チューンアップしたV12エンジンを搭載するフェラーリ812の「コンペティツィオーネ」がデビュー

フェラーリが830psの最高出力を誇るV12エンジンを採用したクーペモデルの「812コンペティツィオーネ」とタルガトップモデルの「812コンペティツィオーネA」を発表

 伊フェラーリは2021年5月5日(現地時間)、旗艦V12エンジン搭載モデル「812」の高性能バージョンとなる「コンペティツィオーネ(Competizione)」をオンライン発表した。ボディタイプはクーペの「812コンペティツィオーネ」とタルガトップの「812コンペティツィオーネA(Aはイタリア語の“Aperta=アペルタ”の頭文字でオープンを意味)」をラインアップ。車両価格および販売台数は、812コンペティツィオーネが49万9000ユーロ(約6565万円)/999台限定、812コンペティツィオーネAが57万8500ユーロ(約7610万円)/549台限定に設定する。デリバリー開始は812コンペティツィオーネが2022年第1四半期、812コンペティツィオーネAが2022年第4四半期の予定だ。

▲フェラーリ812コンペティツィオーネ 車両価格は49万9000ユーロ(約6565万円)で、販売台数は999台限定。フロント部はエアインテークを横いっぱいに広げることでエンジンの冷却効率を10%ほどアップした
▲フェラーリ812コンペティツィオーネ 車両価格は49万9000ユーロ(約6565万円)で、販売台数は999台限定。フロント部はエアインテークを横いっぱいに広げることでエンジンの冷却効率を10%ほどアップした

 今回発表された812コンペティツィオーネは、既存の812スーパーファスト(812 Superfast)をベースに、V12エンジンのチューンアップやトランスミッションの改良、外装デザインおよびマテリアルの変更などを図って、さらなる高性能化を図ったことが特徴である。

▲ボディサイズは全長4696×全幅1971×全高1276mm ホイールベース2720mm 車重1487kg(オプション装着車) リアにはボルテックスジェネレーターとして作用する3組のエレメントを組み込んで発生ダウンフォースを増強した
▲ボディサイズは全長4696×全幅1971×全高1276mm ホイールベース2720mm 車重1487kg(オプション装着車) リアにはボルテックスジェネレーターとして作用する3組のエレメントを組み込んで発生ダウンフォースを増強した

 まずはクーペモデルの812コンペティツィオーネから解説しよう。外装では、空力性能や冷却効率のアップを狙って緻密な改良を実施する。フロント部はエアインテークを横いっぱいに広げることでエンジンの冷却効率を10%ほど引き上げたほか、車両底部で発生する熱気の放出を減らし、さらにボンネットやフェンダーから排出するよう流路を変更してエアロダイナミクスの改善を図る。また、ボンネット自体には中央のくぼみのなかにカーボンファイバー製ブレードを配備し、合わせてフロント下部にカーボンファイバー製スプリッターを装着して、空力特性を高めた。一方、リアセクションではディフューザーの大型化と排ガスのエアロダイナミクスへの積極的な利用によりダウンフォースを強化。また、完全に密閉したリアスクリーンを配し、ここにボルテックスジェネレーターとして作用する3組のエレメントを組み込んで、発生ダウンフォースを増強した。専用アレンジのリアスポイラーも、空力性能の向上にひと役かっている。そして、SF90ストラダーレで初採用したフロントエアロキャリパーを812コンペティツィオーネにも装備。鋳造キャリパー内にエアインテークを組み込み、ブレーキの作動温度を約30℃下げることにより、長時間のサーキット走行でも安定した制動力とブレーキフィールを発揮するように仕立てた。

▲カーボンファイバー製トリムの採用やドアパネルの再設計などを実施して効果的な軽量化を実現
▲カーボンファイバー製トリムの採用やドアパネルの再設計などを実施して効果的な軽量化を実現

 内包するインテリアは、812スーパーファストをベースに、カーボンファイバー製トリムの採用やドアパネルの再設計などを実施して効果的な軽量化を実現。また、トランスミッショントンネルには“Hゲート”を導入し、コクピットのスポーツ性をいっそう高めた。

▲フェラーリ812コンペティツィオーネA 車両価格は57万8500ユーロ(約7610万円)で、販売台数は549台限定。脱着可能なカーボンファイバー製タルガトップを備える
▲フェラーリ812コンペティツィオーネA 車両価格は57万8500ユーロ(約7610万円)で、販売台数は549台限定。脱着可能なカーボンファイバー製タルガトップを備える
▲リア部には気流を無駄なくスポイラーへと流すよう、左右のフライングバットレスの間にブリッジ状エレメントを配備する
▲リア部には気流を無駄なくスポイラーへと流すよう、左右のフライングバットレスの間にブリッジ状エレメントを配備する

 812コンペティツィオーネAに話を移そう。外装はコクピットまわりを入念に強化したうえで、脱着可能なカーボンファイバー製タルガトップを備えたオープンボディを構築。フロントやサイドセクションは812コンペティツィオーネと同様の手法で空力性能と冷却効率を高めながら、リア部には気流を無駄なくスポイラーへと流すよう、左右のフライングバットレスの間にブリッジ状エレメントを配置する。さらに、ウィンドスクリーンのヘッダーレールにはフラップを組み込み、空気抵抗の増大を抑えるとともに、812コンペティツィオーネと同等のダウンフォースを実現した。

▲トランスミッショントンネルには“Hゲート”を導入。左右のバットレスの間には2個の開口部を設け、サイドウィンドウを越えて入ってくる気流をマネジメントする
▲トランスミッショントンネルには“Hゲート”を導入。左右のバットレスの間には2個の開口部を設け、サイドウィンドウを越えて入ってくる気流をマネジメントする

 インテリアに関しては、812コンペティツィオーネと同じくカーボンファイバー製トリムの採用やドアパネルの再設計、トランスミッショントンネルへの“Hゲート”の導入などを実施。また、左右のバットレスの間に2個の開口部を設け、サイドウィンドウを越えて入ってくる気流をマネジメントする仕組みとした。

▲6496cc・V型12気筒DOHC48Vエンジンはダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)コーティングを施したピストンピンやカムシャフト、チタン製のコンロッド、高度なバランス取りをしたクランクシャフトなどを採用して、フリクション低減や軽量化を実現した
▲6496cc・V型12気筒DOHC48Vエンジンはダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)コーティングを施したピストンピンやカムシャフト、チタン製のコンロッド、高度なバランス取りをしたクランクシャフトなどを採用して、フリクション低減や軽量化を実現した

 肝心のパワーユニットについては、812スーパーファストに搭載する自然吸気の6496cc・65度V型12気筒DOHC48Vエンジンをベースに、徹底したチューンアップを図る。エンジン自体には、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)コーティングを施したピストンピンやカムシャフト、チタン製のコンロッド、高度なバランス取りをしたクランクシャフトなどを採用して、フリクション低減や軽量化を実現。また、バルブトレインとシリンダーヘッドはF1の技術を用いた完全新設計とする。さらに、吸気系ではマニホールドとプレナムチャンバーのコンパクト化などを、排気系ではエグゾーストシステムの再設計やスクエア形状テールパイプの装着などを実施。バルブタイミングシステムの変更や燃料噴射装置の改良も図る。最高出力はベースユニット比30psアップの830ps/9250rpm、最大トルクは692Nm/7000rpmを発生。レブリミットは9500rpmに設定する。ガソリンパーティキュレートフィルター(DPF)を組み込むなどして、最新の排出ガス規制に適合させたこともトピックだ。一方、トランスミッションには専用セッティングの7速DCTをセット。制御機構の改良により、変速スピードは5%ほど向上した。性能面では、812コンペティツィオーネで最高速度が340km/h以上、0→100km/h加速が2.85秒と公表している。

▲リアアクスルには左右後輪の舵角を個別に制御する独立後輪ステアリングを採用。パワートレインと足回りを統合制御するサイドスリップコントロール(SSC)はバージョン7.0に進化した
▲リアアクスルには左右後輪の舵角を個別に制御する独立後輪ステアリングを採用。パワートレインと足回りを統合制御するサイドスリップコントロール(SSC)はバージョン7.0に進化した

 シャシー面の性能アップも見逃せない。リアアクスルには左右後輪の舵角を個別に制御する独立後輪ステアリングを採用。また、通常のリアステア機構より反応速度を速め、同時に横方向のレスポンスの効率的なマネジメントを実現する。一方、パワートレインと足回りを統合制御するサイドスリップコントロール(SSC)はバージョン7.0に進化。タイヤには専用設計のミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2R(タイヤサイズは前275/35ZR20/後315/35ZR20)を装着した。
 効果的な軽量化を果たした点も812コンペティツィオーネ/812コンペティツィオーネAの特徴だ。前述したエンジンの軽量化やカーボンファイバー製パーツの拡大展開のほか、リチウムイオンバッテリーや鍛造アルミホイール(ホイールサイズは前10J×20/後11.5J×20)の装備、遮音材の削減などを実施。車両重量はベース車比で38kgほど低減している。

SNSでフォローする