ついに国内初試乗。ポルシェ初のピュアEV、タイカンはホントはどこがスゴいのか?

後席頭上.jpg小沢コージ●クルマや時計、時に世相まで切る自動車ジャーナリスト兼TBSラジオパーソナリティ。『ベストカー』『MONOMAX』『webCG』『日刊ゲンダイDIGITAL』「カーセンサーEDGE』で自動車連載、『時計BEGIN』で時計人物連載。毎週土曜18時50分TBSラジオ『小沢コージのカーグルメ』

●タイカンSでもほぼ1500万円

 ついにポルシェ初のピュアEV、タイカンに国内で乗ることができた。乗ったのは最もベーシックなグレード、タイカン4Sだ。

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 お値段は1448万1000万円と安くはない。

 前後ツインモーターで最高出力435ps、ローンチコントロール時で530ps、最大トルクは640Nmと十分にパワフル。前後ツインモーターの駆動方式もあって、公式0-100km/h加速は4秒と本格スポーツカーのそれだ。
 
 もちろん、さらにパワフルかつ速いタイカンターボやタイカンターボSも選べ、後者は通常時625psでローンチコントロール時761ps、最大トルクが1050Nmととんでもない。0-100km/h加速は2.8秒。まさしくスーパーカーだ。

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 だが、小沢がタイカン4Sを体感して一番感激したのは、速さ以上にすべての味わいがポルシェらしく、走らせやすかったことだ。

 実用性はとにかく高い。ボディサイズは全長4963×全幅1966×全高1379mmと日本では正直大きく、少々持てあますが、大人4名が前後にゆったり座れ、トランクスペースもフロント81L、リア407Lと広い。

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 駆動用電池は79.2kWhのパフォーマンスバッテリーと93.4kWhのパフォーマンスバッテリープラスが選べ、航続距離は333kmから407km。
 
 正直バッテリー量に対して短めだと思うが、距離的には十分。日常的に使える。その有様は少々拍子抜けするくらいだ。

●ゆっくり走っても「ポルシェ」だとわかる独自の魔法

 日常的な振る舞いがまた面白い。
 
 キーを持ってクルマに近づくと、まずドアハンドルが自動で開く。
 
 完全にプレミアムEVの先達たるテスラ・モデルSを意識していて、各所にスマホライクなサービスが取り入れられている。

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 室内に入るとセンターモニターは勝手にID登録画面になり、初めてスマホを使う時のように個人情報を入れるモードになる。
 
 登録すればおそらく、その後は自分の好みのシートポジションやドライビングモード、ラジオチャンネルなどが勝手に記憶されたり、推測されるのだろう。
 
 その後、キーを持ってブレーキを踏めば勝手にイグニッションが入り、ATシフトをDに入れてペダルを踏み込めば勝手に走り出す。

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 そこで本当に驚いたのは、ゆっくり走っても「ああポルシェだ」と思える走り味があることだ。
 
 馴染みのラーメン屋に行き、いつものスープを飲んだ時に「ああこの味!」と思う感じに近い。
 
 こればっかりはポルシェに乗った人しかわからないはずだが、加速感はもちろん、乗り心地もポルシェっぽい。
 
 いままで乗ったことのある911やボクスターの味がする。
 
 とくに驚いたのはブレーキフィールだ。さすがのタイカンでも走行中の8割ぐらいは回生ブレーキが使われているそうで、自ずと機械式ブレーキのようなダイレクトなタッチは無くなくなったりするはずだ。
 
 だが、タイカンはペダルの踏み味が不思議とポルシェっぽい。
 
 ソリッドなブレーキバッドが鉄やカーボンの硬いブレーキディスクをつまんでいるような感触があるのだ。

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 ローンチコントロール、つまり自動車レースで発進するように、左足ブレーキでクルマを止め、右足でガバッとアクセルを踏んでからブレーキを離してみたら、これが異様に速い!
 
 だが、それでもよくよく味わってみると加速カーブに独特の優しさがあり、新興EVのテスラのように首が痛くなるような唐突感は味あわせないようになっている。
 
 実はポルシェやメルセデスは歴代のどのクルマに関しても、加速感や制動感、コーナリング時に独特のGの味付けをしている。
 
 同じく300psで0-100km/hのクルマがあったとして、ポルシェと他のブランドでは加速感や制動感が確実に違うのである。
 
 しかも、それを初EVのタイカンにもしっかり反映している。
 
 だから元ポルシェオーナーやファンはタイカンの違いがよく分かるし、一度ポルシェに乗ると、また次も乗りたくなるし、不思議な安心感を覚えるのだ。
 
 同様のことをやっている国産自動車メーカーはおそらくマツダぐらいしかない。
 
 しかもタイカンがスゴいのは、他のガソリン版ポルシェよりもある種の走り味が濃いこと。
 
 ポルシェは実は「G」(加速度)の特性でブランドを作り込んでいる。タイカンはそれをあらためて気付かせてくれたのだ。

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