名車グラフィティではありません。新車ニュースです。ベントレーが往年の逸品"チーム・ブロワー"を復刻!

ベントレーの名車、1929年製「4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"」が12台限定の"コンティニュエーションシリーズ"として復活!

 英国ベントレーは9月8日(現地時間)、同社の歴史的なアイコンである1929年製「ベントレー 4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"(Bentley 4 1/2 litre"Team Blower")」を、"コンティニュエーション(継続、持続の意)シリーズ"として復刻することを発表した。生産台数は限定12台。製造はベントレーのビスポーク(注文品、誂え品の意)とコーチワークを担う部門のマリナー(Mulliner)のスペシャリストがハンドメイドで行う。

BENTLEY Blower2.jpg▲ベントレー 4 1/2 リットル"チーム・ブロワー" ベントレーはヘンリー・ラルフ・スタンレー"ティム"バーキン卿のレースチームのために製造されたオリジナルの"チーム・ブロワー"4台の内の2号車(UU5872)を所有。これを分解してパーツなどを復刻し、12台の新車のベントレー 4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"を製造する

 まずは1929年製のベントレー 4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"とはどういうクルマだったのか、ベントレー車の歴史とともに解説しよう。1919年に「ベントレー モーターズ」を設立したウォルター・オーエン(W.0.)ベントレーは、早々に3リットル(2994cc)直列4気筒OHCエンジンを完成させ、この新ユニットを搭載したベントレー1号車をオリンピアで催された英国モーターショーに出展する。以後、テストと改良を重ねた同車は、「ベントレー 3リットル(Bentley 3 litre)」として1921年に発売された。ベントレー 3リトルは、そのオーナーとなった英国紳士たちのドライブによって数々のレースで活躍。1923年開催の第1回ル・マン24時間レースでは、ベントレーのファクトリーチームから参戦したジョン・ダフ/フランク・クレモン選手組の駆るベントレー 3リットルが堂々の4位入賞を果たし、さらに翌年のル・マンでは同選手組が見事に優勝を成し遂げた。

 一方で開発現場では、より高性能で高級なクルマのプロジェクトに着手。新エンジンとして6.5リットル(6597cc)直列6気筒OHCエンジンを製作し、このエンジンを搭載した「ベントレー 6 1/2 リットル(Bentley 6 1/2 litre)」を1926年に市場に放つ。さらに、スポーツモデル用に6.5リットル直6エンジンの2気筒を省いて4気筒化し、排気量を4.5リットル(4398cc)とした直列4気筒OHCエンジンを開発。この新ユニットを載せた「ベントレー 4 1/2 リットル」を1927年に発売した。そして、1928年にはベントレー 4 1/2 リットルを駆ってル・マン24時間レースに参戦。ウルフ・バーナート/バーナード・ルービン選手組の同車が総合優勝を果たした。

BENTLEY Blower3.jpg▲車体構造にはプレススチールフレームと半楕円形のリーフスプリング式サスペンション、そしてBentleyDraper製ダンパーの精緻なコピーを採用する

 高性能モデルとして一気に名を馳せたベントレー 4 1/2 リットル。しかし、これだけでは決して満足しない人物がいた。ベントレー車を駆ってレースで活躍した、いわゆる"ベントレーボーイズ"の一員で、さらにベントレーの顧客と同時に投資家でもあったヘンリー・ラルフ・スタンレー"ティム"バーキン卿である。4 1/2 リットルのさらなる高性能化にあたってバーキン卿が注目したのは、英国のエンジニアであったアムハースト・ヴィリヤースの設計によるルーツ式スーパーチャージャーだった。カムシャフト前端のハウジング内でまゆ型の一対のローターが回転して空気を送る、通称ルーツブロワー(blower=送風機)タイプのスーパーチャージャーを組み込むことによって、4 1/2 リットルはレース用チューニングの出力が従来の130bhpから240bhpへと大幅にアップする。当時のベントレーの会 長であったウルフ・バ-ナートは、バーキン卿の要請を受け入れて生産を許可し、スーパーチャージャー付き4 1/2 リットルを計55台製造。その内の4台が、バーキン卿のレースチームに提供された「ベントレー 4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"」だった。

BENTLEY Blower4.jpg4.5リットル直列4気筒OHCエンジンに関しては、アルミニウム製クランクケースに鋳鉄製シリンダーライナー、固定式の鋳鉄製シリンダーヘッドで構成し、肝心のスーパーチャージャーはアムハースト・ヴィリヤース製ルーツ式Mk IV型の精巧なレプリカを組み込む

 4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"は、1930年のアイリッシュグランプリでレースデビューを飾り、熟成を重ねたうえで同年のル・マン24時間レースに参戦。バーキン卿もステアリングを握り、コースレコードを記録しながら、ライバルのメルセデス・ベンツSSKを駆るルドルフ・カラツィオラ選手と激しいバトルを演じる。結果的に、4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"とSSKはリタイア。優勝したのはベントレーのファクトリーチームから参戦したウルフ・バーナート/グレン・キドストン選手組のスピードシックス(Speed Six)で、4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"は自らを犠牲にしての援護射撃という形となった。

 メジャーレースでの勝利はなかったものの、その速さは間違いなく当時のトップクラスで、しかもインパクトの強い走りを演じた4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"。その4台の内の2号車(登録番号UU5872)は、時を経た2000年よりベントレーの所有となる。そして今年、このUU5872を活用した4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"の復刻プロジェクトが始動した。

BENTLEY Blower5.jpg▲ウォーム&セクターステアリングなどインテリアに関してもオリジナルを忠実に再現する。なお、安全性に関してのみ、目立たない部分でわずかに現代のシーンに合わせた仕様変更を実施する予定

 製造チームはまずUU5872を分解し、各パーツを一覧にまとめ、細心の注意を払って3Dスキャナーで測定し、完璧なデジタルモデルを作成する。次に、オリジナルモデル製造時に使用された1920年代の金型と治具、伝統的な工具に加え、最新の製造技術を使用して12台分のパーツを製造。そのパーツをベントレーの熟練者らが組み立て、新しい4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"を生産するという計画だ。また、安全性に関してのみ、目立たない部分でわずかに現代のシーンに合わせた仕様変更を実施するという。なお、分解されたオリジナルモデルは、熟練者によって詳細に点検され、必要に応じて精緻なメンテナンスを施したうえで元の姿に戻すそうだ。

 エンジンに関しては、アルミニウム製クランクケースに鋳鉄製シリンダーライナー、固定式の鋳鉄製シリンダーヘッドで構成し、肝心のスーパーチャージャーはアムハースト・ヴィリヤース製ルーツ式Mk IV型の精巧なレプリカを組み込む。また、車体構造にはプレススチールフレームと半楕円形のリーフスプリング式サスペンション、そしてBentley&Draper製ダンパーの精緻なコピーを採用。さらに、Bentley-Perrot製の400mmメカニカルドラムブレーキやウォーム&セクターステアリングも忠実に再現する。

 12 台のコンティニュエーションシリーズのベントレー4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"が完成するのは約2年後の予定。価格は受注開始時に決定するという。英国はEUからの離脱問題、いわゆるブレグジットで揺れているが、ベントレー4 1/2 リットル"チーム・ブロワー"の復刻は何とかスムーズに進行してほしいものだ。

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