそ1万台強売れたが、末期の2019年はわずか1056台。日本全国で月100台も売れていない。
 
 あのレアな軽ミッドシップスポーツ、S660でも月販200~300台はキープするというが、それ以下なのだ。
 
 実際、新型の月販目標も300台と控え目。それでも売られる理由は、ホンダ・セダンの代表選手という意味合いと、実は社内の要望もあるという。

リア低め.jpg▲全長×全幅×全高4900×1860×1450mm ワイド&ローのスタイリッシュなフォルムに進化
 
「10thアコードは2017年にデビューして、北米で年間26万台弱、中国で21万台強、売られています。とくに中国では、それまで一番人気のVWパサートを抜いてセグメントトップ。これだけいいクルマを日本のお客様にも乗って頂きたいと」

 その気持ちは、わからないでもない。
 
 いまや日本は世界屈指のガラパゴスマーケット。セダンの不人気はいかんともしがたいが、それとクルマの出来不出来はまったくの別。良いモノが出来たのだからぜひ乗って頂きたいという純エンジニア的スタンスなのだ。小沢も早速乗ってみた。

●スタイリングは確かにワイルドかつセクシー!

 最大の注目はスタイリングだ。とくに中国での評価が高く、ワイルドかつセクシーなフォルムがファンから愛されているという。全長4.9×全幅1.86×全高1.45mのボディは、とても中身がFFセダンとは思えない優雅さだ。

真横.jpg▲FFとしては異例にフロントオーバーハングが短くスポーティなイメージ

 旧型に比べ、フロントオーバーハングを縮めて、全長を45mm短くし、その一方ホイールベースを55mmも伸ばして、キャビンをより広く取っている。 

 またフロントウィンドウ位置をより後ろにしているから、よりノーズが際立つFR的フォルムになっているのだ。

ダッシュ斜め.jpg▲最新のホンダセンシングやインターナビシステムなどすべて標準装備 インパネやメーターデザインはコンサバティブな印象 インテリアカラーはアイボリーも選択可能
 
 その効果は室内でも顕著で、フロントはもちろんリアシートはやたらに広い。頭上は全高を15mm下げた影響か、広々とは言い難いが、ヒザ前にはコブシが2個半か3個分入り、オマエはリムジンか! と呼びたくなるほど広い。

前席.jpg▲本革シート標準 適度に広く快適 座り心地のいいフロントシート

後席頭上.jpg▲パッケージングが巧みでリアシート頭上はクーペスタイルとしては広い

後席足元.jpg▲リア足元はリムジンのような広さがある
 
 ついでにトランク容量も573リッターと大型ステーションワゴン並みの広さを誇る。
 
 気になる走りだが、ホンダ自慢の2モーターハイブリッドシステム、e:HEVの実力はすごい。145psの2リッターガソリンエンジンをほぼ発電用と割り切り、高速巡航を除き、ほとんどの加速を184ps&315Nmの電動モーターで行う。 

 これが軽量化され、ハイブリッドバッテリー搭載でも1.56kgとダイエットされたボディをスムーズに引っ張るのだ。

エンジン.jpg▲パワフルでスムーズに加速する2モーターハイブリッド方式のe:HEVユニット
 
 乗った印象はとにかく静かで滑らか! の一言。個人的な印象では、タイヤが若干ゴツゴツ硬めの印象があったが、大型セダンとしてはトップクラスの快適性だろう。
 
 ステアリングシステムもデュアルピニオン式で繊細なタッチはないが、高級セダンらしい剛性感を備えている。

シフト.jpg▲シフトはレバータイプではなくスイッチによりポジションをセレクト 慣れるまで少し迷う
 
 同時に燃費も凄くて、かつてのJC08モードで30km/L、最新のWLTCモードで22.8km/Lのスペックはサイズ、広さを考えると信じられない。
 
 ライバルのトヨタ・カムリ・ハイブリッドを上回るスペックであり、ここに来てホンダ・ハイブリッドは熟成してきた感がある。
 
 今回の試乗中、メーター計測では20km/L台を記録した。

燃費.jpg▲とくに省燃費を意識せず今回試乗した前半の燃費は21.1㎞/Lだった ボディサイズを考えると大変優秀な燃費といえる
 
 とはいえ、価格はモノグレードで465万円と決して安くはない。
 
 たしかにセダンとしてみると良く走り、リアシートは広く、荷物も沢山載せられるが、日本にはほぼ同じ価格ではトヨタ・アルファード、ヴェルファイアというラージミニバンが買えてしまう。

ラゲッジスペース.jpg▲ラゲッジスペースは幅も奥行きもワゴン並みに広い リアシートバックを倒せばさらに拡大可能
 
 よほどのセダンファン、アコードファンで無い限り、いくら上質な移動空間でも選択肢に入ってこないのは事実なのだ。
 
 いわば、いくらよく出来ていても、音楽でいえばフォークソングであり、お菓子でいうと羊羹のようなもの。
 
 流行りのヒップホップであり、スイーツには敵わないのである。
 
 逆にガンコなセダンファン、アコードファンにとっては朗報以外の何物でも無い。

後席広さ.jpg▲大きくスタイリッシュになった新型アコードの広いリアシートでアコードの針路に思いを巡らす
 
 つくづく自動車ビジネスは不思議だ。
 
 こういう市場原理に合わない贅沢が、いまもときどき許されるのだから。
 
 アコードファンが実に羨ましい限りである。

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