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4月に製造を終了する予定だったベントレーのフラッグシップ「ミュルザンヌ」が生産期間を延長! 理由は新型コロナウイルス感染拡大による工場の一時閉鎖への対処

Writer:大貫直次郎 

栄光の旗艦モデル「ミュルザンヌ」は最後の1台まで造り上げます! ベントレーが新型コロナウイルス感染拡大による工場の一時閉鎖で製造を停止しているミュルザンヌの生産期間延長を発表

 英国ベントレーは331日(現地時間)、4月に製造を終了する予定だった「ミュルザンヌ(Mulsanne)」の生産期間を延長すると発表。合わせて、「ミュルザンヌ メーカーズ」と呼ばれる製造に携わるスタッフのコメントを披露した。

Bentley  Mulsanne Makers1.jpg4月に製造を終了する予定だったベントレーのフラッグシップ「ミュルザンヌ」が生産期間を延長。ベントレーの英国クルー工場は現在、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って工場を一時閉鎖しているため、ミュルザンヌの製造ができていない。その対応策として、生産期間延長を実施するわけだ。写真はクルー工場での生産風景のひとコマ

 今回の生産期間の延長は、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大によるクルー工場の一時閉鎖に対処したもの。約10年に渡ってベントレーのフラッグシップモデルの地位に君臨してきた現行ミュルザンヌの最期を、外的要因による製造中止で終わらせたくない。伝統のクルー工場で、最後の1台まで、熟練したスタッフがこだわって製造したい――そうした強い思いが、生産期間延長の決定につながったわけだ。

Bentley  Mulsanne Makers2.jpg▲"フライングB"のマスコットを付けたミュルザンヌは、現在までに7300台以上を生産している

 極めて優れたスキルや細部へのこだわりが必要とされる名工集団の「ミュルザンヌ メーカーズ」に属する8名のスタッフは、ミュルザンヌに対する思いを熱心に語る。

Crispin Marshfield - Design.jpg▲デザイン担当のクリスピン・マーシュフィールド。ミュルザンヌのエクステリア・デザインにはプロジェクトの立ち上げ時から携わる

 まず、デザイン担当のクリスピン・マーシュフィールド(Crispin Marshfield)の弁。

「ミュルザンヌのエクステリア・デザインには、プロジェクト立ち上げ時から携わっています。最初の構想段階から実物大クレイモデルの開発、そして最終的な生産開発にまで携わりました」

「私にとってミュルザンヌは、常に私が最も誇りに思うプロジェクトの1つです。時が経つに連れ、ミュルザンヌは現代を象徴する存在として認識されるようになりました」

「このモデルは独自の後輪駆動プラットフォームを基に作られたベントレーであり、6.75リッターV8エンジンを搭載する最後のモデルでもあります。このエンジンについては、何世代にも渡るクラシックベントレーの系譜を辿ることができます。まさに1つの時代の終焉です」。

Peter Guest - Engineering.jpg▲エンジニアリング担当のピーター・ゲスト。ミュルザンヌ・プロジェクトのボディ&トリム部門の責任者であり、ボディ構造全体およびキャビン全体の技術開発を担った

 次に、エンジニアリング担当でボディ&トリム部門責任者のピーター・ゲスト(Peter Guest)の弁。

「ミュルザンヌは、そのエンジニアリングにおいて極めて野心的で、ボディ構造、電気系統、内外装のデザインを一新し、シャシーやエンジンの設計も大幅に見直されました。膨大な量の作業を社内の約600人のエンジニアで構成されるチームで受け持ち、最終的にここクルー工場で製造を担当することになるこれらのチームメンバーたちと協力して作業を進めました。例えば、ボディのDピラーには手作業でロウ付けをする大きな接続部がありますが、これは"無垢材から削り出した"ような外観を実現するための最良の方法でした」

「インテリアは全く新しい、極めて複雑なものになりました。数百片ものレザートリムと、キャビンを囲むよう完璧に配置された"リング・オブ・ウッド(木の輪)"が特徴です。繰り返しになりますが、私たちは工場で職人たちと協力して、私たちが設計したものを確実に生産できるようにしなければなりませんでした。それは大きな課題ではありましたが、私たちはそれを実現しました。そして、そのクルマの外観は、今でも目を見張るほどだと思います」

「工場から出荷されるミュルザンヌを見るたびに、私は大きな誇りを感じます。当社がミュルザンヌを発売したとき、このクルマは"グランド ベントレー"と呼ばれました。そして今、ミュルザンヌは、最新のグランド ベントレーである新型フライングスパーにその名前を引き継ぐことになりました。この2台の開発に携わり、息を吹き込んできた者として、フライングスパーがその名にふさわしい後継車であることは間違いありません」。

Ian Johnson - Body in White.jpg▲ホワイトボディ担当のイアン・ジョンソン。あらゆるバリエーションのミュルザンヌのボディを手作業で仕上げてきた

 3番目はホワイトボディ担当のイアン・ジョンソン(Ian Johnson)の弁。

「私はベントレーで8年以上、世界中のお客様のためにミュルザンヌのボディを製作してきました。その間、私は様々な工具やヤスリを使い、伝統的な金属の仕上げや板金加工の技術を学び、発展させ、塗装部門へ運ばれる前にそれぞれのボディが極めて高い基準を満たしていることを確認してきました」

「長年に渡り、このブランドのフラッグシップモデルに携わってきた素晴らしいチームの一員だったことを、私は本当に誇りに思っています。これは1つの時代の終わりを意味しますが、私は決して忘れることはないでしょう。これからもずっと、語り継いでいきたいと思っています」。

Rob Thompson - Paint Shop.jpg▲塗装(ペイントショップ)担当のロブ・トンプソン。ベントレーに最も長く在籍する従業員の1人で、40年以上の価値ある仕事を終えて間もなく引退する予定だという

 4番目は塗装(ペイントショップ)担当のロブ・トンプソン(Rob Thompson)の弁。ロブはベントレーに最も長く在籍する従業員の1人であり、40年以上の価値ある仕事を終えて、間もなく引退する予定だ。

「私はベントレーに入社して今年で40年目になりますが、ミュルザンヌという物語の最初から最後までの一翼を担ってきたことは、私自身の大きな誇りです。私は2009年以来、ペイントショップを通過したすべてのミュルザンヌのボディに責任を持っています」

「私にとって、ミュルザンヌはベントレーの伝統と現代のボリューム時代への移行が完璧に組み合わされた存在です。ミュルザンヌのために特別に調合したカラーのなかには、ビスポークのサテンフィニッシュやリキッドマーキュリーと呼ばれる極めて見事なメタリックなど、実に目を見張るものがあります」

「ミュルザンヌは発売以来、当社のフラッグシップモデルであり、それに取って代わるのは難しいでしょうが、新型フライングスパーは、そのすべての面で後継モデルにふさわしいクルマです」。

John Fisher - Wood Shop.jpg▲木工(ウッドショップ)担当のジョン・フィッシャー。業界をリードするベントレーのウッド・インテリア・フィニッシュを支えるベニヤやハンドクラフトの技術について彼が知らないことはないという

 5番目は木工(ウッドショップ)担当で、同部門の責任者に位置するジョン・フィッシャー(John Fisher)の弁。

「発売以来、ミュルザンヌのウッドコンポーネントに取り組んできましたので、私にとって、ミュルザンヌは個人的に意味のあるつながりを持つベントレーです」

「以前はウッドショップのプロダクション・マネジャーとして、ミュルザンヌのインテリアの中心的な存在であるドライバーと乗員を包み込むような"リング・オブ・ウッド(木の輪)"を実現するのに必要な多くの手作業工程の計画および実作業を担当していました。最高級の天然素材を使用し、他に類を見ないほどの配慮と注意を払って作られた真の芸術品です」

「私にとって個人的に最も印象深い業務は、工場を訪れたお客様とクルマの仕様を決める作業です。お客様は、すべてのベントレーを唯一の存在にしているディテール、複雑さ、手作業の職人技に心を奪われるのです」。

Tim Seipel - Engine.jpg▲エンジン担当のティム・サイペル。6.75リッターV8エンジンの開発に携わってきた豊富な経験を持ち、彼の指揮下でベントレー・アルナージやブルックランズにも同エンジンを搭載。フォルクスワーゲン・グループ初の製品である気筒休止システムの開発も担った

 6番目はエンジン担当のティム・サイペル(Tim Seipel)の弁。サイペルは6.75リッターV8エンジンの開発に携わってきた豊富な経験を持ち、彼の指揮下でベントレー・アルナージやブルックランズにも同エンジンを搭載している。

「私たち皆が知っているミュルザンヌの定義づくりに大きな貢献ができたことを、とても誇りに思っています。ミュルザンヌは、私が2005年に入社した後、ベントレーで開発に携わった最初の新型車でした。私にとってミュルザンヌは究極のベントレーを定義づけたクルマであり、クラシックなベントレーを特別な存在にしたあらゆる属性を現代的に解釈し直したクルマです。その属性の大部分は私たちの特徴的なエンジンが占めており、現代のすべての排出ガス基準を満たすよう全く新たに設計されたこのエンジンは、ベントレーの象徴といえる"ウェーブ・オブ・トルク(トルクの波)"を実現したエンジンです」

「そのため、6.75リッターV8との別れは、私にとって物悲しい想いがあります。このエンジンは、1959年に初めて生産が始まった"Lシリーズ"の真のアイコンです。私は長年に渡りこのエンジンを開発し、洗練させてきたチームの一員でしたが、このエンジンは本当に惜しまれることでしょう。私たちは、8気筒のそれぞれにベントレーの心と魂を込めてきました」。

Donna Morrey - Operations.jpg▲業務(オペレーションズ)担当のドナ・モーリー。ミュルザンヌに関してはベントレーが最初に量産準備段階の車両の開発をスタートさせたときから携わる

 7番目は業務(オペレーションズ)担当のドナ・モーリー(Donna Morrey)の弁。

「私とミュルザンヌとの付き合いは、ベントレーが最初に量産準備段階の車両の開発をスタートした2008年に始まりました。この間、私はシニア・プロダクション・クオリティ・マネジャーを務め、すべてのプロトタイプがベントレーの求める最高の品質基準を満たしているかどうかを確認していました」

「私は今、同僚であるミュルザンヌ メーカーズのスキルを結集して完成車を作り上げるチームの一員になれて幸せです。クルー工場のゲートから何百台もの車両が旅立つのを見送っていても、飽きることはありません」

「ベントレーがこれまで生産してきたミュルザンヌの11台に、究極のラグジュアリーを実現したことに、疑いの余地はありません」。

Hans Holzgartner - Marketing.jpg▲マーケティング担当のハンス・ホルツガートナー。ユーザーが真に望むミュルザンヌを確実にデザインし、設計、製造することに努めてきたという

 最後はマーケティング担当のハンス・ホルツガートナー(Hans Holzgartner)の弁。

「ミュルザンヌは、私の職業生活のなかで最も充実したプロジェクトでした。自動車業界の頂点に立つクルマを扱っていると、芸術の世界へと踏み込むことになります。もはや単なる自動車ではありません。プロダクト・マネジャーとして、他の自動車メーカーでは考えられないような素材や工芸品、装備品を紹介することがあります。例えば、10時間かけて手作業で磨き上げた無垢のステンレススチール製ブライトウェアなどです」

「私は、2016年のジュネーブ・モーターショーで、フェイスリフト後のミュルザンヌ ファミリー、とくにミュルザンヌ エクステンデッドホイールベースを、まったく予測していなかったお客様の前で公開し、反響の大きさを目の当たりにしたことは忘れられません」

「ミュルザンヌは二度と訪れることのない瞬間をとらえた一枚の写真のようなものです。それはひとつの時代の終わりであり、この種のものとしては最後のクルマです。私にとって、この作品は当社のこれまでの100年の活動と、その間に学んだあらゆることの集大成です。これから、私たちは極めて新しい章に踏み出します」。

 これらのスタッフたちが生み出したミュルザンヌは、7300台以上が市場に送り出されている。そして、新型コロナウイルスを克服して生産を再開した暁には、最終ロットのミュルザンヌが、魂を込めて製造されるのである。

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