トラディショナル・メルセデスの代表、最新Cクラス・ステーションワゴンのリアル実用度をユーザー視点で検証

メルセデス・ベンツC220dステーションワゴン・アバンギャルド CクラスはAクラス・シリーズの充実もあって上級化 最新5thモデルはブランド中核モデルに成長 駆動方式はFR
メルセデス・ベンツC220dステーションワゴン・アバンギャルド CクラスはAクラス・シリーズの充実もあって上級化 最新5thモデルはブランド中核モデルに成長 駆動方式はFR

メルセデス・ベンツC220dステーションワゴン・アバンギャルド 価格:9SATC 705万円 試乗記

ラインアップ続々充実。ワゴンのディーゼルが本命か!?

Cクラスはセダンとワゴン(SW)を設定 パワーユニットは2種の1.5リッター直4ターボと2リッター直4ディーゼルのマイルドHV PHEVも導入予定
Cクラスはセダンとワゴン(SW)を設定 パワーユニットは2種の1.5リッター直4ターボと2リッター直4ディーゼルのマイルドHV PHEVも導入予定
1992cc直4ディーゼルターボ(200ps)+モーター(15kW)で構成 加速時モーターがアシスト 実走テスト燃費は20.4km/リッター
1992cc直4ディーゼルターボ(200ps)+モーター(15kW)で構成 加速時モーターがアシスト 実走テスト燃費は20.4km/リッター

 SUVに押されがちでも、ミドルサイズのドイツ勢は堅調だ。中でもCクラスは人気が高い。従来型は、セダンとワゴンを合わせて日本で10万台以上を販売。2015~2019年に年間販売台数セグメントNo1を達成した。セダンとワゴンの販売比率は現在7対3だという。
 新型のW/S206型もセダンから少し遅れてワゴンが上陸した。今回のC220dのパワーソースは、200ps/440Nmを発生する2リッター直4のディーゼルターボに、20psと208Nmを発生するISGが組み合わされている。つまりマイルドハイブリッド仕様だ。

 走り出すと、加速の立ち上がりで一瞬わずかにカドを感じるが、要求したトルクをそのとおり生み出してくれるので扱いやすい。
 静粛性は印象的だ。車外で聞こえたディーゼルっぽい音は、車内に入ったとたんに消滅。微妙なガラガラ音こそわずかに感じるものの、ほとんど気にならない。入念に対策されている。
 変速比幅の広い9速ATも効いてエンジン回転数が低く抑えられるおかげで、効率に優れるうえに非常に静かだ。素早くスムーズなエンジン再始動やタウンスピードでのリニアなレスポンス、加速の力強いブースト感は、まさしくISGの恩恵に違いない。

 注意深く観察すると、高速巡行時は、ドアミラー回りからやや風切音がする。ワゴンということもあって、後席では後方からの音の侵入を感じた。ただしそれほど気になるわけではない。
 足回りはしなやか。かつてのCクラス・ワゴンは、セダンよりもだいぶ硬かったが、旧型のW205型からそうでもなくなり、新型はセダンとの差が感じられなくなった。
 なお、従来型はこのクラスで珍しいエアサスが特徴だったが新型は未設定。通常のコイルサスでも満足のいく乗り味を実現できるとの判断から廃止された。

 ステアリングの操舵力はやや重め。切ったとおりに正確に応答するのはメルセデスらしい。近年Cクラスでは「アジリティ(敏捷性、機敏さ)」を打ち出してしており、新型は4WSも一部で設定された(5月生産分からオーダー中止)。だが標準仕様でも俊敏な回頭性は十分に味わえる。
 気になったのは、ブレーキフィールだ。これまで乗った新型Cクラスは、どれもブレーキ操作が難しい。減速度を自然にコントロールできず、「運転が下手」になってしまう。しかもクルマごとにクセや傾向が違うのでやっかいだ。

足回りはフロント:4リンク/リア:マルチリンク式 スポーティな味わいと快適性を高次元で融合 全長4785mm  ボディサイズは旧型比でひと回り大型化
足回りはフロント:4リンク/リア:マルチリンク式 スポーティな味わいと快適性を高次元で融合 全長4785mm ボディサイズは旧型比でひと回り大型化
パノラミックガラスサンルーフは開放感を演出するアイテム(op23万3000円)
パノラミックガラスサンルーフは開放感を演出するアイテム(op23万3000円)
AMGライン(op34万4000円)はフロント225/45R18/リア245/40R18タイヤ+5ツインスポークアルミ装着 硬めの設定だが乗り心地良好
AMGライン(op34万4000円)はフロント225/45R18/リア245/40R18タイヤ+5ツインスポークアルミ装着 硬めの設定だが乗り心地良好

未来を感じる内装と装備。高価だがそれだけの価値がある

インパネは上級モデルのSクラスと共通イメージ 12.3インチメーターと11.9インチセンターディスプレイを組み合わせたデジタル仕様 AMGラインはツインスポーク本革巻きステアリング装備 高速走行時の直進安定性は模範的
インパネは上級モデルのSクラスと共通イメージ 12.3インチメーターと11.9インチセンターディスプレイを組み合わせたデジタル仕様 AMGラインはツインスポーク本革巻きステアリング装備 高速走行時の直進安定性は模範的

 室内のデザインと機能は、最上級モデルのSクラスと同等。新型は、質感もSクラスに匹敵するレベルに引き上げられた。スイッチのタッチひとつとってもクオリティ感がある。大きな画面を並べた先進的なインパネは、幅広いユーザーに大きな訴求力がある。
 メルセデスが先鞭をつけた音声コントロールが可能なインフォテインメント機能、MBUXは洗練度が増して、より使いやすくなっている。

 装備は充実。クラス初のアイテムを積極的に取り入れた。中でもARカーナビは非常に便利だ。進行方向周辺の状況がわかりやすく、ドライバーの死角になりそうな部分まで表示してくれる。歩行者を見落とす可能性が減るなど、安全性を高めるためにも役立つ。
 ヘッドアップディスプレイは多機能タイプ。多くの情報をより見やすくしようという工夫だが、ここまでドーンと大きく表示されるタイプは初めてだ。もちろん表示サイズは調整できるので、煩わしいと思えば変更可能だ。
 ステアリング部には、数多くのコントロールスイッチを配置している。使いこなすには、慣れが必要だ。AMGラインに装着されるステアリングは、ツインスポーク形状。より多くの機能を収めながら、見栄えをよくするためのアイデアだろうか。

 室内は十分に広い。後席の居住性は、ホイールベースの拡大やパッケージングの進化で各部のクリアランスが増しており、従来よりも広く感じられる。
 荷室も広くて使いやすい。少しでも容積を稼げるようギリギリまで攻めた開発過程がうかがえる。メルセデスらしく見た目の質感も高く、テールゲートの開閉と連動したトノカバーのような装備も付く。後席が3分割可倒式なので、中央に長尺物を積んで両サイドにゆったり乗員が座ることもできる。

 価格は、セダンが599万円、ワゴンは625万円がスターティングプライスになっている。数字を見る限り旧型に比べてかなり高くなった印象を受ける。しかし、そのぶん標準装備のレベルはかなり引き上げられている。
「充実の装備から考えると、総合的には決して割高ではない」とインポーターは説明している。
 Cクラス・ワゴンの直接的なライバルは、BMW3シリーズ、アウディA4、ボルボV60。それぞれ個性が明確なモデルたちだ。新型は、走りや機能はもちろん、先進性やデザインなど、非常にわかりやすい魅力をいくつも身につけたように思える。

AMGラインの前席はサポート性を高めたスポーツ形状 写真の本革はop(22万3000円) 室内スペースは余裕たっぷり 静粛性は全域高水準
AMGラインの前席はサポート性を高めたスポーツ形状 写真の本革はop(22万3000円) 室内スペースは余裕たっぷり 静粛性は全域高水準
MBUXシステムはナビや各種設定などの機能を集約した先進仕様 音声対話でコントロール可能
MBUXシステムはナビや各種設定などの機能を集約した先進仕様 音声対話でコントロール可能
9速ATのセレクターはスステアリングコラムに配置
9速ATのセレクターはスステアリングコラムに配置

通知表/メルセデス・ベンツC220dステーションワゴン・アバンギャルド 価格:9SATC 705万円

総合評価:75点

Final Comment

ブランド性にふさわしい完成度
気がかりはブレーキとシフトセレクター

 全体的に評価は高めになった。メルセデスらしく、やはり高い完成度を誇る。評価が低いのはブレーキに関する項目で、なぜか従来型の最終モデルと比べても劣る。また、メルセデスの右ハンドル車に乗るたびに「何とかすべきではないか」と思うことが、右側コラムにあるシフトセレクターだ。メルセデスにしか乗らないというユーザーならよいが、ウインカーレバーが右にある日本車に乗る機会のあるドライバーは、誤操作の可能性がある。いろいろな意味で注意を要する。

メルセデス・ベンツCクラス 主要諸元と主要装備の主要諸元と主要装備

グレード=C220dステーションワゴン・アバンギャルド
価格=9SATC 705万円
全長×全幅×全高=4785×1820×1455mm *
ホイールベース=2865mm
トレッド=フロント:1590/リア:1575mm
車重=1820kg *
エンジン=1992cc直4DOHC16Vディーゼルターボ(軽油仕様)
最高出力=147kW(200ps)/3600rpm
最大トルク=440Nm(44.9kgm)/1800〜2800rpm
モーター最高出力=15kW(20ps)
モーター最大トルク=208Nm(21.2kgm)
WLTCモード燃費=18.2km/リッター(燃料タンク容量66リッター)
(市街地/郊外/高速道路:13.9/18.3/20.9km/リッター)
サスペンション=フロント:4リンク/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=フロント:225/45R18/リア:245/40R18+アルミ *
駆動方式=FR
乗車定員=5名
最小回転半径=5.2m

主な燃費改善対策:ハイブリッド/アイドリングストップ/筒内直接噴射/電子制御式燃料噴射/ターボチャージャー/インタークーラー/コモンレール高圧噴射/電動パワーステアリング

主要装備:レーダーセーフティパッケージ(アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック+アクティブブレーキアシスト+アクティブブラインドスポットアシスト+アクティブレーンキーピングアシスト+アクティブステアリングアシストなど)+トラフィックサインアシスト/ドライブアウェイアシスト/Ⓡクロストラフィックアラート/クロスウインドアシスト/アテンションアシスト/360度カメラシステム/パークトロニック/デジタルライト(ウルトラハイビーム付き)/アダプティブハイビームアシスト・プラス/アジリティコントロール・サスペンション/プライバシーガラス/前席メモリー付きパワーシート/分割可倒式リアシート/マルチファンクションステアリング(パドル付き)/電動チルト&テレスコピック機構/ダイレクトステアリング/イージーエントリー/前席左右独立温度調節式クライメートコントロール/MBUX(11.9インチメディアディスプレイ+12.3インチコクピットディスプレイ+自然対話式音声認識機能+HDDナビゲーション+ETC2.0車載器ほか)

装着メーカーop:ベーシックパッケージ(ヘッドアップディスプレイ+MBUX・ARナビゲーション)15万9000円/AMGライン(スターパターングリル+AMGスタイリングパッケージ+18インチAMG5ツインスポークアルミ+ロゴ付きブレーキキャリパー+フロントドリルドベンチレーテッドディスク+スポーツサスペンション+AMGスポーツステアリング+レザーARTICO/ダイナミカシート&ダッシュボード+メタルウィーブインテリアトリム+ステンレス製ペダル)32万6000円/レザーエクスクルーシブパッケージ22万3000円/パノラミックスライディングルーフ23万3000円
ボディカラー:ポーラーホワイト
※価格はすべて消費税込み *AMGライン装着車
撮影協力:マースガーデンウッド御殿場

荷室は通常時490リッター/最大1510リッター 相応の広さ スクエア形状で使いやすい リアゲート連動とのカバー標準
荷室は通常時490リッター/最大1510リッター 相応の広さ スクエア形状で使いやすい リアゲート連動とのカバー標準
リアゲートは開閉角度を設定できいる自動開閉式
リアゲートは開閉角度を設定できいる自動開閉式
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