復活したフレンチスポーツ、アルピーヌA110が大切にした「伝統と革新」を岡崎教授が徹底レクチャー

アルピーヌA110ノワール 価格:7SMT 844万4000円

IMG_9550.JPGアルピーヌA110ノワール 価格:7SMT 844万4000円 新型はMRならではのハンドリングを追求 ボディは樹脂製のルーフとバンパーを除きアルミの軽量仕様

1960~70年代のモータースポーツシーンを席巻した1stモデルの衝撃

 アルピーヌA110。歴史に残るフランスの名車が復活した。

 1stA110は、モータースポーツシーンで1960年代から活躍を始め、レースにラリーに輝かしい成績を残した。中でもWRC(世界ラリー選手権)での王座獲得は衝撃的だった。

 コンパクトで軽量、そしてRR駆動がもたらす絶大なトラクションが1stA110の武器だった。全高は1130mmと低い。当然、コクピットも乗り降りも超タイト。でも、クルマとのフィット感、一体感は最高だった。

 ボクが一番好きだった1300Sの重量はわずか635kg! ほぼ現行F1マシンに等しい。

 1300Sが積むルノーR8ベースの直列1.3リッター4気筒OHVエンジンは、名チューナー、ゴルディーニの手によって132psを発揮していた。市販大衆車ベースのエンジンから「1リッター当たり 100ps以上」を引き出すチューニング技術はすごかったが、気難しさも相当なレベルだった。

 それを象徴するのが「3種の熱価の点火プラグ携行」が求められたことだ。3種とは一般路用、高速道路用、山岳路用を指す。山岳路用は、空いたワインディングロードをハードに走る場合に使う。

 当時の高性能車は「プラグが濡れる」「プラグが溶ける」という言葉をよく使った。高い熱価のプラグでゆっくり走ると「プラグは濡れる」し、低い熱価のプラグで攻めると「プラグは溶ける」という現象が起きた。ボクは都内を低速用で走り、東名高速入り口で高速道路用に交換。山岳路入り口でハード走行用に替えた。

 圧巻は山岳路の走り。コーナーは速いし限界は高い。まさに「攻めがいがある_」クルマだった。当然ドライビングは最高に楽しかったが、高い限界域でのコントロール幅は狭く、うっかりすると派手なスピンを招く。1stアルピーヌA110は、美しく、速く、最高に刺激的なクルマだった。

IMG_9538.JPG新型はMRスポーツ 全長×全幅×全高4205×1800×1250mm 車重1130kg パワーウエイトレシオ:4.48kg/ps 前後重量配分:44対56

復活版も軽量設計。駆動レイアウトはMR

 あれから半世紀、、アルピーヌA110は復活した。

 新型のサイズは全長×全幅×全高4205×1800×1250mm。現代が求める快適性と安全性を確保したのだ。この程度の大型化はやむを得まい。重量は1130kg。ポルシェ911より400kgほど軽い。

 その結果、A110という稀代の名跡を受け継ぐにふさわしいパフォーマンスを獲得した。

 1stA110は4気筒エンジンを縦置きするRRレイアウトだったが、新型は1.8リッター直4ターボ(252ps/320Nm)をミッドシップに横置きする。

 新世代のA110はじつに快適だ。乗降性にしても、高齢のご夫妻が愛用するのに問題はない。A110はわが家に1週間滞在し、箱根1泊のドライブもしたが、妻からひと言のグチも出なかった。

 乗り心地は固めで、少し揺すられ感もある。が、ボディはしっかりしていて粗さはない。だから、スポーツカー好きならOKだろう。

 ロードノイズが低く、かつ路面に対しての変化幅が少ないのも、長距離ドライブでの快適性を大いに高めている。

メインIMG_9559.JPGA110シリーズは最高出力を標準車比40psアップしたS(898万円)が新登場 Sは292psユニットとカーボンルーフとオレンジブレーキキャリパーを標準装備

ハンドリングは最高! 新型は本物の実力車

 シートは基本的に固めで、クッションストロークも少なめだが、面圧分布がよく、快適性を確保している。長距離も問題はない。

 小径のステアリングホイールも、A110のキャラクターに見事にマッチしている。ハンドリングは最高_ 〝コーナーに貼り付く〟とは、こういう走りをいうのだろう。お尻を中心にした旋回はロールを感じさせず、気持ちがいい。スポーツ領域はハイレスポンスだが、体幹がしっかりしているので怖さや不安はない。

 新A110は、クルマ好きなら誰にでもお勧めできる。見た目も中身も懐が深い。本物の実力車だ。

メインIMG_9680.JPG室内は適度にタイトな機能重視デザイン 視界は広く車両感覚は把握しやすい ステアリングは革巻き小径Dシェイプ ハンドリングはシャープでコントローラブル 最高に楽しい!

IMG_9783.JPGノアールはスパルコ製本革バケット標準 シートヒーター内蔵 サポート性と快適性をハイレベルで提供

アルピーヌA110ノワール 主要諸元

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価格=7SMT 844万4000円(限定車)
全長×全幅×全高=4205×1800×1250
ホイールベース=2420mm
車重=1130kg
乗車定員=2名
エンジン=1798cc直4DOHC16Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=185kW(252ps)/6000rpm
最大トルク=320Nm(32.6kgm)/2000rpm
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:205/40R18/リア:235/40R18
駆動方式=MR
最高速度=250km/h
0→100km/h加速=4.5秒
デビュー●2019年6月

IMG_9602.JPGフロントマスクをはじめ各部の造形は1stモデルのモチーフを継承 Cd値は0.32

IMG_5063.JPG1794cc直4DOHC16Vターボ 252ps/6000rpm 320Nm/2000rpm ルノー・メガーヌR.S.用をリファイン 全域パワフル レスポンスはシャープ JC08モード燃費:14.1km/リッター

IMG_9645.JPGタイヤはフロント205/40R18/リア235/40R18の専用設計ミシュラン・パイロットスポーツ4 アルミデザインは1stモデルのオマージュ

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