「令和時代のドライビングカー」マツダ3ファストバックの光る実力。どこまでも走り続けたくなる

マツダ3ファストバックXDバーガンディセレクション(FF) 試乗記

IMG_5837.JPGマツダ3ファストバックXDバーガンディセレクション(FF) 価格:6SAT 298万9200円 マツダ3は写真のファストバック(全長4460mm)とセダン(同4660mm)の2シリーズ構成 XDは1.8リッター直4ディーゼルターボ(116ps)搭載

ファストバックは「4シータークーペ」という表現が似合う

マツダ3に、ようやくじっくりと試乗できた。テストドライブに連れ出したモデルは、ポリメタルグレーメタリックという新色のファストバック、1.8リッターディーゼル(116ps/270Nm)を搭載したXDバーガンディセレクション。駆動方式はFF。BOSEサウンドシステムと360度セーフティパッケージを装備し、車両価格は約315万円。

 前回はテストコース限定試乗だったが、今回改めて市街地や郊外路、さらには高速道路やワインディング路へと乗り出してみて、ポジティブな面とネガティブな面を交えて、さまざまな印象を受けた。

 ドライバーズシートに乗り込む。前方視界は良好。車両感覚は把握しやすい。ワイパーがヒドゥンタイプになり、インパネのデザインがすっきりとしている点が好印象を盛り上げる。ただしルームミラー越しの後方視界には課題が残る。後方ビューは上下方向が限られ、「ドアミラーでかなりカバーはできるものの、斜め後方を直接確認したい場合、死角が非常に大きい」という印象だ。後席着座時の開放感も、このカテゴリーのモデルとしては例外的にエモーショナルなスタイリングからもある程度の予想が付いた通り、高くかつ後端で大きくキックアップしたベルトラインのために、かなり限定的だった。

 スペース上は大人4名が無理なく過ごせる。だが、キャビンの考え方は前席優先の「2+2」的なイメージ。スペシャルティ感覚の「4シータークーペ」という表現がしっくりくる。後席居住性を含めて実用性を重んじるのであれば、セダンのほうがいいだろう。

 キャビン内の雰囲気と高い質感は、ライバルを圧倒する。ハイクオリティなインテリアは、マツダ3の大きなアドバンテージだ。室内は、見た目に上質なだけでなく、優れた使い勝手が実感できた。ステアリングホイールの右側スポーク上にまとめられたアダプティブクルーズコントロール(ADAS)関連のスイッチは、すぐに慣れてブラインドタッチで操作できた。マルチメディアのコントローラーも同様だ。

IMG_5848.JPGスタイリングは「魂動デザイン」の発展型 キャラクターラインを排したマッシブな面で構成 ボディカラーは全8タイプ 写真のポリメタルグレーメタリックはファストバック専用色

素晴らしいシート。ハンドリングは素直

 マツダがアクティブ・ドライビング・ディスプレイと呼ぶヘッドアップディスプレイは、従来の樹脂コンバイナー照射型から、ガラス面への直接照射タイプに替わり、任意の消灯が可能になった。不必要な場面では視界に入るアイテムを極力排除したい、というユーザーにはうれしい。ただし、エンジンを再始動させると自動点灯モードに戻る。

 今回、改めて実感したのは、シートの出来のよさと、オーディオの音像定位が素晴らしかった点。ハンドリングは素直。とくにスムーズなステアリングの操舵フィールは心地よい。

 初試乗でボクが感動した「高い静粛性」は、今回注釈が必要になった。平滑路面のテストコースでは気づかなかったが、粗粒路に差しかかるとロードノイズが急増する傾向が強い。平滑路面上では、クラスを超えた高い静粛性を発揮するだけに、これは気になった。同時に、高速クルージング時の路面状況によっては、上下方向のボディの動き量が大きめという点にも、気がついた。前回、「VWゴルフをキャッチアップした」と思えた高いフラット感は、「路面によってはまだ及んでいない領域がある」と改めたい。

IMG_6274.JPG走りはスムーズで快適 高速走行時のスタビリティは優秀 ボディは高張力板の使用量を従来の3%から30%に高めた高剛性仕様

走りは力強い。サムシングを秘めた実力車

 116ps/4000rpm、270Nm/1600~2600rpmを発揮するディーゼルエンジンは、1800rpm付近から上でアクセル操作にほぼ即応して太いトルクが感じられる。一方で、1500rpm以下になると、思いのほか線が細くなる。ATのプログラミングは、そんなウイークポイントを巧みに回避する設定。それゆえ50~60km/hあたりの日本で多用しがちな領域は、「6速に入らず、5速でやや高い回転数のまま走り続ける」という状況が多かった。「もう1速多段化すれば、より低い回転数で静かに走行ができるのに......」と思えた。

 パフォーマンスは力強い。さまざまな走行シーンで満足感の高い走りを披露する。スピードの伸びはリニア。ワインディング路でスポーティな走りにトライしても相応に応える。ただしあまりにスムーズで、やや刺激性に欠ける。燃費は全般に優秀。高速道路を含め約300kmを走り、WLTCモード燃費(19.8km/リッター)に近い18.5km/リッターだった。

 マツダ3は意欲的なミディアムモデル。一度ステアリングを握ると、ずっと走り続けたくなるサムシングを秘めていた。ドライビングカーの代表である。

IMG_6047.JPG室内中央に8.8インチセンターモニタ―装備 バーガンディセレクションはインパネパッドとシートをレッドで統一 ステアリングはチルト&テレスコピック機構付き

IMG_6149.JPGバーガンディセレクションはレッドカラー本革シート標準 シートは着座時に脊柱が自然なS字カーブを描く構造

IMG_6034.JPG荷室は深さがあり使いやすい 後席使用時に容量67リッターのトランクが2個積める

※次ページでスペックを紹介

マツダ3ファストバックXDバーガンディセレクション(FF)主要諸元と主要装備

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グレード=XDバーガンディセレクション(FF)
価格=6SAT 298万9200円
全長×全幅×全高=4460×1795×1440mm
ホイールベース=2725mm
トレッド=フロント1570×リア1580mm
車重=1410kg
エンジン=1756cc直4DOHC16Vディーゼルターボ(軽油仕様)
最高出力=85kW(116ps)/4000rpm
最大トルク=270Nm(27.5kgm)/1600~2600rpm
WLTCモード燃費=19.8km/リッター(燃料タンク容量41リッター)
(市街地/郊外/高速道路=16.4/19.7/21.8km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=215/45R18+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.3m
●主な燃費改善対策:アイドリングストップ/筒内直接噴射/電子制御燃料噴射/過給器/コモンレール高圧噴射/4バルブ/センターノズル化/ロックアップ機構付きトルクコンバーター/電動パワーステアリング
●主要装備:スマートブレーキサポート(前後進時)/AT誤発進抑制制御(前後進時)/レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付き)/レーンキープアシスト/クルージングトラフィックサポート/交通標識認識システム/車線逸脱警報/ブラインドスポットモニタリング/前後側方接近車両検知/ドライバーアテンションアラート/アダプティブLEDヘッドライト/フロントパーキングセンサー/ヒルローンチアシスト/レインセンサーワイパー/バックガイドモニター/8.8インチセンターディスプレイ/7インチマルチスピードメーター/ヘッドアップディスプレイ/本革巻きステアリング&シフトノブ/ステアリングヒーター/パーフォレーションレザー・レッドシート/運転席電動調整機構/前席シートヒーター/合成皮革レッド・インパネトリム&ドアトリム/フルオートAC/マツダハーモニックアコースティック(8スピーカー)/グレーメタリック塗装18インチアルミ/Gベクタリングコントロールプラス/ナチュラルサウンドスムーザー/電動パーキングブレーキ(オートホールド付き)/スーパーUVカットガラス(フロントドア)+IRカットガラス(フロントガラス&ドア)/CD&DVDプレーヤー+地デジテレビチューナー
●装着メーカーop:BOSEサウンドシステム(12スピーカー)7万5600円/360度セーフティパッケージ(360度ビューモニター+ドライバーモニタリング)8万5300円
●ボディカラー:ポリメタルグレーメタリック
※価格はすべて消費税(8%)込み リサイクル費用は9780円
※スペックは2019年8月現在

IMG_5896.JPG全長×全幅×全高4460×1795×1440mm サイズはカローラ・スポーツ(同4375×1790×1460mm)とシビックHB(同4520×1800×1435mm)の中間

IMG_6187.JPG室内の雰囲気は上質 ドア開閉音は重厚な印象 作りのよさを実感する

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