【最新モデル試乗】独創のSH-AWDハイブリッド。ホンダNSXが提示するスーパースポーツの新世界!

ホンダNSX 現行モデルは2018年秋に加速フィールとハンドリングをリファイン 走行モードはクワイエット/スポーツ/スポーツ+/トラックの4種を設定
ホンダNSX 現行モデルは2018年秋に加速フィールとハンドリングをリファイン 走行モードはクワイエット/スポーツ/スポーツ+/トラックの4種を設定

HONDA,NSX,クーペ,試乗記

目指したのは「速さと快適」。システム出力581psを誇るスーパーハイブリッド

 NSXは、スーパースポーツ界のチャレンジャーだ。数あるホンダ車のなかで、最もホンダらしいクルマかもしれない。何しろスーパースポーツ専門メーカーでもないのに、2シーターミッドシップをこの時代に新規開発したのだ。その勇気と心意気に敬意を表しておきたい。

 現行2ndモデルの開発テーマは、「世界第一級のスピード性能を持ち、快適に操れるスーパースポーツ」である。日米共同のワールドワイドな視点で理想のNSX像を追求。システム出力581psを誇る1エンジン+3モーター方式のスポーツハイブリッドSH-AWD機構を生み出した。

 ドライブフィールは新鮮。他のどのライバルとも違う走り味の持ち主だ。中でも「静か」に走ることに関してはスーパーカー界の最先端。モーターが主体となるクワイエット・モードを選ぶと、EV走行を優先しエンジンの主張を抑える。
 モーターを「加速と曲がる性能」に応用したスーパーパフォーマンスも素晴らしい。とくにハンドリングは最高。前輪用モーターを左右独立で制御し、コーナーのターンインから立ち上がりまで挙動がいっさい乱れない。正真正銘のオン・ザ・レール感覚が味わえる。

全長×全幅×全高4490×1940×1215㎜ 車重1800㎏ パワーウエイトレシオ:3.10kg/ps 前後重量配分は42対58 駆動方式:4WD
全長×全幅×全高4490×1940×1215㎜ 車重1800㎏ パワーウエイトレシオ:3.10kg/ps 前後重量配分は42対58 駆動方式:4WD

高いポテンシャル。偉大なる1stモデルがもたらしたもの

 将来性も含めたポテンシャルの高さはかなりのもの。スーパーカーが好きで1st・NSXを保有するボクは素直に敬意を抱いている。NSXは上出来なのである。けれども2ndモデルのデビュー時には、賛否両論が渦巻いた。

 根本には偉大すぎる1stモデル(1990年登場)の存在がある。1st・NSXはオールアルミ製ボディを採用。スーパースポーツの世界に、かつてないクオリティと洗練をもたらした。同じモデル名を名乗る以上、遺産をどう引き継ぐべきか。それが難しい。何しろ1stモデルが06年に生産を終えてから次世代の開発がアナウンスされる12年まで6年の断絶があった。そしてデビューを迎えるまでに、さらに4年の歳月を要したのだ。

 2ndモデルは、偉大なる遺産を引き継ぐ方法として「継続」を選んだ。断絶しておいて超えろというのはそもそも無茶な話だ。それはポルシェ911を見ればよくわかる。スポーツカーとは、芯を引き継ぎ、余分を捨て、新たな知を導入しながら進化する存在なのだ。現行モデル登場時、斬新なメカニズムを評価しながらも、イメージ的に新しさが足りない、という声が上がったのも無理はない。

 ちなみに1stモデルの倍以上になった2400万円オーバーの価格が高すぎるという声も聞く。けれどもフェラーリV8ミドシップの価格だって1990年当時と比較すると大幅に上がった。NSXだけが高価なわけではない。断絶の時間があったからそう思われてしまうだけの話。徐々に改良しつつ価格が上昇したのなら、そうは感じないはずだ。

写真のサーマルオレンジは2019年型で登場の「エキサイティングカラー」 2020年型はインディイエローパール新設定 日本仕様のルーフはカーボンファイバー製 低重心に貢献
写真のサーマルオレンジは2019年型で登場の「エキサイティングカラー」 2020年型はインディイエローパール新設定 日本仕様のルーフはカーボンファイバー製 低重心に貢献

はっきりとした2面性。ライバルもNSXの方向性を向き始めた!

 はっきりとした2面性、それが現行NSXの新しさであり提案である。高速クルージングでは、運転席とドアの間が妙に広いことに気づいた。イメージ的にぶかぶかのトレーニングスーツを着ている気分。けれどもワインディングロードでその気になって攻め込むと、スーツはビシッと体にフィットし始める。速度を上げるほどスーツは皮膚感覚へと変わっていった。パワートレーンは十二分に力強く、ハンドリングのキレ味は鋭い。この感覚をどう評価するかが現行NSXの価値を決めると思った。

 2ndモデルはツアラー型ミッドシップスーパースポーツを目指している。ルーミーな室内やトランクルームにその狙いはよく表れている。静かで心地よいクルーズフィールは、GTそのもの。ドライバーに緊張感を与えないので、室内が広いと気づく。一方、スピードを上げると一気にクルマとの一体感が上昇。スーパーハンドリングがドライバーをその気にさせる。

 この方向性はスーパーカーの新しい流れになりつつある。マクラーレンやフェラーリはGTやF8でNSXのような路線を歩み始めた。そう遠くない将来、新時代スーパーカーの始まりは2nd・NSXだったといえる日がやってくるに違いない。

NSXはGT感覚の快適性とスポーツハンドリングを融合 太いセンタートンネルにハイブリッドシステムを制御するパワードライブユニット(PCU)搭載する 視界はワイド
NSXはGT感覚の快適性とスポーツハンドリングを融合 太いセンタートンネルにハイブリッドシステムを制御するパワードライブユニット(PCU)搭載する 視界はワイド
シートはフレームにプレス加工のアルミ材を使用した軽量設計 写真のセミアニリンレザー仕様はop 乗降性は高水準
シートはフレームにプレス加工のアルミ材を使用した軽量設計 写真のセミアニリンレザー仕様はop 乗降性は高水準
走行モードで表示が変化 写真のスポーツ+では回転計が9000rpmスケール 油温計を表示
走行モードで表示が変化 写真のスポーツ+では回転計が9000rpmスケール 油温計を表示
走行モードはダイヤルで選択 クワイエットモードはモーター走行主体
走行モードはダイヤルで選択 クワイエットモードはモーター走行主体
リアリッドを開けるとカバー下にエンジンが見える 3492cc・V6DOHC24Vツインターボ(507ps/550Nm)+3モーター搭載 システム出力581ps WLTCモード燃費:10.6km/リッター
リアリッドを開けるとカバー下にエンジンが見える 3492cc・V6DOHC24Vツインターボ(507ps/550Nm)+3モーター搭載 システム出力581ps WLTCモード燃費:10.6km/リッター
タイヤはコンチネンタル・スポーツコンタクト6 フロント:245/35ZR19/リア:305/ZR20の前後異径 アルミは鍛造タイプ
タイヤはコンチネンタル・スポーツコンタクト6 フロント:245/35ZR19/リア:305/ZR20の前後異径 アルミは鍛造タイプ
エグゾーストエンドパイプはセンター4本出し アクセルワイドオープン時の排気音は豪快
エグゾーストエンドパイプはセンター4本出し アクセルワイドオープン時の排気音は豪快

ホンダNSX 主要諸元の主要諸元と主要装備

価格=9SMT 2420万円
全長×全幅×全高=4490×1940×1215mm
トレッド=フロント1655×リア1615mm
ホイールベース=2630mm
車重=1800kg
乗車定員=2名
エンジン=3492cc・V6DOHC24Vツインターボ
最高出力=373kW(507ps)/6500~7500rpm
最大トルク=550Nm(56.1kgm)/2000~6000rpm
モーター最高出力=フロント:27kW(37ps)×2/リア:35kW(48ps)
モーター最大トルク=フロント:73Nm(7.4kgm)×2/リア:148Nm(15.1kgm)
WLTCモード燃費=10.6km/リッター(燃料タンク容量59ℓ)
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:ウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:245/35ZR19/リア:305/30ZR20
駆動方式=4WD
最小回転半径=5.9m
デビュー●2016年8月 2019年12月一部改良

撮影協力●マースガーデンウッド御殿場

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