ー 

森永卓郎のミニカーコラム「アルファロメオとベスパのドラマ」

Writer:森永卓郎 Photo:森永卓郎

ビテス社ミレニアム・コレクション・シリーズの楽しみ方

森永卓郎さん160.jpg■プロフィール もりながたくろう●1957年、東京都出身。東京大学経済学部卒業。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。個人のコレクションを展示する"博物館(B宝館)"を、埼玉県・新所沢で一般公開中(毎月第1土曜日)

2020年12月号森永卓郎さん中めん.jpg▲ミレニアム・コレクション・シリーズ(ビテス)のアルファロメオ・スパイダー ピザのデリバリースクーターと接触事故を起こしたシチュエーションを再現しているのか

 ミニ・ジオラマのことを「ヴィネット」と呼ぶ。フィギュアの世界では、ちょくちょく作られていて、ボクのように工作が得意ではない者にとっては、ありがたい存在だ。ミニカーでも、少数だがヴィネットが存在している。

 その代表が、ビテス(ポルトガル)のミレニアム・コレクション・シリーズだ。ヴィネットといっても、必要最小限のフィギュアと背景の写真がついているだけなのだが、この1980年式のアルファロメオ・スパイダーには、男女のフィギュアに加えて、ピザ配達のベスパのスクーターが付いていて、箱の中のピザまで再現されている。

 ジオラマのタイトルは、「下町ドライブのハザード(危険事故)」というものなので、もしかするとスパイダーを運転していた女性が、ピザ配達のスクーターにぶつけてしまい、ピザが放り出されたところを表現しているのかもしれない。

 背景の写真がどこなのかは、いっさい説明がないが、市電の線路があるところや走っているクルマの様子からすると、ヨーロッパのどこかの都市のような気がする。ベスパのピザ配達車が走っているのだから、イタリアかもしれない。

 ミニカーのスパイダーは、1966年のジュネーブ・モーターショーに登場したピニンファリーナ・デザインのモデルだ。FRレイアウトの2シーターで、外観上は丸みを帯びた長いテールから、日本では「ボートテール」と呼ばれた。ところが、ミニカーにつけられた解説によると、ヨーロッパでは「烏賊の骨」と呼ばれていたそうだ。

 その後のマイナーチェンジで長いテールは短縮され(カムテール)、1975年のマイナーチェンジで、シートは2+2(欧米仕様)に改良された。利便性を高めた改良だったが、デビュー当時の美しさは、まったく失われていない。そのことが、27年にわたって生産が続けられた大きな要因になっているのだろう。

 アルファロメオのスパイダーは現在、4Cに引き継がれている(2020年内に生産終了)。それはカッコイイのだが、美しさという点では、1993年まで製造されたシリーズにかなわないとボクは思っている。

 その芸術品のようなスパイダーを「スクーターにぶつけちゃったよ」という設定にしてしまうビテスの感性もまた、とても素敵だと思う。日本やドイツのミニカーメーカーからは、決して出てこない発想だと思うからだ

1

Related Article連載・コラムもっと読みたい

What's News最新情報