佐原輝夫さんの代表作

イラストレータ、佐原輝夫さんの作品。大好きな1960年代のF1マシンと、大人気テレビドラマ「ルート66」を描いています。

さはらてるお 1952年、松本市生まれ。イラストレーター穂積和夫氏の薫陶を受け、デザイン会社勤務を経て、1974年からフリーランスに。クルマ、バイク、アウトドア、カルチャーなど幅広い分野のイラストとエッセイを手がける。とくにモータースポーツや人物の描写には定評がある。2001年トヨタ博物館企画展"佐原輝夫の世界"、2017年"星野一義STRADA"作品展開催(六本木アクシス)。昭和女子大学環境デザイン学科非常勤講師。AAF(オートモビル・アート連盟)会員。今回は青春時代に熱中したF1マシンと、アメリカ、ルート66に関する作品について語ってもらった

1960年代のF1と大ヒットTVドラマ「ルート66」

作品は佐原さんのお気に入りのテーマ、1960〜70年代ですね

■ホンダが1960年代、フォーミュラ1に挑戦しはじめたのをきっかけに、ボクはモータースポーツに関心を持ちました。暗記するほど読んだ雑誌のレース記事や、グラビアを飾ったマシンとレーシングドライバーにいまでも強い憧れを持っています。

エイモン縮小.jpg

 上掲のイラストは、歴史に残る勇者たちを取り上げた作品のひとつです。ニュージーランド出身のクリス・エイモン選手は1966年、22歳のときにル・マン24時間レースで優勝しました。翌年、F1に移りますが、彼が乗った67〜69年のフェラーリは不調で、結局1勝もできませんでした。でも、彼は〝与えられた条件のもと、黙々と仕事をこなす職人〟といったイメージで、ボクの大好きなドライバーです。レーシングカーは走っている姿がいちばん美しくてカッコいい。そのスピード感、そしてステアリングと格闘するドライバーの目、といった臨場感をつねに表現するように心がけています。作品展などで「サウンドが聞こえてきそうだ」といわれると、うれしいですネ。

*次の作品は

■アメリカのテレビドラマのひとつで、1960年代に日本でも大ヒットした『ルート66』へのオマージュとして描きました。ドラマの中で、主役のスターがコルベットのドアを飛び越えてドライビングシートに乗り込むシーンに心奪われました。一般的にコルベットのボディカラーのイメージは赤ですが、その後、調べたところ、当時は、白黒テレビで映りがいいシャンパンゴールドのクルマで撮影されていました。

 この作品をInstagram(インスタグラム)に発表したのがきっかけで、アメリカからプリントのオーダーが舞い込みました。なんと、主演俳優ジョージ・マハリスさん(作品右)へのクリスマスギフト用とか。驚きました。もう大感激でした。

ルート66縮小.jpg

その後『ルート66』を実際にドライブされた!?

■はい、2018年秋、2週間の旅でした。子供のころに見たドラマの追体験と、数年前にアメリカの友人と交わした「いつかルート66を走る」という約束が、やっと実現できました。シカゴからロサンゼルスのサンタモニカの海岸まで、8州にまたがる3800km。ナット・キング・コールの名曲『ルート66』の歌詞「more than two thousand miles all the way」を実体験しました。ミシシッピ川の渡し船など、ドラマのスチールと同じポーズで、子供のように何枚も写真を撮りました。

 アメリカにはかつての西海岸ブームのころから数えきれないほど行きましたが、〝移動〟そのものが目的という旅は初めてでした。アメリカの国土の雄大さに圧倒されました。この旅を作品に描き、今後、画集などにまとめたいと思います。

心に残る展覧会は

■上野の東京藝術大学大学美術館で開かれた〝尊厳の芸術〟展(2012年)はいまも心に刻まれています。第2次大戦中にアメリカの収容所に隔離された日系移民が不自由な生活の中で制作した、木や布、貝殻などを素材にした工芸やアート作品を鑑賞して、ボクは「何かを作る、つまり目的意識を持って生きる希望をつないだ」というまさに命がけの作品群に言葉を失いました。

後輩たちに伝えたいメッセージは?

■自分自身への評価や作風、関係者の「いいね!」の会話に甘んずることなく、新しい仕事やむずかしい課題にチャレンジしましょう。「きょうの自分がこれまでで最高だ」という自信が持てるように、いつも勉強する姿勢が大切です。

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