フェラーリが最新2+2クーペモデル「ローマ」の全貌を発表。伝統のFRクーペ・シリーズの系譜に新たなページを刻む

跳ね馬の最新2+2クーペ「フェラーリ・ローマ」の詳細が明らかに。パワートレインには620psを発生する進化版V8ツインターボエンジンに8速DCTを搭載

 伊フェラーリは12月19日(現地時間)、最新FR(フロントエンジン・リアドライブ)クーペモデルの「ローマ(Roma)」の詳細を発表した。

Ferrari_Roma1.jpg▲フェラーリ・ローマ フロントミッドシップに搭載されるエンジンは進化版の3855ccV8気筒DOHCツインターボユニットで、9.45の圧縮比から最高出力620ps/57507500rpm、最大トルク760Nm/30005750rpmを発生する

 現代版"ドルチェヴィータ"(甘い生活、自由で気ままな生活の意味)をコンセプトに誕生したローマは、フェラーリ伝統のFRシリーズに加わった新世代の2+2ベルリネッタ(クーペ)である。基本的には電動ハードトップを備える「ポルトフィーノ(Portofino)」のクーペ版という位置づけだが、そのデザインやパワートレインなどにはフェラーリの最新バージョンが精力的に盛り込まれた。

 フロントミッドシップに搭載されるエンジンは、新しいカムプロフィールやタービンの回転を測定する速度センサー、選択したギアに合わせてトルク伝達量を電子制御するバリアブル・ブースト・マネジメント、サイズの縮小によって回転質量を削減したフラットプレーン式クランクシャフト、小型化を図って慣性モーメントを低減させたツインスクロールのターボチャージャーなどを採用した進化版の3855cc・V型8気筒DOHCツインターボユニットで、9.45の圧縮比から最高出力620ps/5750~7500rpm、最大トルク760N・m/3000~5750rpmを発生する。また、ガソリン・パティキュレート・フィルター(GPF)を組み込むなどして最も厳しい排出ガス基準であるユーロ6Dに適合させた。

 組み合わせるトランスミッションは、SF90ストラダーレ(Stradale)で導入された新設計の8速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の派生型で、高めのギアレシオ設定やリバースギアの追加(SF90ストラダーレではエレクトリックモーターをリバースに使用)などを実施。従来の7速よりもコンパクトで約6kg軽くなり、また低粘度オイルとドライサンプ式構造によって流体力学的ロスを最小限に抑え、より素早くかつスムーズな変速を可能とする。性能面では、ポルトフィーノに比べて73kgほど軽い車重1472kgに抑えた効果もあって、最高速度が320km/h以上、0→100km/h加速が3.4秒という超一級のパフォーマンスを実現した。

Ferrari_Roma2.jpg▲全長4656×全幅1974×全高1301mm/ホイールベース2670mm トレッド前1652/後1679mm 車重1472kg リアスクリーンと一体化した可動式リアスポイラーを装備する

 シャシー性能については、多くの基本コンポーネントを新設計したうえで、最新の電子制御デバイスを組み込んで高度なドライビングプレジャーと快適な乗り心地を高次元で両立させたことが特徴である。まず、サイドスリップを予測してコントロール系の制御システムへ伝達するSSC(サイドスリップ・コントロール)は6.0へとバージョンアップ。E-Diff、F1-Trac、SCM-E Frs、フェラーリ・ダイナミック・エンハンサー(FDE)といった制御を統合し、より正確で緻密なダイナミクス性能をアシストする。また、横方向のダイナミックコントロールシステムであるFDEには「Race」モードを導入。従来の「Wet」「Comfort」「Sport」「ESC-Off」と合わせて、5モードの選択を可能とした。さらに、運転支援機構としてADAS(SAEレベル1)システムを設定。アダプティブクルーズコントロールや自動緊急ブレーキ、レーンデパーチャーウォーニング、トラフィックサインレコグニション、ブラインドスポットディテクション、リアクロストラフィックアラート、サラウンドビューカメラといった先進機構を採用する。オプションとして、照射範囲を自動制御するマトリックスLEDヘッドライトも用意した。

 エアロダイナミクス性能にも磨きをかける。最大の注目ポイントはリアスクリーンと一体化した可動式リアスポイラーで、格納時はクーペならではのフォーマルな優美さを損なわず、高速走行時には自動で起動して効果的なダウンフォースを発生する。また、スポイラーの角度は「ロー・ドラッグ(LD)」「ミディアム・ダウンフォース(MD)」「ハイ・ダウンフォース(HD)」の3パターンに調整する仕組みとした。一方、フロントのアンダーボディには空気の流れをスムーズにするボルテックスジェネレーターを装備。リアスポイラーと合わせて、最上レベルの空力特性を具現化した。

Ferrari_Roma3.jpg基本フォルムはシンプルな面を基調とした優雅なファストバックスタイルで構成。新しいコンセプトのフロントグリルやシャークノーズを形作る前端、モンツァSPの流れを汲む直線的なヘッドライトなどが印象的

 エクステリアについては、1960年代の伝統的なグランドツーリング・フェラーリからインスピレーションを受け、これを現代的に解釈したことが訴求点だ。基本フォルムはシンプルな面を基調とした優雅なファストバックスタイルで構成。同時に、エレガントなミニマリズムを追求する目的でエアベントや不要な装飾を鋭意省略する。各部のディテールにもこだわり、新しいコンセプトのフロントグリルやシャークノーズを形作る前端、モンツァSPの流れを汲む直線的なヘッドライト、フェンダーのしなやかなカーブと溶け合うボンネット、スクーデリア・フェラーリのシールドを排してシンプルかつスマートな造形としたボディサイド、前8J×20アロイホイール+245/35ZR20タイヤ/後10J×20アロイホイール+285/35ZR20タイヤの専用シューズ、コンパクトでミニマリストな形状としたうえでツインテールライト埋め込んだ独特なリアセクション、フェンスとエグゾーストエンドをきれいに組み込んだディフューザーなどを採用して、ピュアで洗練されたスタイリングを創出した。なお、ボディサイズは全長4656×全幅1974×全高1301mm/ホイールベース2670mm、トレッド前1652/後1679mmに設定している。

Ferrari_Roma4.jpg▲ドライバー側とパッセンジャー側を別々の空間で演出するセル構造のデュアルコクピットの理念を進化させたうえで、デジタル化した最新のインターフェースを採用する

 内包するインテリアは、ドライバー側とパッセンジャー側を別々の空間で演出するデュアルコクピットの"セル"構造の理念を進化させたうえで、デジタル化した最新のインターフェースを積極的に採用したことがトピックである。計器類は完全にデジタル化し、停止中はスクリーンがブラックアウト。ステアリング内のエンジンスタートボタンを押すと、すべてのデジタルコンポーネントが徐々に点灯して、最後にコクピット全体が輝く仕組みだ。また、インストルメントクラスターには16インチのHDスクリーンを装備。新造形のステアリングにはさまざまなマルチタッチコントロールを組み込み、ドライバーがステアリングから手を離すことなく車両の機能・制御装備をコントロールできるようにアレンジした。一方、前席は"セル"構造で仕立てたうえで、サポート性と座り心地を両立させた上質なバケットシートを装着。前席背後には、フェラーリ自身が"2+"(2+2といえるほど広いスペースではない)と表現する小ぶりのシートを配置している。

Ferrari_Roma5.jpg▲サポート性と座り心地を両立させた上質なバケットシートを装着。前席背後には"2+"と表現する小ぶりのシートを装備

 フェラーリの新世代FRクーペの「ローマ」は、2020年夏ごろに発売される見込み。車両価格は現行ポルトフィーノより機構面などがアップデートしていることから、同車よりやや高くなると予想される。

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