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森永卓郎ミニカーコラム「技術は退歩するのか」

Writer:森永卓郎 Photo:森永卓郎

1960年代と現在のマッチボックス製VWタイプ2を比較する

森永卓郎さん160.jpg■プロフィール もりながたくろう●1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する"博物館(B宝館)"を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日)

VWタイプ2.jpg▲写真左が現在のマッチボックス製VWタイプ2/写真右が1960年代の製品 「60年代の製品からは作り手の心意気が感じられる」と筆者は語る

 技術が退歩することがあるのかというのは、科学の分野では重大な論争のテーマだ。

 ボクは、少なくともミニカーの世界では確実に退歩が存在すると考えている。

 それを明確に示すモデルが手に入ったので、ご覧いただきたい。写真右は1960年代にマッチボックスが製造したフォルクスワーゲンのタイプ2の商用車だ。一方、左側は現在マッチボックスから発売されている復刻版だ。

 実は、復刻版には2種類ある。ひとつは、当時の金型を使って再生産するもの。もうひとつは、当時のモデルをモチーフに、現代の技術やデザインを使って、再生産するミニカーだ。マッチボックスは、前者のタイプの復刻版も数多く出しているが、写真のモデルは後者のタイプだ。

 2台の写真を見て、何が感じられるだろうか。現代のモデルは、なんともおもちゃっぽい。それに対して、60年代のモデルからは、実車の迫力や雰囲気を小さな模型の中に凝縮して再現しようとする作り手の心意気を感じないだろうか。

 ボクが見ていて楽しいのは、圧倒的に当時モノだ。だから、ボクは60年代のマッチボックスは、バリエーションを含めて全部集めているが、最近のマッチボックスは、気に入ったものを散発的に買っているだけで、全部を揃える気にならない。

 60年近くの時間を経て、製造技術やデザインの技術は進化しているはずなのに、なぜミニカー作りが退化したのか。安全性の基準が厳しくなったという事情もあるが、ボクは一番大きな理由は、商品の単価が下がったことだと考えている。

 1963年のマッチボックス・レギュラーシリーズの価格は、120円だった。いまは、トイザらスでマッチボックスの5個入りパックが、1299円だから、1台当たり260円だ。

 2倍以上に値上がりしているように見えるが、1963年の大卒初任給は1万9000円だった。いまの10分の1以下だったのだ。

 つまり、マッチボックスの価格は、賃金比で見ると、5分の1に下がったという計算になる。これでは、十分な手をかけられないのは当然だ

 実は現代でも、マニアを対象にした高価格のミニカーはたくさん存在していて、それらのモデルは素晴らしい品質を生み出している。

 問題は、ミニカーコレクションが、本来子供向けのおもちゃを大人が集めているという根本的問題に行き着くのだ。

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