キュートなフロントマスクが話題。新型ホンダ・フィットがライバルを凌駕したと考える理由

ホンダ・フィット 価格▶155万7600~263万6600円 試乗記

メインIMG_7516.JPGフィットe:HEVクロスター(FF) 価格:228万8000円 クロスターは専用フロントマスクとクラッディングパーツを装着し新たな個性を主張 最低地上高は標準車比25mm高い160mm

新型は日本市場重視設計。コンパクトサイズをキープ!

 新型4thフィットが街を走りはじめた。新型は、昨年10月にデビュー予定だったが、新規採用の電動式パーキングブレーキに不具合が見つかり、発売が遅れていた。ユーザーに納車後のトラブルではないし、不具合解消のためサプライヤーを変更した関係で、当初ドラム式だったリアブレーキはディスク式に「スペックアップ」された。見方によっては「災い転じて福」となったとも受け取れる。4thフィットは、各部のトラブルシューティングが完了した自信作だ。

 フィットは世界で販売されるホンダの基幹モデル。その立ち位置は新型も変わらない。まず母国の日本から販売をスタートさせたのは、日本市場を重視している販売戦略の表れである。

 スタイリングは歴代モデルで培ったアイデンティティを大切にしている。強くスラントした短いノーズを経て、滑らかにルーフラインへと続く、いわゆるワンモーションフォルム。フィットならではの雰囲気をかもしだしている。ボディサイズは全長×全幅×全高3995×1695×1515mm(ホーム)。従来モデル同様のコンパクト設計をキープした。

IMG_7424.JPGクロスターはハイブリッドと1.3リッターガソリン(193万8200円・FF)を設定 駆動方式はFFと4WD ルーフレールはメーカーop(4万4000円)

ワイドな視界が印象的!インパネはシンプル&開放的

 新型の特徴はワイドな視界。開発陣は、フィットらしさのひとつでもある前進した太いAピラーが生み出す死角の解消に注力した。新しいフィットはドライバーズシートに腰を下ろした瞬間に、広い視界が実感できる。これは開発陣の努力の賜物。新型フィットは、前方衝突時の衝撃を最前方のAピラーではなく、2本目のピラー(メーカーはサポートピラーと呼ぶ)へと伝達させる。この技術が、最前列Aピラーの極細化を可能にした。Aピラーは「ウインドシールドを支えるだけの役割」だ。

 新型は、実質的にフロントサイドの三角窓部分までを「前方視界の一部」とすることで、歴代モデル随一の広い視界を獲得。実に気持ちがよく、運転のしやすさに大きなプラスをもたらしている。誰もが自信を持ってドライビングが楽しめるに違いない。

 大きく開けた視界とともに、何とも開放的なキャビン空間を演出するのが、新鮮な造形のインパネだ。メーターフードを廃止して上面をフラットにし、同時に大面積のパッドを用いることでワイド感を強調するデザインに仕上げた。

 新型フィットの開発キーワードは「心地よさ」だったという。かつてない視界の広がりと、シンプルで開放的なインテリアの雰囲気は、そのキーワードから生み出されたものと考えれば納得がいく。

IMG_7418.JPGフィットは発売後1カ月で3万1000台を受注 ハイブリッドの販売比率は72% クロスターは全体の14%を占める

広く使い勝手に優れた室内。ボディ骨格は従来型を大幅改良

 最低地上高が若干高くなり、専用デザインのバンパーやホイールアーチプロテクター、サイドシルガーニッシュを採用し、ボディサイズが全長×全幅×全高4090×1725×1545mmとやや大きくなるクロスターを含め、2530mmのホイールベースは従来と同値。実は新型のボディ骨格は、基本的には従来型からのキャリーオーバーだ。

 それゆえ、シーティングレイアウトや居住空間にも、大きな変化は見られない。室内スペースは長×幅×高さ1955×1445×1260mm。広さ、ユーティリティともクラストップ級を誇る。フィットならではの大きな魅力として、後席チップアップ時に出現するラゲッジスペースがある。独自のセンタータンクレイアウトが生み出した多彩な使い勝手は、もちろん継承されている。

メインIMG_7556.JPG視界は超ワイド シンプル形状のインパネと相まって開放感はハイレベル 車両感覚が把握しやすく取り回し性良好 写真の9インチナビはディーラーop(20万5543円)

ハイブリッドの走りはEVイメージ。各種制御は見事

 パワートレーンは、可変バルブタイミング&リフト機構のVTECを用いて1バルブを休止させるメカニズムを備えたポート噴射式1.5リッター直4エンジン(98ps/127Nm)とモーター(109ps/253Nm)を組み合わせたハイブリッドと、VTECと吸気側の可変バルブタイミング機構を用いてアトキンソンサイクルを実現し、高効率化を図った1.3リッター直4エンジン(98ps/118Nm)+CVTの2タイプ。ハイブリッドは、従来のDCTに1基のモーターを組み込む方式から、e:HEVを名乗る2モーター方式に一新された。

 試乗車は、ハイブリッドのホームとクロスター。そして、1.3リッターのネスの3台。いずれもFWD仕様である。これまでの3倍を超える100psオーバーのモーター出力を発揮する新型ハイブリッドの走りは、「EV濃度」が強い。バッテリー容量が低下すると即座にエンジンが始動して「シリーズハイブリッド(エンジンで発電/モーターで走行)」になるが、そうしたシーンでもエンジン回転数は絶妙にコントロールされ、エンジン音を暗騒音に紛らせてしまうのはなかなか見事だ。静かな印象をキープする技術に感心した。

 加速の要求度が高まると当然エンジン回転数も高まっていく。ノイズを隠しきれないシーンでは、走行速度の高まりに応じてエンジン回転数をステップ変速イメージに上下させる。自然なリズム感を演出してラバーバンド感を抑えている。これは巧みな設定だ。

 日産がeパワーの名称で展開するシリーズハイブリッド車と比較し、高速クルージングシーンで効率に優れたエンジン直結モードを備える点は、ホンダ方式のアドバンテージがある。直結モードへの「出入り」は、かなり感覚を研ぎ澄ましていてもほとんどわからない。絶妙な仕上がりだ。

IMG_7721.JPGハイブリッドは1496cc直4DOHC16V(98ps/127Nm)+モーター(109ps/253Nm)で構成 エンジンは発電と高速走行時に使用

上質な乗り味。人に寄り添う気持ちが感じられる!

 ハイブリッドから1.3リッター+CVTのネスに乗り換える。軽量ボディの効果か、一瞬の蹴り出し感がなかなか軽やかに思えた。ただし、その瞬間を過ぎると加速感は、ハイブリッドにかなわない。エンジンを主因としたノイズが大きい点もマイナス面のひとつ。100km/hクルージング時のエンジン回転数は1900rpmほどに抑えられるものの、それでも70km/h付近からそろそろエンジン音が目立ち始める。

 新型フィットで好印象な点は、しなやかさが目立つ上質な乗り味だ。詳しくチェックすれば、クロスターは他グレードよりもやや突き上げと揺すられ感が目立つ。それでも、歴代モデルと比較して間違いなく「サスペンションがよく動いている」という感触を受ける。開発陣が主張する「フリクションの取れた乗り味」は満足度が高い。

 空調コントロールはシンプルなデザインを目指しながらも、大きなダイヤルとプッシュ式スイッチを採用した。その結果、極めて優れた操作性に仕上がった。眩しさを感じた場面で、即座に光量が落とせる照度コントロールスイッチを装備したバーチャル表示メーターなど、毎日を心地よくする設計と配慮がなされている。「人に寄り添う気持ち」が明快に感じられるのが、新型フィットの特徴。気持ちのいいフレッシュモデルが登場した。

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IMG_7634.JPGシートは前後席ともクッション性を高めた新設計 クロスターはグレーのアクセント入り撥水処理仕様 室内長1955mm 後席座面をチップアップすると観葉植物など背の高い荷物に最適なスペースになる

IMG_7550.JPGセンタータンクレイアウトの利点を生かしたユーティリティが魅力 荷室は広くフラット

IMG_7433.JPGリアゲートは大開口 低いラゲッジフロアを有効に活用できる便利な設計

IMG_7608.JPG2本目のピラーを強固にしたためAピラーは極細に

ホンダ・フィットe:HEVクロスター 主要諸元と主要装備

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グレード=e:HEVクロスター(FF)
価格=228万8000円
全長×全幅×全高=4090×1725×1545mm
ホイールベース=2530mm
トレッド=フロント1495×リア1485mm
最低地上高=160mm
車重=1200kg
エンジン=1496cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=72kW(98ps)/5600~6400rpm
最大トルク=127Nm(13.0kgm)/4500~5000rpm
モーター最高出力=80kW(109ps)/3500~8000rpm
モーター最大トルク=253Nm(25.8kgm)/0~3000rpm
WLTCモード燃費=27.2km/リッター(燃料タンク容量40リッター)
(市街地/郊外/高速道路=27.0/29.7/25.8km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=185/60R16+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.0m
●主な燃費改善対策:ハイブリッドシステム/アトキンソンサイクル/アイドリングストップ/可変バルブタイミング/電動パワーステアリング
●主要装備:ホンダセンシング(衝突被害軽減ブレーキ+前後誤発進抑制機能+歩行者事故低減ステアリング+路外逸脱抑制機能+渋滞追従機能付きアダプティブクルーズコントロール+車線維持支援システム+オートハイビーム+先行車発進お知らせ機能+標識認識機能)/パーキングセンサー/サイドカーテンエアバッグ/フルLEDヘッドライト/セキュリティアラーム/高輝度シルバー塗装電動格納式ドアミラー/LEDポジション&ターンランプ/CROSSTAR専用エクステリア(フロントグリル+前後バンパー+ホイールアーチプロテクター+サイドシル&ドアロア―ガーニッシュ)/マイクロアンテナ/電動サーボブレーキ/VGR(可変ステアリングギアレシオ)/専用デザイン16インチアルミ/ホンダコネクト+ナビ装着用スペシャルパッケージ/4スピーカー/フルオートAC/AC用フル電動コンプレッサー/充電用USBジャック/撥水ファブリックシート/撥水ファブリックソフトパッド/スマートフォントレー/プラチナ調クロームメッキドアハンドル&ACアウトレットノブ/チップアップ&ダイブダウン機構付き6対4分割リアシート/後席センターアームレスト/助手席シートバックポケット
●装着メーカーop:ルーフレール4万4000円/コンフォートビューパッケージ3万3300円
●ボディカラー:サーフブルー&ブラック(op6万500円)
※価格はすべて消費税込み リサイクル費用は9240円

IMG_7654.JPGフィット・ネス 1.3リッター(FF) 価格:CVT 187万7700円 写真の2トーンカラー(op5万5000円)はネス専用色 e:HEV(222万7500円・FF)も設定

IMG_7666.JPG1317cc直4DOHC16Vは98ps/118Nmを発生 100km/h巡航時エンジン回転数は約1900rpm WLTCモード燃費19.6km/リッター(FF)

IMG_7929.JPGネスはウレタン製ステアリング標準 1.3リッター車のトランスミッションはCVT エンジン音がやや耳につく 乗り心地はソフトで快適

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