ボックスアートの奥深い世界〜和田隆良

和田隆良さんの「好きな作品」を紹介。ボックスアート(プラモデルのパッケージ用イラスト)を描く際には、この世界独特のテクニックが必要になるそうです。

迫力と臨場感を高めるテクニック

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▲作品①『DATSUN Fairlady 240Z Monte Carlo Rally 1972』 画材:鉛筆、イラストレーター、フォトショップ/サイズ:A3変形/制作年:2018年10月 協力:株式会社ハセガワ

*ご紹介の作品は

■上の2作品は、模型メーカー、ハセガワの模型キットのボックスアート用に描きました。アイテムはメーカーから指定があり、構図に関してはデザイナーから指示があったりと......。また、ボクから提案することもあります。

 ボックスアートは、箱のサイズが横長の場合が多いため、どうしてもケースにマッチしたクルマのアングルが求められます(作品①②は左右をトリミングした)。「完成した模型の形がきちんとわかるように」という配慮から、躍動感やその空気感をどのように表現したらいいか、つねに工夫しています。

 子供のころ、近所の模型ショップで目にした高荷義之さん(1935年〜)のボックスアートに感動し、いつも参考にしています。高荷さんの絵は、「記録より記憶」に残る作品でした。

*作品の構成ポイントは

■①のフェアレディ240Zは、レースの迫力を表現したかったので、ミーティングの結果、あえて左右の比率を無視したような構図にしました。②のBMW2002tiは、臨場感を出すために走り去った後の雪煙とその奥にギャラリーを描き加えました。

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▲作品②『BMW 2002ti Swedish Rally 1971』 画材:鉛筆、イラストレーター、フォトショップ/サイズ:A3変形/制作年:2018年11月 協力:株式会社ハセガワ

*レースのイラストを中心に発表していた、気分は巨匠ピーター・ヘルク(1893〜1988年)ですね。で、先日の第8回AAF作品展に出展した昔のトラクターの作品は、ボックスアートとはタッチが異なるいい味が出ていて......。

■はい、ありがとうございます。ほめていただいてうれしいですね。ボクは、つねに見る側、つまり鑑賞者の想像力をかきたてることを意識しています。  1930年代前後のオールドトラクターは、数年前からコツコツ描きためているライフワーク。ビンテージの味わいがあり、いい雰囲気です。日本の農耕車と違い、米国やヨーロッパにはオールドトラクターのコレクターがたくさんいます。それらはたいてい丁寧に整備され、動態保存されていて、きれいで鑑賞に耐えます。作品が増えたら、作品集やカレンダーを企画してみたいですね。

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▲作品③『JOHN DEERE』 画材:水彩絵の具、ホワイトワトソン紙/サイズ:A4/制作年:2017年

*映画『イージー・ライダー』から古典落語まで。多趣味だとお聞きしていますが──。

■『イージー・ライダー』(1970年日本公開)は、カスタム・ハーレーがいかにもアメリカ的でカッコよくて、中学生のころ映画の背景と内容がよくわからないまま映画館で見ていました。ハーレーは授業中、ノートの余白に描いていましたね。ボクのイラストレーターとしてのルーツです。

 古典落語は、古今亭志ん生(5代目)、その次男の古今亭志ん朝(3代目)、三遊亭圓生(6代目)が好きです。

*貴重なお話、ありがとうございました。

●わだたかよし デザインプロダクションにデザイナーとして勤務後、1991年、バイク雑誌の表紙イラストの仕事をきっかけにイラストレーターとして独立。以降、航空機を中心とした乗り物関係のイラストをはじめ、模型およびトイの製品パッケージ、オブジェ、オリジナル商品開発、キャラクターデザインを手がける。AAF(オートモビル・アート連盟)会員。神奈川県藤沢市在住

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