【最新モデル試乗】新型カローラクロス、驚きの実走燃費を記録。その戦闘力を徹底検証

トヨタ・カローラクロス・ハイブリッドZ(FF) 価格:THS 299万円 クロスはセダン/ツーリング(ワゴン)/スポーツ(HB)に続く第4のスタイル シリーズ初のSUV  ラインアップはZ/S/Gの基本3グレード
トヨタ・カローラクロス・ハイブリッドZ(FF) 価格:THS 299万円 クロスはセダン/ツーリング(ワゴン)/スポーツ(HB)に続く第4のスタイル シリーズ初のSUV ラインアップはZ/S/Gの基本3グレード

カローラクロス 価格:199万9000〜319万9000円 試乗記

スタイリッシュで自然な造形。日本仕様は専用マスク採用

 カローラクロスは、50年以上にわたるカローラの歴史で初のSUVである。カローラは累計生産台数5000万台を超え、世界中のユーザーに愛される存在だ。そのカローラが、現在の「時代の真ん中」に位置するSUVを送り出したのだ。それだけに完成度が気になる。さっそく試乗した印象をお届けしよう。試乗車はハイブリッドとガソリンの2台。ともに18インチタイヤを装着したZグレードのFF車である。

 エクステリアは、フェンダー回りの抑揚とボリューム感が印象的。伸びやかで意外にスポーティな印象を受けた。写真ではオーソドックスに感じたものの、実車を見て認識を改めた。ヤリスクロスほど印象的ではないものの、RAV4以上にモダンなイメージがある。

 日本仕様のフロントマスクは、海外用モデルとは異なる専用形状。海外仕様と比べるとSUVらしいワイルドさは抑えられているが、「街に溶け込む」、「カローラファミリーと理解しやすい」という意味では納得のデザインだ。ボディサイズは全長×全幅×全高4490×1825×1620mm。歴代カローラ最大だが、取り回し性は優秀なレベルである。

 インテリアはアッパー部がカローラシリーズ共通形状。ロア部は全高アップに対応したカローラクロス専用デザイン。セダン/ツーリングに対してコクピット感覚は薄れているが、スッキリとまとめられ、質感は高い。ただしエクステリアとのバランスを考えると、ステッチや素材、カラーなどに、もう少し「SUVらしい」演出がほしいと感じた。

カローラクロスのパワーユニットは1.8リッターハイブリッドと1.8リッターガソリンの2種 ハイブリッドは4WDも設定
カローラクロスのパワーユニットは1.8リッターハイブリッドと1.8リッターガソリンの2種 ハイブリッドは4WDも設定
プラットフォームはカローラ・シリーズ共通のGAーC型 FF車のリアサスはシンプルな新設計トーションビーム式 クロスは吸音材の最適配置でクラストップ級の静粛性を追求
プラットフォームはカローラ・シリーズ共通のGAーC型 FF車のリアサスはシンプルな新設計トーションビーム式 クロスは吸音材の最適配置でクラストップ級の静粛性を追求

室内は広く開放感たっぷり。パフォーマンスは満足感が高い

 ドライビングポジションはアップライト。ヒール・トゥ・ヒップポイントはセダン/ツーリングより55mm高い。視界がワイドなだけでなく、これが後席の足元スペース拡大にプラスをもたらした。実際に後席に座るとホイールベースが共通のセダン/ツーリングより広く感じた。ウィンドウ面積が大きいことと大型パノラマルーフ(op)の設定などもあって、開放感は非常に高い。

 ラゲッジ容量はクラストップレベルの487リッターを確保する。深さがあるうえ、ホイールハウスの出っ張りは最小限。実際の積載性、使い勝手に優れている。ディーラーopのラゲージアクティブボックスを利用すると、後席を倒した場合の荷室フロアがフラットになる。また、荷室を上段/下段に分けての収納にも対応。利便性だけでなく防犯上も役立つ。こうしたアイテムはオプションではなく、標準化してほしいと思った。

 エンジンはハイブリッドが1.8リッター(98ps)+モーター(72ps)、ガソリンはバルブマチック採用の1.8リッター・NA(140ps)。ともにセダン/ツーリングと共通ユニットだが、制御の最適化とファイナルのローギアード化(タイヤ外径アップの調整)が行われている。

 大きめのボディサイズなので、試乗前は動力性能に物足りなさを感じると思っていた。だが、実際は違った。パフォーマンスは「これで十分満足!」といえる。走りがいい秘密は車両重量にありそうだ。Zグレードの車重は1410kg(ハイブリッド)。ツーリング比で20kg(パノラマルーフ付きは40kg)増と、見た目よりも軽量設計なのだ。

 ガソリン車は実用域を重視したセットアップとCVTの巧みな制御で、街中ではスペック以上に活発な印象。とはいえ、高速道路の追い越し時/山岳路などはもう少し余裕がほしいと感じた。
 一方、ハイブリッドは応答のよさや力強さという点で、明確なアドバンテージがある。発進時だけはセダンやツーリングより穏やかなフィーリングだが、このあたりは燃費を意識した制御なのだろうか。試乗時の燃費は、通勤時間帯の首都高速で30km/リッターを超えた。WLTCモード燃費の26.2km/リッターを大幅に凌駕したのだ。このクラスとしては驚異的である。

インパネはカローラ・シリーズ共通イメージ 上質なソフトパッド仕上げ 室内照明はLEDで統一 ディスプレイオーディオは7㌅標準 写真の9インチはop
インパネはカローラ・シリーズ共通イメージ 上質なソフトパッド仕上げ 室内照明はLEDで統一 ディスプレイオーディオは7㌅標準 写真の9インチはop
Zは本革とファブリックのスポーティシート装着 運転席は電動調節式 後席にはリクライニング機能を内蔵 着座ポジションはアップライト 前後とも足元スペースは余裕たっぷり 快適性はハイレベル 室内長1805㎜
Zは本革とファブリックのスポーティシート装着 運転席は電動調節式 後席にはリクライニング機能を内蔵 着座ポジションはアップライト 前後とも足元スペースは余裕たっぷり 快適性はハイレベル 室内長1805㎜
ハイブリッド 1797cc直4DOHC16V(98ps/142Nm)+モーター(72ps/163Nm) 4WDは後輪をモーター(7.2ps/55Nm)で駆動するEーFour WLTCモード燃費:26.2km/リッター(FF)
ハイブリッド 1797cc直4DOHC16V(98ps/142Nm)+モーター(72ps/163Nm) 4WDは後輪をモーター(7.2ps/55Nm)で駆動するEーFour WLTCモード燃費:26.2km/リッター(FF)

自然なハンドリングが好印象。「普通の凄さ」を実感

 フットワークはどうか? プラットフォームはカローラシリーズ共通のTNGA、GA-C型。FF車のリアサスは新開発のトーションビーム式。4WD用のダブルウィッシュボーン式と比べるとスペックダウンのイメージがあるものの、開発陣は「実用域を重視」と「気持ちのいい乗り心地」を目指しセットアップを施したと語る。

 ハンドリングは素直。身のこなしの軽快性や操作に対する確かな応答性、そしてロールを抑えた自然なクルマの動きなど、改めてGA-C型の基本性能の高さを実感した。
 走りの特徴を仔細に観察すると、セダン/ツーリングに対して薄皮を2枚くらい入れた穏やかな反応だが、クルマの動きは気持ちいい。ちなみにクロスオーバー化による性能の悪化要因(全高や重心など)は、ワイドトレッド化で対策しているようだ。普通に乗っている限りは、クロスオーバーというより「視線が高いサルーン」という印象だった。

 快適性も高い。トーションビームによるネガ(ドタバタした動きやアタリの強さ)は、今回の試乗では感じられなかった。むしろ凹凸を乗り越えるときのカドの取れた優しさや、巧みなショック吸収に感銘を受けた。後席の乗り心地もチェックしたが、入力に対して体の揺れが少なかった。乗り心地はライバルに対して優位性があると感じた。

 今回、カローラクロスに見て・乗って・使って感じたのは「普通」の凄さ、これに尽きる。しかも、普通といってもすべてが「100点を目指したバランス」を追求している。そういう意味ではセダン/ツーリングより「カローラらしいカローラ」だと感じた。まさに、令和時代のスタンダードといえる1台である。

日本仕様のフロントマスクは海外仕様とは異なる専用デザイン 個性的な印象
日本仕様のフロントマスクは海外仕様とは異なる専用デザイン 個性的な印象
ヘッドライトはバイビームLED Zのウインカーはシーケンシャル式
ヘッドライトはバイビームLED Zのウインカーはシーケンシャル式
Zは225/50R18ミシュラン+切削光輝アルミ装着 最小回転半径:5.2m
Zは225/50R18ミシュラン+切削光輝アルミ装着 最小回転半径:5.2m
Zのメーターは7㌅TFTカラー液晶付きオプティトロン 速度計はデジタル(写真)とアナログが選べる
Zのメーターは7㌅TFTカラー液晶付きオプティトロン 速度計はデジタル(写真)とアナログが選べる
ハイブリッドは電気式無段変速 加速スムーズ 駐車ブレーキはホールドモード付き電動
ハイブリッドは電気式無段変速 加速スムーズ 駐車ブレーキはホールドモード付き電動
ディスプレイオーディオ標準 ブラインドスポットモニター(4万4000円)は周囲と俯瞰情報を提供
ディスプレイオーディオ標準 ブラインドスポットモニター(4万4000円)は周囲と俯瞰情報を提供
電動シェード付きパノラマルーフ(11万円)は後席を含め高い開放感を演出
電動シェード付きパノラマルーフ(11万円)は後席を含め高い開放感を演出
後席使用時のラゲッジ容量は487リッター 6対4分割の後席を倒すと最大1885mmのフラットスペース出現 ディーラーopで荷室をフラットに仕上げるラゲージアクティブボックス(2万8050円)用意
後席使用時のラゲッジ容量は487リッター 6対4分割の後席を倒すと最大1885mmのフラットスペース出現 ディーラーopで荷室をフラットに仕上げるラゲージアクティブボックス(2万8050円)用意
Zはハンズフリーパワーバックドア標準 停止位置メモリー&予約ロック機能付きの便利設計
Zはハンズフリーパワーバックドア標準 停止位置メモリー&予約ロック機能付きの便利設計

カローラクロス 主要諸元と主要装備の主要諸元と主要装備

グレード=ハイブリッドZ(FF)
価格=THS 299万円
全長×全幅×全高=4490×1825×1620mm
ホイールベース=2640mm
トレッド=フロント:1560/リア:1570mm
最低地上高=160mm
車重=1410kg
エンジン=1797㏄直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=72kW(98ps)/5200rpm
最大トルク=142Nm(14.5kgm)/3600rpm
モーター最高出力=53kW(72ps)
モーター最大トルク=163Nm(16.6kgm)
WLTCモード燃費=26.2km/リッター(燃料タンク容量36リッター)
(市街地/郊外/高速道路:25.9/28.9/24.7km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=225/50R18+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.2m

主な燃費改善対策=ハイブリッドシステム/アイドリングストップ/可変バルブタイミング/電動パワーステアリング/充電制御/電気式無段変速機
主要装備=トヨタセーフティセンス(プリクラッシュセーフティ+レーントレーシングアシスト+全車速追従レーダークルーズコントロール+オートマチックハイビーム+ロードサインアシスト)/パーキングサポートブレーキ/バックガイドモニター/7エアバッグ/バイビームLEDヘッドライト(シーケンシャルウインカー付き)/UVカット機能付きグリーンガラス/電動パーキングブレーキ/バネ上制振制御/ルーフレール/本革&ファブリックシート/運転席電動調節/前席ヒーター機能/本革巻きステアリング/6対4分割可倒式リアシート/後席リクライニング機能/オプティトロンメーター+7インチTFTディスプレイ/スマートエントリーシステム/左右独立温度調節式オートAC(電動インバーターコンプレッサー)/通信+充電用USB/7インチディスプレイオーディオ/18インチアルミ/ハンズフリーパワーバックドア/ドライブモードセレクト
装着メーカーop=イルミネーテッドエントリーシステム1万1000円/ブラインドスポットモニター4万4000円/パノラミックビューモニター2万7500円/アクセサリーコンセント(AC100V・1500W)4万4000円/おくだけ充電1万3200円/パノラマルーフ11万円/9インチディスプレイオーディオ2万8600円
ボディカラー=ダークブルーマイカメタリック
※価格はすべて消費税込み リサイクル費用は1万20円

カローラクロスZ 価格:CVT  264万円 ガソリン仕様はバルブマチック仕様の1.8リッター直4DOHC16V(140ps)搭載 トランスミッションは7速マニュアルモード付きCVT 通常領域の走りはスペック以上に活発な印象アイドリングストップ機能は未装備 WLTCモード燃費は14.4km/リッター 装備面はハイブリッドの同グレードと基本的に共通 ディスプレイオーディオはスマホ連動で多彩に使える
カローラクロスZ 価格:CVT 264万円 ガソリン仕様はバルブマチック仕様の1.8リッター直4DOHC16V(140ps)搭載 トランスミッションは7速マニュアルモード付きCVT 通常領域の走りはスペック以上に活発な印象アイドリングストップ機能は未装備 WLTCモード燃費は14.4km/リッター 装備面はハイブリッドの同グレードと基本的に共通 ディスプレイオーディオはスマホ連動で多彩に使える
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