キャデラック物語 その3

Writer:間宮達男 Photo:GM

米国の歴代大統領専用車を開発。「世界の標準」を徹底追求

Leland1_HP01.jpg▲ヘンリー・マーチン・リーランド 1917年にリンカーン・モーターカンパニーを設立して航空機用エンジンの生産を開始 第1次世界大戦後は自動車生産を始めるが1922年にフォードに買収された リンカーン・ブランドはリーランドが興した会社がルーツ

 キャデラックの進歩性は、自動車の歴史の中で群を抜いていたというべきだろう。キャデラックの広告宣伝を担当したテッド・マクナマスの有名なせりふがある。「自動車というものは、そのオーナーの輝かしい業績を無言のうちに証明する『紹介状』でなければならない」と。

 かくてキャデラックは持ち主のステイタス・シンボルとなり、テディー・ルーズベルトからリンドン・B・ジョンソンなどに愛用されるクルマとなり「大統領の車」と呼ばれていく。

1947-Cadillac-Fleetwood-Series75-Limo1トルーマン大統領_HP03.jpg▲1947年キャデラック ・フリートウッド・シリーズ75リムジンの前に立つハリー・S・トルーマン大統領(任期1945〜53年)

1953-Cadillac-Eldorado21_HP03.jpg▲1953年型キャデラック・エルドラドで年頭演説に向かうドワイト・D・アイゼンハワー大統領(任期1953〜61年)

 ここでキャデラックを創った栄光のチャレンジャー、リーランド父子にご登場願おう。

 父親のヘンリー・マーチン・リーランドは、1843年2月16日、バーモント州バートン近郊の農家に生まれた。新教徒としてアメリカへ渡ってきた祖先の時代から、すでに2000年もたった旧家ではあったが、牧牛の取引の失敗から家計は貧しく、しかもヘンリーは8番目の子どもだったから生活は苦しかった。

 スプリングフィールドで施盤作業者として成長したヘンリーは、精密切削の技術を身につけていく。彼がブラウン・アンド・シャープ社のミシン部門の責任者になったのは、35歳のときだった。

 1890年、47歳になって、多年、夢に描いていた実業界入りを目指して、ヘンリーは資本金5万ドルを集めてリーランド・フォークナー・アンド・ノートン社を創立した。ギアの研磨と特殊工具の製作所で、社員60名を雇った。やがて、息子のウィルフレッドも工学を専攻して父の傘下に入ってくる。

 こうして、1890年代、まさに自動車時代の夜が明けようとするアメリカで、父子は自動車産業にかかわっていく。

 ヘンリーは、ヘンリー・フォードが設立したヘンリー・フォード・カンパニー(現在のフォードとは別会社)の精算を引き受ける中で、投資家に会社の存続を提案。社名をデトロイト市の創設者アントワーヌ・ド・ラ・モテ・キャデラックにあやかりキャデラック・モーター・カーへと変え、ヘンリー・マーチン・リーランドが社長の位置につく。

 最初のキャデラック、モデルAは1902年10月17日に完成し、翌年の1月、ニューヨークの自動車ショーで発表された。この最初のシングル・シリンダー車は、当時のヨーロッパ標準を手本にしただけにプリミティブなクルマではあったが、簡素で軽量、床高な車体が特徴で、当時のアメリカの悪路にぴったりだった。

1903-Cadillac-ModelA-Runabout_HP01.jpg▲1903年 キャデラック・モデルAランナバウト

 ヘンリーはモットーとして「職人気質は信条であり、正確さは法である」と自分にいい聞かせていたという。そして、もっとも好んで使ったことばは、後年、キャデラックの広告コピーにも使われた「世界の標準」という表現だった。

 晩年のヘンリー・マーチン・リーランドは、すでに現役を離れて自動車社会から退いていたが、80歳をすぎてもまだ元気で得意の鉛筆画で「未来の車」のスケッチを描いていたという。それは4輪独立懸架、リア・エンジンという現代的なクルマのデザインだったとか。1932年3月26日、89歳で静かに生涯を閉じた。

 息子のウィルフレッドは、鉱山技師に転身していった。

 アメリカで「二人のヘンリー」と呼ばれたもう一人のヘンリー・フォードは書き残している。「リーランドは完璧さを追求した鉄の意志を持った男だった」と。

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